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【スイス】東スイス ザンクト・ガレン 織物と刺繍文化が集約された「織物博物館」(Textilmuseum)

ヘス順子

ヘス順子

スイス特派員

更新日
2026年3月30日
公開日
2026年3月30日

ザンクト・ガレンはかつて「刺繍の都」と呼ばれ、ヨーロッパ最大級の繊維輸出拠点のひとつでした。特に高品質な刺繍製品は世界中で人気を博し、地域経済を支える柱となったほど。この博物館は、その豊かな繊維文化を保存・紹介するために設立され、現在では歴史資料だけでなく、現代デザインとの接点も提示する文化施設としても役割のひとつを担っています。

 

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【スイス】東スイス ザンクト・ガレン 織物と刺繍文化が集約された「織物博物館」(Textilmuseum)

歴史を肌で感じることができる博物館

入口からレースが踊るようなモチーフで期待が膨らみます。

入場チケットとしてもらえる端切れもつい大切に保管してしまうほど可愛らしいのです。これは一番シンプルで地味だったものですが、手触りの良さが格別でした。

 

織物博物館がになう役割

コレクションの特徴 刺繍とレースの名品

外観からは予想できないのですが、この織物博物館が開設されたのは約150年前の1878年。産業の振興のために織物の型絵や図案などを蒐集し、保存するだけではもったいないということで、多くの人々に紹介する場所として作品の展示も始まったそうです。

かつては織物・繊維産業で栄えたザンクト・ガレン。その当時の影響力の強さは蒐集した品物の数だけではなく、珍しさ、美しさからも読み取れます。繊維産業の歴史と美を伝える専門博物館であると同時に、刺繍とレースで世界的に知られたザンクト・ガレンの文化的アイデンティティを象徴する存在でもあり、19世紀から20世紀初頭にかけての産業の隆盛を今に伝えています。

 

日本でいう1階と2階が展示場となっていることが多いのですが、狭いと言っても過言ではないこの館内、さっと歩けば10分で回りきれてしまいます。ですが、繊細な手刺繍や機械刺繍による布地が多数展示されており、ついつい足を止めては見入ってしまうほど。特にザンクト・ガレン産の刺繍は、ファッション業界でも高く評価され、オートクチュールにも使用されてきました。刺繍やレースが好きな方にはたまらない空間だといえるでしょう。

 

歴史的テキスタイル資料

約3万点といわれるコレクションのひとつが、布見本帳やデザイン資料。美しさを愛でるための芸術作品としての価値だけではなく、繊維産業の発展過程を物語る貴重なアーカイブです。産業革命期の技術革新や国際貿易の広がりも読み取ることができます。中には、日本の影響を受けたと思われる図案も。モチーフの描かれ方が繊細で、日本から離れた遠いスイスで見ると、筆者のように格別の思いが湧き上がるかもしれません。日本だけではなく、アフリカやアメリカなどからのコレクションも必見です。

 

現代ファッションとの関係

伝統技術は現代にも受け継がれ、多くのデザイナーがこの地域の刺繍を作品に取り入れています。博物館では、過去と現在を結ぶ展示が行われ、繊維の芸術性と産業性の両面を体感できます。展示されている衣装は、今のお店で見ても試着してみたくなる可愛さ、洗練された美しさ、そして着やすさが想像できるデザインも肌で感じられるほどです。

 

建物と展示体験

博物館は歴史的な建築を利用しており、落ち着いた空間の中で精緻なテキスタイルをじっくり鑑賞できます。展示はテーマごとに整理され、初心者でも理解しやすい構成です。また、特別展やワークショップも定期的に開催されています。筆者は何度もこの博物館を訪れているのですが、1階で大きな織り機が動く様子とその作業を見るのは飽きないほど好きなのですが、おすすめはプレスチックからリサイクルされた「糸」とその糸からできたセーターやカーペットなどを触っていただくことです。本当にプラスチック?と思ってしまうほどの技術なのです。

 

織物博物館とその周りの建物

ザンクト・ガレン駅から織物博物館までは旧市街を通るのですが、あちこちの建物に、かつて、女性たちが家で作業するときの明かり取りが外から見て取れます。織物博物館だけではなく、昔ながらの建物を見ることもおすすめします。

 

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