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日本でも根強いファンが多い、ピーターラビットと仲間たちの絵本。豊かな自然を背景に、愛らしい動物たちが生き生き描かれている名作シリーズですよね♪
その作者として有名なビアトリクス・ポター展が、現在ロンドンで開かれています。
場所はサウスケンジントンにある、ヴィクトリア&アルバート美術館(以下V&A)。
ここは常設展示のみであれば入場無料ですが、特別展は有料。このビアトリクス・ポター展も1人£14(0歳~11歳は無料)です。
同展につけられた副題は「Drawn to Nature」。彼女が「自然に惹かれていった」ことと「自然に捧げて描いた」こと、二重の意味が込められているのです。
彼女の絵や昔の写真などは小さいものが多いため、一見すると小ぢんまりしたサイズの展示に見えるかもしれません。
しかし実は膨大な情報量があり、彼女の生い立ちから絵本作家としての成功、そして湖水地方の美しい自然と伝統農法の保存に貢献した後半生が、とてもわかりやすく展示されています。
展示されているのははV&A所蔵品と、景観保護団体ナショナルトラスト所蔵品がメイン。また個人など別のところから借りたものも併せ、総数200点以上という充実した内容です。
とくにナショナルトラストからの品は、彼女の家ヒルトップで今も一般公開されている家具や雑貨の一部や、同じく湖水地方にあるビアトリクス・ポター・ギャラリー収蔵の絵画など多数あります。
内容を簡略に紹介しましょう。これから同展へ行く人も多いと思うので、エッセンスや見どころをお伝えできればと思います!
サウスケンジントンに住む裕福な中流家庭で育ったビアトリクス。両親や祖父母も芸術に関心が高く、良家の子女として学校ではなく家庭教師に教育されて成長しました。
当時の生活様式をうかがえる品々も、たくさんあります。
これは祖母が作ったキルト。ビアトリクスの両親が結婚したとき贈り物にしたそうです。母親も水彩画を趣味としていたそうで、彼女が愛用していたパレットもビアトリクスの宝物となりました。
こちらの立派な箪笥は、なんと日本製なんですよ!
1800年~1850年にイシカワ・ニヘイという人が作った寄せ木細工の箪笥。こうした調度品や家具に、ポター家が豊かな家庭だったことがうかがえますね。
また父ルパートは当時の最先端テクノロジーだった写真も趣味のひとつ。そのおかげでビアトリクスは1866年生まれにしては珍しく写真がたくさん残っており、彼女の幼少時代がよくわかります。
父親は芸術に造詣が深いだけでなく、アーティストの友達も多数。とくに仲のよかったジョン・エヴェレット・ミレーの素描も所有していました。
↑上はデッサン、完成作品はこちら。↓
ミレーの「マリアナ」、本物はテート美術館にあります。
ビアトリクスは彼から「絵が上手い人は大勢いるけれど、君は観察眼も持ちあわせているね」と褒められたことが、とてもうれしかったとのちに語っています。
豊かな中流家庭に相応しく、夏は毎年スコットランドや湖水地方で2ヵ月ほどの長期休暇を過ごしたビアトリクス一家。そこで彼女はロンドンにはない自然に魅せられていきました。
10歳の頃描いた風景画のなかには、草むらにウサギが虫取り網を持って跳ねてますよ! 絵が上手いだけでなく自由な空想力があったからこそ、後にピーター・ラビットたちを生み出すことができたのですね。
陶板に転写したウサギの絵を描いたのは、ビアトリクス15歳のとき。精密な描写は、やはり優れた観察眼があったからこそ。
観察力と同じくらい、知的興味も尽きなかったビアトリクス。弟バートラムと熱心に蒐集・観察した石や貝殻や昆虫などのコレクション専用チェストがあるかと思えば、
押し花や昆虫標本もちろん、ペットが死んだ場合はそれをゆでて骨格標本を作ることもいとわなかった姉弟。このウサギの毛皮は、飼っていたベンジャミン・バウンサーのものと推測されています。
顕微鏡で観察して蝶の羽根などの詳細な絵もたくさん描いており、会場にはその疑似体験ができるテーブルも用意されています。
やがて弟バートラムは寄宿学校へ入学。家に残ったビアトリクスは次第に絵画への道を志したものの、美術学校での絵画レッスンには違和感を覚えるようになります。
学会に発表できるほどキノコ研究に没頭したり(でも当時は女性なので会員になれませんでした!)、次第に独自の方向性を模索し始めたビアトリクス。
そんな彼女は弟に提案され、商業イラスト作家としてデビュー。彼女の絵が初めて印刷されたのは、これらのグリーティングカードでした。
と、ここまでがビアトリクス・ポターの前半生。とても充実した展示だったので、次回はその後半をお届けしたいと思います。
なお同展はとても好評を博しているため、すでに3月・4月のチケットは売り切れという盛況ぶり。でも来年(2023年)1月8日まで開催しています。
ピーターラビットの世界を世に送り出し、湖水地方の自然保護に大きな貢献をしたビアトリクスに、会いに行きませんか?
〈当記事に掲載した写真は、ヴィクトリア&アルバート美術館ご担当者からの了承を得て撮影・使用しております〉
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A South Kensington)
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