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この映画は「越境通学」と「スマートフォンの密輸」という香港らしい問題を通して香港が抱える問題を描いた作品です。香港出身の父と中国大陸出身の母を持つ 16 歳の高校生ペイは、毎日深圳から香港の高校に通っていました。親友のジョーとふたりで北海道旅行をすることが夢で、スマートフォンのケースを売ったりして小さな小遣い稼ぎをしていました。あることからスマートフォンの密輸グループが関わる事件に巻き込まれますが、高額のお金を得ることができるため、密輸と関わりのあるジョーの彼氏にお願いしてスマホの密輸グループに加入します。スマホの密輸を行う一方で、ペイとジョーの彼氏との関係が近くなりジョーとの関係がこじれていきます……。
香港の男性が中国本土の女性と愛人を作ったり、子供ができるというのはよくある話です。子供が香港で生まれれば香港のIDカードをもらえるため、深圳から毎日、ボーダーを越えて香港の学校に通う光景は香港の日常のひとつです。これを越境通学といいますが、なぜこれをするかと言いますと、中国の教育より香港の教育の方がいいと考えているからです。
スマホですが、香港はフリーポートなので密輸が起こりやすい場所でもあり、密輸がなくても税金がかからないので並行輸入が簡単です。香港での中国人による爆買いを起点として、並行輸入が2010年頃には始まり2015年頃には社会問題になっていました。当時は深圳に近い香港北部の町、上水(Sheung Shui)地区は並行輸入の"本場"で缶の粉ミルクを運ぶと1缶数十ドルを稼げるというものでした。スマホはその極端な例と言えます。もうひとつの映画のキーでもある友情ですが、ペイは悲しいかな下層レベルの人たちで、逆にジョーは香港のお金持ちという格差。香港を象徴する事象でもあります。2019年は約230万人もの香港市民が日本を訪れていますが、北海道は人気の観光スポット。そういう細かなところもしっかりと表現されています。
映画はこういったことを丹念に映画いて、興味深いものに仕上がっています。例えば、並行輸入問題は筆者も何度も取材しましたが、香港ではニュースになりますが日本で取り上げられることはほぼありません。しかし、香港人にとっては身近な問題です。この作品を見ると、香港社会をより深く理解できると思います。