【カタルーニャ・グランドツアー】自然への賛歌。ラ・セウ・ドゥルジェイ~フィゲラス

公開日 : 2024年08月30日
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文化遺産やアート、自然、グルメなど、カタルーニャ州の魅力を存分に体験できる「カタルーニャ・グランドツアー」。ここでは5つのコースのなかから、ラ・セウ・ドゥルジェイを出発してピレネー山脈を東へ、自然公園や中世の修道院などに立ち寄りながら、サルバドール・ダリの出身地であるフィゲラスを目指すルートをご紹介しましょう。

雄大なカディ山脈とピカソが滞在した村

カディ・モイシェロ自然公園にそびえるペドラフォルカ山 
©Sebastiaan Bedaux カディ・モイシェロ自然公園にそびえるペドラフォルカ山 

カタルーニャのピレネー地域の中心都市、ラ・セウ・ドゥルジェイでロマネスク様式の大聖堂を見学し、ウォータースポーツを楽しんだあとは、東へと向かいましょう。ラ・セウ・ドゥルジェイの町からも見える、雪でおおわれた2500m級の山並みがカディ山脈。一帯はカディ・モイシェロ自然公園になっており、森林から草原、渓谷や山塊にいたるまで多様な動植物が生息しています。
カディ山脈のなかでも特に目を引くのが、ふたつの頂をもつペドラフォルカ。その特徴的な形から、カタルーニャを象徴する山のひとつとして知られています。周辺にはハイキングルートが整備され、雄大な風景を眺めながら自然に親しむことができます。またペドラフォルカのふもとにあるゴソルは、1906年にピカソが夏を過ごした村。この地からインスピレーションを受けたピカソは数々の作品を描きましたが、そのひとつ『パンを持つ女』を再現した彫刻が村の広場に置かれています。

ピカソの作品を展示するゴソル村のピカソセンター 
©Catalan Tourist Board ピカソの作品を展示するゴソル村のピカソセンター 

伝統的な地元料理も味わってみましょう。特に、この地域特有のじゃがいもを使ったマッシュポテトは絶品! キャベツと混ぜ合わせたトゥルンフォス・コン・コル(Trumfos con col)や、黒いソーセージのブティファラ・ネグラ(Butifarra negra)と混ぜ合わせたパタタス・エンマスカラダス(Patatas enmascaradas)など、素朴ながら滋味深い山の料理です。

プッチサルダーの町を中心とするサルダーニャ地方

絵のように美しい村ベイベル・デ・サルダーニャ 
©Masahiro Ariga 絵のように美しい村ベイベル・デ・サルダーニャ 

カディ・モイシェロ自然公園の北側、プッチサルダーの町を中心とした地域はサルダーニャと呼ばれます。中世の時代にはバルセロナ伯の領地だったこともありカタルーニャ文化圏に属しますが、1659年のピレネー条約によりスペイン領とフランス領に分割された歴史をもちます。フランスに隣接しピレネーの低地に位置するプッチサルダーには、教会や多くの邸宅、市庁舎など見どころが満載。また13世紀半ばに造られた人造湖は、ポプラなど美しい木々に囲まれ、散策に最適です。

プッチサルダーの中心に残るサンタ・マリア教会の鐘楼 
©JD Andrews プッチサルダーの中心に残るサンタ・マリア教会の鐘楼 

プッチサルダーから車で5分ほど走ると、フランスに囲まれたスペインの飛び地、リビアに到着します。この町では、ヨーロッパで最も古い薬局のひとつで、1415年当時のクラシックな外観を保っている「エステベの薬局」を訪ねてみるのもよいでしょう。

サルダーニャで訪れてみたい村のひとつが、ラ・セウ・ドゥルジェイとプッチサルダーをつなぐ国道260号線沿いにあるベイベル・デ・サルダーニャ。雪をいただくカディ山脈を背景に、石造りの家々が並ぶ風景は、まるで1枚の絵画を観ているかのようです。村にあるサンタ・マリア・デ・タリョ教会は、キリスト教の聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラに向かう巡礼路の重要箇所のひとつ。巡礼者になった気分で、教会へと続く石畳の道をたどってみましょう。

ヌリア渓谷から中世の修道院で知られるリポイへ

石の彫刻が見事なリポイのサンタ・マリア修道院 
©Masahiro Ariga 石の彫刻が見事なリポイのサンタ・マリア修道院 

プッチサルダーから山道を南東へ進み、峠を越えてリベス・デ・フレセルへ。川沿いの並木道が美しいこの町は、夏はハイカー、冬はスキー客でにぎわう山岳リゾート地。ここからフランス国境に近い標高約2000mのヌリア渓谷まで、ラック式の登山鉄道が運行しています。ピレネーの山々に囲まれ、緑の草原に青い湖が広がるヌリア渓谷は、まさに天空の楽園。湖畔でハイキングやピクニックを楽しんだり、ボートクルーズや乗馬などのアクティビティを体験したりと、大自然のなかでリフレッシュできます。

絶景が広がるヌリア渓谷。夏は多くの観光客が訪れる 
©Vall de Núria 絶景が広がるヌリア渓谷。夏は多くの観光客が訪れる 

リベス・デ・フレセルからさらに下ると、標高690mのリポイに到着。中心広場に堂々とした姿を見せるサンタ・マリア修道院は、バルセロナ伯爵家の始祖であるギフレ伯によって879年に創設されました。リポイは今でこそ小さな町ですが、中世にはキリスト教世界とイスラム教世界の接点として、学問の一大中心地として栄えました。修道院の図書館は当時ヨーロッパ有数の蔵書を誇り、後のローマ教皇シルヴェステル2世もここで幾何学や天文学などイスラムの進んだ学問を学んだといいます。

柱頭彫刻が見事なサンタ・マリア修道院の回廊 
©Masahiro Ariga 柱頭彫刻が見事なサンタ・マリア修道院の回廊 

サンタ・マリア修道院の内部に入ってみましょう。12世紀に造られた正面入口はロマネスク美術の傑作。旧約聖書の物語や神話上の動物、1年間の労働の暦などが彫刻で刻まれています。さらに、繊細なアーチで囲まれた回廊も見逃せません。柱頭彫刻には神話のテーマや日常生活に触発されたさまざまな装飾が施され、その素朴であたたかく、時にはユーモラスな姿に心が癒やされます。

ヨーロッパでも珍しい火山地帯ガローチャ

熱気球に乗って上空から火山地帯の絶景を満喫 
©Laurence Norah 熱気球に乗って上空から火山地帯の絶景を満喫 

リポイから東へ、オロットへ向かう途中に、サン・ジョアン・デ・ラス・アバデサスという村があります。貴重な彫刻群を保存するロマネスク様式の修道院や美しい中世の橋があるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。

ガローチャ火山地区自然公園の中に位置するオロットは、ガローチャ地方の中心都市。9世紀頃に形成された町は、15世紀の地震でほぼ壊滅し、その後再建されました。町には4つの火山丘があり、歩いて登ることもできます。町からいちばん近いムンサコパ火山は、10万年前に活動を停止した死火山で標高510m。火口跡が残る山頂からは、山々に囲まれたオロットの町並みが広がり、すばらしいパノラマを楽しめます。

ガローチャ火山地区自然公園ではクレーターの中を歩くこともできる 
©Maria Geli i Pilar Planaguma ガローチャ火山地区自然公園ではクレーターの中を歩くこともできる 

1万2000ヘクタールもの面積をもつガローチャ火山地区自然公園には、約40の火山丘と20以上の溶岩流があり、なだらかな丘陵地帯が広がっています。この地域は雨が多く、「オロットで降っていなければ、どこでも降っていないだろう」といわれるほど。ナラやブナ、トキワガシなどが茂る豊かな森をハイキングしたり、熱気球に乗って空から火山地帯を眺めたりと、アウトドアアクティビティを楽しむのもおすすめです。また自然公園の東側にあるサンタ・パウでは、伝統的なレシピによる火山料理を味わえます。

いくつもの火山丘に囲まれたサンタ・パウの村 
©Pep Sau いくつもの火山丘に囲まれたサンタ・パウの村 

ダリの芸術を生み出した町フィゲラスへ

断崖の上に石造りの家々が並ぶカステルフォリット・デ・ラ・ロカ 
©Masahiro Ariga 断崖の上に石造りの家々が並ぶカステルフォリット・デ・ラ・ロカ 

オロットから東へ、カステルフォリット・デ・ラ・ロカやベサルーなど中世のたたずまいを残す村々に立ち寄りながら、フィゲラスを目指します。

ベサルーには12世紀の橋や旧ユダヤ人街など中世の痕跡が色濃く残る 
©Sherry Ott ベサルーには12世紀の橋や旧ユダヤ人街など中世の痕跡が色濃く残る 

カタルーニャの北東部に位置するフィゲラスは、アルト・アンプルダン地方の中心都市で、バルセロナやフランスと高速列車で結ばれています。シュルレアリスムを代表する芸術家として知られるサルバドール・ダリは、1904年5月11日、町の中心ランブラ広場からほど近いモントリオール通り6番地で生まれました。

モントリオール通り6番地に立つ1900年建造の建物 
©Masahiro Ariga モントリオール通り6番地に立つ1900年建造の建物 

生家があった建物は改装され、2023年11月よりサルバドール・ダリ生家博物館として一般公開されています。当時、裕福な公証人だったダリの父親は建物の1階に事務所を構え、一家は中2階で暮らしていました。ダリは人生の原点となる思い出や経験をこの家で築いたのです。また一家の境遇や、フランス国境に近く開放的で活気にあふれた町の雰囲気は、ダリの人格形成に強い影響を与えました。彼の作品には、生まれ育ったこの土地の風景がしばしば登場します。生家博物館では、最新テクノロジーを用いた臨場感あふれる映像と音声により、ダリの生涯や作品についてさまざまな角度から紹介しています。

中2階にはダリ一家が暮らしていた居間が再現されている 
©Masahiro Ariga 中2階にはダリ一家が暮らしていた居間が再現されている 
360度のイマーシブアートでダリの芸術を体感しよう 
©Masahiro Ariga 360度のイマーシブアートでダリの芸術を体感しよう 

ダリについての知識を深めたら、ダリ劇場美術館を訪れてみましょう。生家博物館から6分ほど歩くと、たくさんの卵とパンのオブジェで飾られた奇妙な建物が見えてきます。この美術館はスペイン内戦中に破壊され廃墟となっていた市立劇場を改装したもので、ダリ自ら設計や内装を手がけ、1974年に開館しました。初期から晩年まで幅広い作品が展示された館内は、まさにダリ芸術の集大成。「世界最大のシュルレアリスムのオブジェ」ともいわれる美術館で、摩訶不思議なダリワールドを体験してみましょう!

建物自体が芸術作品であるダリ劇場美術館 
©Masahiro Ariga 建物自体が芸術作品であるダリ劇場美術館 

ダリの芸術を堪能したあとは、画家ゆかりのレストランで食事を楽しんでみては。ダリ劇場美術館から徒歩約4分のホテル・ドゥランは、かつてのオーナーがダリと幼なじみだったため、ダリ自身もひんぱんにホテル内のレストランに通ったとか。当時を彷彿とさせるクラシックな店内で、カタルーニャの郷土料理を味わってみましょう。

酒蔵の雰囲気が残る小部屋がダリの指定席 
©Masahiro Ariga 酒蔵の雰囲気が残る小部屋がダリの指定席 

ラ・セウ・ドゥルジェイからフィゲラスまで、ピレネーの大自然、中世の村々や修道院、ヨーロッパでも珍しい火山地帯、天才芸術家ダリの美術館など、カタルーニャの魅力が満載のルートをご紹介しました。旅の日程や目的、それぞれの興味に応じて自由にアレンジが可能なので、モデルコースを参考にして、自分だけの旅を創造してみてくださいね!

筆者

地球の歩き方観光マーケティング事業部

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