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【アメリカ】アムトラックの一般席で大陸横断・体験ルポ②荒野の中の5時間遅れ

ベスト加島 聡子

ベスト加島 聡子

アメリカ・メリーランド州特派員

更新日
2023年10月20日
公開日
2023年10月20日
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(前回までのあらまし)アメリカの西海岸から東海岸を鉄道で横断できる唯一の鉄道、アムトラック。普通車に乗ったらどんな感じなのか、西海岸のロサンゼルスからスタートすることに。しかし出発からいきなり約1時間の遅れが発生。予定行程3泊4日の列車旅の二日目ルポです。

前回(LA出発まで)のルポはこちら

目次

アムトラックの車内(普通車・展望ラウンジなど)

  • 普通車両の座席
  • 広めのテーブル
  • 各車両にある階段
  • カフェカーのテーブル席
  • 展望デッキ
  • 昼夜問わず自由に過ごすことができるスペース
  • 車内の案内図
  • トイレの入り口にある洗面コーナー
  • カフェカーで買う軽食は紙トレーに入れてくれる

サウスウェスト・チーフ号の普通車は二階建てひと車両につき1階の半分と2階のフロア全部が座席エリア、1階の半分に共用の手洗いが5つと、荷物置き場があります。手洗いの一つはまずドアを開けると二つの洗面台があるラウンジになっていて、その横にトイレがあります。この構造は今回連結されていた2両の普通車ともに同じでした。
普通車両の隣が展望車両で、2階が展望デッキ、1階がカフェラウンジになっています。カフェでは朝昼晩一定の時間帯になるとテイクアウト専門の軽食を販売し、席に持ち帰ったり、展望デッキやカフェ横の飲食コーナーでも食べることができます。(現金、カードいずれも支払いOKでした)
展望車両の次がダイニングカー、そして一等車両にあたる寝台車が続きます。
車両間のアクセスは2階部分でつながっており、1階では通り抜けは出来ませんでした。
ダイニングカー(食堂車)は基本的に寝台車乗客が利用(寝台料金に食事が含まれているため)しますが、サウスウェスト・チーフ号では普通車乗客も有料で利用できると車内アナウンスがありました【朝食20ドル、昼食25ドル、夕食45ドルのセットメニュー】

普通席での過ごし方

  • 普通車座席のシート
  • シートの前後は広い
  • 電源は各座席の窓に2つずつ

普通車の座席は前後の間隔が広く、レバー式のリクライニングと座席の高さまで上がるフットレストがあります。前の座席の背面から倒して使うトレーも広めです。網棚は比較的広く設けられていて、機内持ち込みサイズぐらいの荷物をこちらに載せることができます。窓枠の下にAC電源が2個あり、パソコンやスマホの充電に役立ちます。
Wifiはアムトラックの路線によってはAmtrak Wifiが利用できますが、サウスウェスト・チーフ号では利用できませんでした。
車内は全車両禁煙ですが、比較的大きな町に停車した際は、補給作業などで10~30分程度停まることがあり、その場合はプラットホームに出て喫煙できると到着前に車掌からアナウンスが入ります。喫煙者でなくても気分転換に外の空気を吸いに出ることができます。
普通座席で数日間昼夜を快適に過ごすには、寝具も自分で用意する必要があります。旅行用枕、ブランケットまたは寝袋、乾燥防止のマスクやアイマスク、エンジン音が気になる場合は耳栓もあると良いです。

サウスウェスト・チーフ号の車両編成

  • 荷物車と普通車
  • 中央が展望車
  • 二台の機関車

LAからシカゴまで3日間走り通すサウスウェスト・チーフ号。連結している車両編成は途中駅での停車中に確認することができました。
先頭はディーゼル機関車が二両、続いて荷物車、二階建ての普通車両が二両、展望車(1階はカフェ)一両、食堂車一両、最後に寝台車が二両という編成でした。

アリゾナ州内で立ち往生

  • 夜明け前から森の中で立ち往生
  • アムトラックの線路は長い貨物列車と共有
  • アリゾナ州に入ってしばらくすると荒野の景色になってくる
  • 遅延によって無料で配られたスナックパックと水

カリフォルニア州を深夜のうちに通り抜けて二日目の夜明け前にアリゾナ州に入ったあたりで、眠りから覚めると列車のエンジン音が止まっていることに気づきました。車内アナウンスでは「技術的な問題」が発生したと説明がありましたが、具体的にどこがどのように問題なのかは聞き取れません。そのうちに日も高くなり、エンジン音も空調も一時的にストップして2時間ほど経過したところで、けん引しているディーゼル機関車を交換するとのアナウンスがありました。代替えの機関車の到着を待っていたために時間がかかったようです。そういえば乗っている客車の階下にあるトイレも五か所全部使用禁止になっていました。隣の客車のトイレが使えたのは幸いでした。
携帯のアプリの地図で確認すると最寄りのフラッグスタッフという駅の手前の森林地帯で立ち往生していたようで、最終的に3時間遅れでフラッグスタッフ駅に到着しました。この後もアリゾナ州内では徐々に遅れが拡大していき、ニューメキシコ州アルバカーキには7時間も遅れ、昼の発着予定が既に夜に差し掛かっていました。
アムトラックの携帯アプリでは乗車中の列車の運行状況が確認できたので、予定時間と実際どれくらい運行時間の違いが発生しているかを随時見ることができます。遅延が長くなるにつれ、本来普通車乗客にサービスされない、水とスナックの差し入れがありました。列車の遅延によるアムトラックの対応について、このあとさらにいろいろ知ることとなりました。

サウスウェスト・チーフ号のロサンゼルスからアルバカーキまでの運行記録(Amtrakの公式アプリからの情報)

1. ロサンゼルス・ユニオン駅(Los Angeles, CA) 予定9月4日17:55発、実際19:07発(1時間12分遅れ)
2. フラートン(Fullerton, CA) 予定18:30発、実際19:54発(1時間14分遅れ)
3. リバーサイド(Riverside, CA) 予定19:13発、実際20:43発(1時間30分遅れ)
4. サンバナディーノ(San Bernardino, CA) 予定19:39発、実際19:03発(1時間24分遅れ)
5. ヴィクタービル(Victorville, CA) 予定20:50発、実際22:06発(1時間16分遅れ)
6. バーストウ(Barstow, CA) 予定21:46発、実際22:52発(1時間6分遅れ)
7. ニードルス(Needles, CA) 予定9月5日午前0:13発、実際1:26発(1時間13分遅れ)
8. キングマン(Kingman, AZ) 予定1:25発、実際2:38発(1時間13分遅れ)
9. フラッグスタッフ(Flagstaff, AZ) 予定4:20発、実際8:10発(3時間50分遅れ)
10. ウィンスロウ(Windlow, AZ) 予定5:20発、実際10:39発(5時間19分遅れ)
11. ギャロップ(Gallop, AZ) 予定8:06発、実際14:04発(5時間58分遅れ)
12. アルバカーキ(Albuqurque, NM) 予定11:48発、実際19:06(7時間18分遅れ)

ルート66とアルバカーキ

  • アリゾナ州に入ると赤茶色の大地と小さな町が点在する
  • アルバカーキの駅舎
  • 駅舎内の待合エリア
  • チケットカウンターと軽食販売を兼ねている
  • ギャラップ駅の素朴なプラットホーム

アリゾナ州内から大幅な遅延が発生してしまいましたが、このあたりからニューメキシコ州サウスウェスト・チーフ号のルートはかつての大陸横断の重要な幹線道路として有名な「ルート66(旧国道66号線)」と同じ地域を通るので、駅周辺にもレトロな雰囲気の看板や赤茶色の建物がフラッグシップ駅からアルバカーキ駅エリアで見られました。車内アナウンスでも車窓からの見どころがあると教えてくれます。
補給などのために30分ほど停車したアルバカーキ駅はシカゴまでの道中では一番大きな駅舎でした。アムトラック乗車中の乗客も待合エリアに入ることができました。
アルバカーキ駅から乗車されたご夫婦が「昼前から駅でずっと待っていた」とおっしゃるとおり、当初午前11時台に到着・出発予定が時計を見ると既に午後7時。乗っていた私たち乗客も「いつになったら動くのか」と気をもんでいましたが、途中駅でサウスウェスト・チーフ号を待っていた乗客にとっても、長い長い待ち時間でした。
アルバカーキを出発した後も列車の遅延は徐々に延びていくのですが、7時間遅れた段階で既にシカゴでの乗り換えには間に合わない計算となり、つまりは全行程が4日間から5日間になることを意味するのでした。(第3回ルポへつづく)

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