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サローム(こんにちは)!
サマルカンドに来たなら一度は食べてほしいおすすめグルメを挙げるなら、やっぱりプロフ(ウズベク語でオシュ osh)。日常でも冠婚葬祭でも食べられるウズベク人が愛してやまない米料理プロフですが、地域ごとに具材や作り方が微妙に違います。そのなかでもサマルカンドプロフは米、野菜、肉、そしてプロフの味の決め手である脂の量とバランスがほどよく、日本人の舌に合ったプロフだと感じます。当然サマルカンドの人々も、ウズベキスタンでいちばんおいしいプロフはサマルカンドプロフだといいます(おそらくウズベク人は皆自分の町のプロフがいちばんおいしいというでしょうが……)。
サマルカンドプロフの特徴といえば、肉はおもに牛肉が使われていること、にんじんがたくさん入っていること(オレンジ色と黄色の2色のにんじんがよく使われる)、ひよこ豆もよく使われるがレーズンはあまり使われないこと、そして調理の際も盛り付けるときも米と具材を分けること、などなど。特にタシケントプロフなどのように米と具材を一緒に炊き込むのではなく分けて料理することで、見た目よく仕上がることがサマルカンド市民がアピールするサマルカンドプロフのイチオシポイントのようです。米の上ににんじんと肉がきれいに盛りつけられたビジュアルは確かに食欲をそそります。私はこれまでさまざまな地域のプロフを食べてきましたが、サマルカンドプロフがいちばんの「映えプロフ」であることに異論はありません。
このプロフをサマルカンドの人々が誇りに思っていることを裏付けるこんな伝説もあります。元来サマルカンドこそがプロフの本場であった。ある日タシケントから来た人がサマルカンドプロフを故郷に持って帰ろうとしたが、道中で米と具材がごちゃごちゃに混ざってしまった。しかしその人がこれがプロフ本来の姿だと思い込み、かくしてタシケントではサマルカンドプロフとは全く異なる米と具材を一緒に炊き込んだプロフが作られるようになった、と……。
サマルカンドでは多くのプロフ専門レストランがあり、ランチ時になるとお客であふれる、誰もが知る名店もあります。ただ人によっておすすめのプロフ屋さんが違い、サマルカンド市民はどこのお店のプロフがおいしいか日々談義しています。また食道楽として知られるサマルカンド人は、ランチタイムになると少々遠かったとしてもお気に入りのレストランに車を飛ばして駆けつけることもしょっちゅうで、心行くまでおいしいプロフを味わい、満足して自宅や職場に戻っていきます。ここでは私の周りのウズベク人が声を揃えておいしいと太鼓判を押す、絶品のプロフが食べられるプロフ屋さんを3つご紹介します。
なお、どのお店にもいえることですが、お店のプロフは基本的に昼に作られるもの。さらに香川県のさぬきうどんの名店のごとく、人気店ともなると閉店時間を待たずに売り切れて営業終了となってしまうことも。当然ながら炊きたてのプロフがいちばんおいしいので、最高の状態のプロフを味わうために正午ごろに行くようにしましょう。
レギスタン広場から西へ徒歩10分と、観光客にとって抜群の立地を誇るプロフ屋さん。しかしながら外国人の姿は少なく、いつも近所の人々でにぎわうローカル感あふれるお店です。ガイドブック『地球の歩き方』にも載っており、私が先日執筆したサマルカンドモデルコース紹介記事(87. サマルカンド観光モデルコース!見所いっぱいの世界遺産都市を満喫するおすすめプラン紹介)でも取り上げています。
他のウズベク料理も食べることができますが、店名(直訳すると「シャロフ爺さんのプロフ食堂」)も表している通り、やはりほとんどのお客のお目当てはお昼に作られるプロフ。お昼前から正午頃にかけて行くと、大鍋で豪快にプロフを調理している様子が見られます。シェフは快く写真を撮らせてくれる気のいいおじさんなので、ぜひここで一枚。
プロフは米とお肉、にんじんがきれいに盛りつけられた、スタンダードなサマルカンドプロフ。お茶、ナン、サラダ(冬はウズベクキムチやウズベク大根「トゥルップ」、それ以外の季節は生野菜サラダ「アッチク・チュチュク」)も出てきます。大人数で来たならひと皿に盛りつけてもらい、取りよそってワイワイ食べましょう。ひとりでひと皿食べるより、こちらの方が不思議とおいしく感じてしまうのです。
市内中心部からサマルカンド空港へ向かう途中にある大型プロフ専門店。Osh Markazi(オシュ・マルカジ)とはプロフセンターの意味で、ウズベキスタン国内には無数にこの名称のプロフ屋さんがあります。N1はノーメル・アジーンと読み、ロシア語でナンバーワンの意味。その名に恥じず大方のサマルカンド市民が知っている人気店で、外国人ツアー客の姿も頻繁に見られるほどです。それゆえ店員も観光客慣れしており、英語が話せるスタッフもいます。
広々とした店内は1階と地下に分かれており、一度に数百人のお客が入れそうなほど。1階にある、ティムールらしき人物に家来たちがプロフを献上しまくってる壁画が印象的です。かつてかのお方の宮殿では同じような光景が実際に繰り広げられていたのでしょうか……。
概して脂ギッシュな料理プロフですが、ここのプロフは一般のサマルカンドプロフに比べると脂が少なめで、慣れていない方でもおいしくいただくことができます。脂こそがプロフの神髄! と思っているプロフマスターの方にはちょっと物足りないかもしれませんが……。
そしてこのお店最大のメリットが、ビールやワインを飲むことができること! プロフ専門店はアルコールを提供していないお店がほとんどなのですが、極上のプロフも味わいたい、お酒も飲みたいという欲張りさんは迷わずここへ向かいましょう。
お酒がない時もあるとのことなので、注文時にスタッフに確認を。
なおこのお店から北へ5分歩くと、ジョニ・オシュ・サマルカンド Joni Osh Samarqandという、これまたツアー客御用達のサマルカンドプロフの名店があります(グーグルマップの表記ではДжони Ош Самарканд (Пловная Джони))。もしSamarqand Osh Markazi N1が満席または売り切れだった場合は、こちらのお店に向かってみましょう。ジョニ・オシュ・サマルカンドではお酒は置いていません。
最後に紹介するのが、私の周りのウズベク人知人の間で支持率が高い人気店。サマルカンド駅と観光エリアの中間地点にあり、観光には少し不便な立地ですが、それを差し引いてもぜひ食べてほしいと知人たちが絶賛するお店です。Mahalla(マハッラ)とはウズベク語で住宅街や町内会といったような意味。
お客はほぼ地元の人ばかりのローカル店ですが、半屋外の店内は美しいスザニの装飾が施され、店員さんも民族衣装を着飾っていてプロフを食べる前から好印象。プロフはセルフ配膳方式で、お客自ら大鍋のもとへ行ってシェフに直接注文し、プロフを受け取りテーブルへ持って行く必要がありますが、外国人客でもしっかり対応してくれるはず。お店にとってはウエイターの手間は減るので合理的な方法ですし、観光客にとっては大鍋プロフが最高のシャッターチャンスでもあります。先述のお店ジョニ・オシュ・サマルカンドもこのようなスタイルです。
テーブルにはまな板とナイフが置かれています。プロフには塊肉が載せられてくるので、やはりお客さん自らナイフで切って肉を取り分けてね、というわけです。サービスとしてすっきりした味の白糖飴パルヴァルダも置かれていますが、これも有名店では度々見られるもの。
プロフは脂たっぷりの正統派サマルカンドプロフ。ボリュームたっぷりですが、一心不乱で食べていくとあっという間に平らげてしまうはずです。
ほとんどのプロフ専門店では、昼に一度プロフを作って営業が終了してしまいますが、何とこのお店は夜にもう一度プロフを炊き上げてくれます。観光時間の都合でどうしても夕食でしかプロフを食べることができない方、またはサマルカンドプロフに魅せられ出発前にどうしても名残惜しのひと皿を食べておきたいプロフ中毒予備軍の方にはぴったりのお店です。
なお上記のお店を含め、プロフ専門店ではメニューはないことがほとんど。スタッフに何人前を食べるか告げ、必要に応じてお茶(ウズベク語でchoy チョイ)やジュース(sok ソーク)、コーラなどの飲み物、ナン、サラダ(ウズベク語でsalat サラト)を注文します。値段はどこもお茶、ナン込みで1人約4万スム(2024年2月現在のレートで480円)。
最後にプロフを食する上でのアドバイスを。先述の通りプロフは何といっても脂たっぷりの料理で、脂で米を炊き上げた料理といっても過言ではありません。米と肉のにんじんのうま味が脂とともに絶妙に混ざり合い、何ともいえないおいしさが生まれるのですが、この脂のせいでできあがったそばからどんどん重くなっていきます。プロフを食すのはまさに時間との勝負、できるだけ早めに食べることを心がけましょう。またプロフとの相性がベストの飲み物は油物を分解してくれる作用があるお茶といわれており、ビールと合わせるのはおすすめできないとウズベク人談。
なお私が活動している観光案内所のFacebookページではフォトアルバムでサマルカンドのレストラン情報を載せておりますので、そちらもぜひご参照ください。
それではヨクムリ・イシタハ(召し上がれ)!