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78. 鉄道ファンにはたまらないタシケント発エレクトリーチカ(近郊電車)に乗って小旅行へ

伊藤 卓巳

伊藤 卓巳

ウズベキスタン特派員

更新日
2022年11月23日
公開日
2022年11月23日
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サローム(こんにちは)!

ウズベキスタンは鉄道ファンにとっても旅行におすすめの国。この国で知られている鉄道や列車といえば、スペイン製車両を使った高速列車アフラシャブ号や、この記事でも特集した(18. タシケントメトロ徹底解説!乗り方は?料金は?【2022年最新情報】)ですが、ガイドブックに載っていないながらもぜひおすすめしたい列車があるのです。それがロシア語で近郊電車を意味するエレクトリーチカ。旅行者がよく使う長距離列車とは異なる通勤電車的な列車で、ロシアを含む旧ソ連圏の大都市とその郊外に路線網を持っていますが、ウズベキスタンでも走っているのです。首都タシケントではタシケント南駅を起点に、北東方向のガザルケントへ向かう路線、南東方向のアングレンへ向かう路線、南方向のベカバードへ向かう路線の3路線があります。

このタシケントのエレクトリーチカの魅力は、何といってもレトロな車両。日本の通勤電車のイメージとは大きく異なる、無骨で重厚なソビエト製車両がガタゴト走っているのです。

ロシア・東欧鉄道マニア界隈には「丸顔エレクトリーチカ」と呼ばれ人気が高い、1970年代製の車両ЭР2М形
こちらは1980年代製のЭР9Е形車両。いずれも現ラトビアの首都リガの工場で造られていた
車体側面にはウズベキスタン国章のプレートが

車内も期待通りのシブさで、日本では絶対乗られないであろうボックスシート形式の木製がずらりと並んでいます。筆者はギリギリ平成世代の人間かつにわか鉄道ファンなので想像がつかないのですが、日本でこのような車両が走っていたのは何十年前になるのでしょうか。

車内の表記や注意書きも時代を感じるステンシル風フォント

主にタシケント郊外の住民の生活の足になっている路線のため、ここに乗ってくる乗客は旅行者やビジネスマンが多い高速列車アフラシャブ号の客層とは全く異なります。まさにそこら辺に住んでいます、というローカル感をまとった人々が多く、ごくたまに(私のような)変わった外国人旅行者が乗ってくる程度。私たちには若干アウェーな雰囲気ですが、乗っていると不思議と居心地よくなってくるのです。

窓の上部は開閉可能で、車窓を楽しむことができる

先述した3路線のうち、観光客でも気軽に乗れるのは便数が比較的多いホジャケントへ向かう路線です。2022年11月現在、タシケント発午前1本・午後3本、ホジャケント発午前3本・午後1本の計往復4本が運行。
マルシュルートカや乗り合いタクシーに比べるとどうしても利便性に劣るエレクトリーチカは通常あまり混雑することはないのですが、この路線の終点のホジャケントはのちほどご紹介する通りタシケント市民に人気の自然豊かな観光地への入口となっているため、土日になるとハイキング客などで混み合います。私が乗った時は自転車を持ち込んで来た乗客もいました…。

この路線の始発はタシケント南駅なのですが、この駅やその先のタシケント駅から乗車すると長距離列車用チケット窓口で切符を買うことになり少し手間がかかるため、乗りつぶし目的などでなければ地下鉄プーシキン駅近くのサラール駅から乗ることをおすすめします(余談ですが、鉄道ファンがよくやる乗りつぶしという概念がこの国にはなく、折り返しの電車にそのまま乗車すると車掌さんから不審な目で見られることでしょう…)。

切符は駅の切符売り場、またはホームにいる切符売りの駅員から購入。無人駅から乗る場合も、車内で車掌から直接買えるので問題ありません。運賃はゾーン制になっており、タシケントからホジャケントまでは6000スム(2022年11月現在のレートで約80円)と激安。この安さが週末旅行者で混みあう理由です。

思わずお土産として持って帰りたくなる、かわいいサイズとデザインのチケット

タシケントからホジャケントまでは約2時間の列車の旅。週末には1日2本が急行列車として運行されることになり、より早く到着するようになりました。
乗車中は車窓を眺めるもよし、相席の乗客と会話するもよし。供給過多では?と思うほど物売りのおばさんが何人も車内を巡回しており、お菓子やサモサ、水などを購入できるため食事の心配も要りません。

タシケント郊外に出るとのどかな車窓が続く
地下鉄とは違い個性的な駅はほとんどない路線だが、ほぼ中間地点のボタニカ駅はカラフルなタイル装飾が印象的

ホジャケントからタクシーや乗り合いバンを乗り継ぐと、二重内陸国の首都タシケント市民にとっての海のような存在である避暑地チャルヴァク湖へ向かうことができます。タシケント市民の夏の楽しみはこの湖近くのホテルやダーチャ(別荘)で過ごすことで、都民にとっての湘南のようなポジションでしょうか。もちろん夏以外の季節も行くことができ、美しい湖や周囲の天山山脈の山々を眺めることができます。

展望台からのチャルヴァク湖の眺め
有名な湖畔ホテル、ピラミッダホテルのビーチにて

この湖からさらに山間に入っていくと、前特派員の齋藤さんも紹介されている(日帰りスキー@ウズベキスタン リゾート地「チムガン」)スキー場として名高いチムガンへ。ここも夏にはタシケント市民がよく訪れる避暑地となり、冬以外でも山の方へリフトが運行しています。
ただこのリフト、スキーするときに使うときは下に雪が積もるはずですが、この雪がないとちょっと滑ったら数十メートル下まで落ちていくしかない恐怖のリフトと化します。ほぼ雪が解けた春先に行って興味本位で乗ってみたのですが、間違いなく自分が乗った中で最も死に近い乗り物でした…。

一応安全バーもあるが心もとない代物。乗られる際は自己責任で!
リフトの終点は展望台になっており、3000m級の山々が目の前に迫る

というわけで鉄道ファン必見のソビエト製エレクトリーチカ(近郊電車)と、この電車をフル活用したタシケント発日帰り旅行プランをご紹介しました。他にもウズベキスタンや中央アジアはロシアなどではあまり見られなくなった古い車両などがバリバリ健在で、特に東欧や旧ソ連エリアがお好きな鉄道マニアの方にとっては宝のような地域かもしれません。まだまだマイナーなスタン系諸国の鉄道界ですが、世界の鉄道ファンに脚光を浴びる日が来ることを願っています。

なおエレクトリーチカ各路線の詳しい停車駅や時刻表などは下記記事参照。
https://tashtrans.uz/shema-napravleniy-i-raspisanie-prigorodnih-elektropoezdov-tashkenta/ (ロシア語)

また私の個人ブログでは、チャルヴァク湖やチムガンなどへの詳しいアクセス方法を載せています。旅行計画を立てられている方はこちらもぜひご覧くださいませ!
タシケント州情報! – takumiの世界ふらふら街歩き

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

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