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日本にもろう者を描いた映画やドラマはたくさんあります。ただ、われわれ日本人にとって香港のろう者の世界を知っている人は多いとは言えないでしょう。今回紹介するのは2025年2月に一般公開され、若い観客層を中心に支持されてロングラン・ヒットを記録。「第43回香港電影金像奨」で、作品賞・監督賞など、全7部門にノミネートされた『看我今天怎麼説(The Way We Talk / 私たちの話し方)』です。
3歳で聴力を失い、人工内耳を装用することで「聴こえる人」として「 普通」の生活を送ろうとしているソフィー。生まれながらのろう者であり、自身が手話話者であることを誇りに思っているジーソン。そして、ジーソンの幼馴染で、手話と口話の両方を使いこなす、人工内耳装用者のアラン。3人の男女が主人公です。
香港のろう学校は、2005年から社会に早く適応するため、口話(音声言語)及び読話(読唇術)の習得が強制され、学内での手話は禁止していたことがあります。2010年、国際ろう教育会議の声明により、すべての伝達方法は受け入れられ、手話も復権するのですが、一時期、手話を学校で禁止したことは、ソフィー、ジーソン、アランでもわかるように、少なくとも3つの異なる環境下のろう者を生み、結果的に分断を作る仕組み的なものになってしまいました。
また、ろう者内のコミュニティにもいろいろな葛藤などがあることや、日本にもありますが障がい者を雇用することで助成金が生まれたり、障がい者が関連する団体の利権にも絡んでくることなどもしっかりと表現。大人になっていく中で、徐々に変わっていく立場や、それぞれが抱える複雑な感情がしっかり描かれています。
香港映画好きの人なら、大排檔、街角、海岸、香港人がよく楽しむボートでのパーティー、オフィスビルの入口ありがちな長いエスカレーターなどといった香港の日常のようすも映像化されています。
監督の黄修平(Adam Wong / アダム・ウォン)は、ダンスのヒット映画『The way we dance -狂舞派-』(2013年)では、第33回香港電影金像奨新人監督賞を受賞 し、この作品では第43回香港電影金像奨で作品賞などにノミネート。そのほか、声優としても活躍する注目の人物です。
監督は「依然として社会の手話への支援は十分とは言えない。『聞こえないことを克服する』のか、『聞こえないことを受け入れる」のか。その狭間で、ろう者はいかに生きることができるのだろうか。この社会の大きな流れに吞み込まれることなく、自分らしさを守り抜くにはどうすればよいのだろうか』というのを考えながら製作しています。
また、健常者は、ろう者に対する理解と知識を持とうとしなけば相互理解は深まらないことを改めて教えてくれる作品です。
上映は、3月27日より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開予定となっています。