【カタルーニャ・グランドツアー】歴史を訪ねて。タラゴナ~リェイダ

公開日 : 2024年08月30日
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文化遺産やアート、自然、グルメなど、カタルーニャ州の魅力を存分に体験できる「カタルーニャ・グランドツアー」。ここでは5つのコースのなかから、古代ローマ遺跡が残るタラゴナを出発し、ガウディ生誕の地レウス、エブロ川のデルタ地帯や自然公園、ピカソゆかりの村、世界遺産の修道院などを経て、リェイダへといたるルートをご紹介しましょう。

ローマ遺跡の町タラゴナからガウディの故郷レウスへ

「悪魔の橋」とも呼ばれるタラゴナのラス・ファレラス水道橋 
©Lluís Carro 「悪魔の橋」とも呼ばれるタラゴナのラス・ファレラス水道橋 

バルセロナから南西へ約90km、コスタ・ドラダ(黄金海岸)の中心都市であるタラゴナは、ローマ時代にはタラコと呼ばれ、ローマ帝国のなかでも最も重要な州都のひとつとして繁栄した町。2000年の時を超えて今も残る円形闘技場や公共広場、水道橋などの遺跡群がユネスコの世界文化遺産に登録されています。古代ローマの足跡をたどり、地中海の絶景を楽しんだあとは、内陸へと向かいましょう。

建築家アントニ・ガウディの生まれ故郷として知られるレウス 
©Achim Meurer 建築家アントニ・ガウディの生まれ故郷として知られるレウス 

タラゴナから北西へ15kmほど(列車で約15分)のところに、レウスという町があります。ここは、カタルーニャを代表する建築家アントニ・ガウディの出身地。ガウディは1852年6月25日、銅器具職人の息子としてこの町で生まれました。ガウディ建築に見られる自然への深い洞察力は、幼少期を過ごしたこの地で育まれたといわれています。生家があったとされるサン・ビセンス通り4番地の建物には記念プレートが取り付けられ、近くの小さな広場に幼少のガウディをイメージしたモニュメントが置かれています。このほか、ガウディが洗礼を受けた教会、彼の生涯や作品についての貴重な資料を展示するガウディセンターも訪れてみましょう。

ガウディセンターでは建築の一部が再現され、実際に触れることもできる 
©Achim Meurer ガウディセンターでは建築の一部が再現され、実際に触れることもできる 

かつてベルモット(白ワインをベースにハーブやスパイスを配合して造られるフレーバードワイン)の生産で富を得たレウスには、19世末から20世紀初めに流行した華麗なモダニズム建築が数多く建てられました。なかでも、ガウディと同時代に活躍し、世界遺産に登録されているバルセロナのカタルーニャ音楽堂やサン・パウ病院を手がけた建築家ドネメク・イ・ムンタネーによるカサ・ナバスとペレ・マタ・インスティチュートは必見。きらびやかなステンドグラスやモザイク、家具などが当時のまま保存され、華やかなりし時代を偲ぶことができます。

精神病院として建てられたペレ・マタ・インスティチュート 
©Institut Pere Mata 精神病院として建てられたペレ・マタ・インスティチュート 
ベルモットはレウスを代表する飲み物。町にはベルモット博物館もある 
©Achim Meurer ベルモットはレウスを代表する飲み物。町にはベルモット博物館もある 

■レウス観光
URL:https://reusturisme.cat

地中海の美しい風景と豊かな恵みを満喫

湿地や水田が広がるエブロ・デルタ 
©Patronat de Turisme de la Diputació de Tarragona 湿地や水田が広がるエブロ・デルタ 

レウスで文化の香りにふれたあとは、地中海に沿って南下していきます。コスタ・ドラダの美食の中心地とされるカンブリスでロメスコソースの魚介の煮込み(スケ・デ・ペイシュ・アン・ロメスコ/Suquet de peix amb romesco)を味わったり、ヨーロッパ最大級のテーマパーク「ポルトアベントゥーラ・ワールド」でさまざまなアトラクションを楽しんだりするのもいいでしょう。

ファミリーで楽しめるポルトアベントゥーラ・ワールド 
©Catalan Tourist Board ファミリーで楽しめるポルトアベントゥーラ・ワールド 

■ポルトアベントゥーラ・ワールド
URL:https://www.portaventuraworld.com/en

コスタ・ドラダ沿いの小さな入江にたたずむ町のひとつ、ラメトリャ・デ・マールでは地中海のクロマグロと一緒に泳ぐ、ここでしかできない貴重な体験も。またランポーヤでは、カキとムール貝のテイスティングや養殖場をボートで訪れることも可能です。

イベリア半島で2番目に長い河川、エブロ川が地中海に注ぐ河口部にはエブロ・デルタと呼ばれる三角州が形成され、これまでの風景とは一変します。水田と広大な平野が広がり、砂丘や川辺の森、ラグーンにさまざまな動物や300種以上の鳥類が生息しています。デルタの大部分は貴重な生態系を守るため自然公園に指定されており、ハイキングやサイクリング、カヌー、乗馬などを楽しむこともできます。

エブロ・デルタのフラミンゴは特に有名 
©Sergi Boixader エブロ・デルタのフラミンゴは特に有名 

トルトサからピカソを魅了した中世の村へ

ピカソが訪れたオルタ・ダ・サン・ジョアン 
©Rafa Pérez ピカソが訪れたオルタ・ダ・サン・ジョアン 

エブロ・デルタからエブロ川に沿ってさかのぼるとトルトサに到着。町には14世紀に建造されたゴシック様式の大聖堂をはじめ、ルネッサンス、バロック、モダニズム様式と、さまざまな時代の建物が残り、長い歴史を感じさせます。丘の上にそびえるアラブ様式のスダ城は、国営ホテルのパラドールとなっていて、宿泊も可能です。

エブロ川からトルトサのスダ城を見上げる 
©Patronat de Turisme de la Diputació de Tarragona エブロ川からトルトサのスダ城を見上げる 

さらに内陸へ進むと、オリーブとブドウ畑のなかにオルタ・ダ・サン・ジョアンが見えてきます。丘の上に石造りの家々が並び、中世のたたずまいを残す小さな村は、ピカソが2度滞在したことで知られています。最初は17歳で病気の療養のため、この村出身の友人に招かれて。その後、バルセロナとパリを行き来するするようになったピカソは、28歳のときに恋人で絵のモデルだった女性とともに3カ月ほど滞在し、制作に没頭したそうです。

貴重な作品を展示するオルタ・ダ・サン・ジョアンのピカソセンター 
©Achim Meurer 貴重な作品を展示するオルタ・ダ・サン・ジョアンのピカソセンター 

オルタ・ダ・サン・ジョアンの周囲には、ピカソもインスピレーションを受けたという、エルス・ポルツ自然公園の雄大な風景が広がっています。ピカソはこの村で最も純粋な感情を感じることができたと語っており、ここでの滞在が彼に大きな影響を与えたことは間違いありません。村を訪れたらぜひピカソセンターに立ち寄って、ピカソが残した数々の作品を鑑賞してみましょう。

■ピカソセンター(Centre Picasso d’Horta de Joan)
URL:https://centrepicasso.cat

スペイン最高峰ワインを産出するプリオラート

プリオラートの語源となった修道院があった場所。背後に広がるのはモンサン山脈 
©Achim Meurer プリオラートの語源となった修道院があった場所。背後に広がるのはモンサン山脈 

エブロ川に沿って、テンプル騎士団の城があるミラベット、バニョレス城塞が残るティビッサといった村々に立ち寄りながら、さらに内陸へ。険しい山々がそびえるモンサン山脈に入ると、ブドウの段々畑が目につくようになります。ここが、スペインのなかでも最高品質のワインの産地として名高いプリオラートです。

プリオラートとは修道院長の領土を意味します。12世紀、この土地を気に入ったカルトゥジオ会の修道士たちは、羊飼いから「いちばん高い木に天使たちが上り下りする階段がある」との話を耳にします。それをもとに修道院を建設したのが始まりで、修道士たちがブドウを持ち込み、ワイン造りを始めました。当時からアルコール度数の高い濃厚な赤ワインが造られていましたが、生産環境が苛酷なこともあり徐々に衰退。19世紀には害虫の被害により、ワイン産業はほぼ壊滅しました。

世界的に高い評価を得ているプリオラートの赤ワイン 
©Marc Castellet 世界的に高い評価を得ているプリオラートの赤ワイン 

1980年代、4人の醸造家がプリオラートの可能性に着目し、新しいワイン造りに挑戦しました。厳しい自然環境のもと、固有品種のガルナッチャとカリニェナの古木に育つブドウは、収穫量は極端に少ないものの熟度が高いのが特徴。これにフランス系品種のカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーをブレンドすることで濃厚かつ洗練された赤ワインが造られるようになり、その革新的な味わいが一躍脚光を浴びました。現在プリオラートには約70のワイナリーがあり、リオハと並びスペインに2つしかない最高品質のDOCaまたはDOQ(特選原産地呼称)に認定されています。またプリオラート周辺には、タラゴナやモンサンといったDO(原産地呼称)産地があり、それぞれに個性的なワインを味わってみるのもいいでしょう。

ワイン造りの伝統を守る世界遺産の修道院

1991年に世界文化遺産に登録されたポブレー修道院 
©Sergi Boixader 1991年に世界文化遺産に登録されたポブレー修道院 

プリオラートから北東へ進むと、ブドウ畑のなかにポブレー修道院がたたずんでいます。創建は1150年。イスラム教徒からカタルーニャを奪い返したラモン・ベレンゲル4世が、神への感謝を込めて建立を計画し、フランス・シトー会の修道士たちによって建設されました。戒律を厳密に守り、労働と学習を重んじたシトー会士たちは、自ら農具を手に、すぐれた農業技術で土地を開墾していきました。

カタルーニャとアラゴンを結ぶ要衝に位置するため、修道院は要塞としての機能も兼ね備え、また国王の城館が建てられ、王や王妃たちの墓所も造られました。最盛期の14世紀には200人もの修道士が暮らしていましたが、その後の教会財産没収などによって一時は廃墟同然に。20世紀に入って国の文化財に指定され、建物が修復されると修道士たちも戻り、昔のような修道生活が現在も営まれています。

修道士たちの生活や瞑想の場でもあった回廊 
©Miguel Raurich 修道士たちの生活や瞑想の場でもあった回廊 

フランス・ブルゴーニュ地方を発祥とするシトー会修道院では、伝統的にブドウの栽培とワイン造りが行われてきました。ここポブレー修道院でもブドウ畑を所有し、「アバディア・デ・ポブレー」などの銘柄のワインを生産しています。修道院の敷地にはホテルとレストランが併設されているので、ワインとともにおいしい食事を楽しんだり、ブドウ畑に囲まれて静かな一夜を過ごしてみてはいかがでしょうか。

■ポブレー修道院(Monastir de Poblet)
URL:https://www.poblet.cat

■修道院のホテル&レストラン(Hostatgeria de Poblet)
URL:https://hostatgeriadepoblet.cat

エブロ川の支流のひとつ、セグレ川のほとりに広がるリェイダの街 
©Sergi Boixader エブロ川の支流のひとつ、セグレ川のほとりに広がるリェイダの街 

ポブレー修道院をあとにして、カタルーニャ州の西部に位置するリェイダ県の県都、リェイダへと向かいましょう。ローマ時代以前からの古い歴史をもつ町で、丘の上にひときわ高くそびえる旧大聖堂の鐘楼が印象的です。旧市街には17世紀の修道院を改装したパラドールがあり、観光客に人気の宿泊場所となっています。


タラゴナからリェイダまで、ガウディの故郷とピカソゆかりの村、地中海沿岸やエブロ・デルタの自然、世界的に有名なワインの産地、世界遺産の修道院など、カタルーニャの魅力が満載のルートをご紹介しました。旅の日程や目的、それぞれの興味に応じて自由にアレンジが可能なので、モデルコースを参考にして、自分だけの旅を創造してみてくださいね!

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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