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アメリカ最大の国立公園である「デスバレー国立公園(Death Valley National Park)」へ行ってきました。2019年の観光客は174万人で、3年連続で訪問者数の新記録を更新している人気の公園です。続けて訪れた「ザイオン国立公園(Zion National Park)」もワイルドな岩山がありながらもこぢんまりしており魅力的です。ラスベガスのネオンサインから砂漠へ、そして山岳リゾートへ。訪れたのは2020年11月。それぞれアメリカ大陸の奥深さを感じる旅を、現地在住のウェブ特派員がレポートします。
【はじめに】2020年12月18日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方ニュース&レポート』では、昨今の世界情勢をふまえ観光地情報の発信を抑制してきました。しかし、2020年5月31日で「期間限定の電子書籍読み放題サービス」が終了したこともあり「近い将来に旅したい場所」として、世界の現地観光記事の発信を2020年6月以降、再開することにいたしました。
世界各地のまだ行ったことのない、あるいは再び訪れたい旅先の詳しい情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス禍収束後は、ぜひ旅にお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを、心より願っています。
「デスバレー国立公園(Death Valley National Park)」は、乾燥した灼熱地獄であり、“死の谷”という名を持ちます。ロサンゼルスやラスベガス、ヨセミテ国立公園からもアクセスできるとあって、国立公園フリークなら一度は行っておきたいコースです。
ラスベガスから気軽な日帰りドライブ旅行を。まずは、カリフォルニア州とネバダ州にまたがる「デスバレー国立公園 (Death Valley National Park )」へ向かいます。ルートはラスベガスのストリップからI-15を北上し、Parumpを通過。Death Valley Junctionから190号線の最短コースです。
国立公園は、だいたいどこでも入り口(Entrance)ゲートで入園料を払いますが、このコースで行くとゲートはないのでそのまま園内に入り、あとからビジターセンター(以下VC)に寄って料金を払います。
何はともあれまず最初にVCに寄って最新情報の収集と地図をもらうのですが、デスバレーにはVCに行く前に外せない絶景ポイント「ザブリスキー・ポイント(Zabriskie Point)」があります。以前訪れたとき、カラメルソースのかかったプリンのようだったのをよく覚えています。“砂漠の中のデザート(Dessert in the Desert)”です。
当時、案内してくれたガイドさんが『猿の惑星』の撮影に使われた場所と教えてくれました。ここからゴールデンキャニオン(Golden Canyon)までは、5kmほどのトレイルコースがあります。
デスバレーの「ファーニス・クリーク(Furnace Creek)」。周辺は宿泊施設であるランチ・アット・デスバレー (The Ranch at Death Valley)を中心に、レストランやサロン、ゼネラルストア、そしてFurnace Creek VCもあり、ちょっとしたビレッジになっています。そしてこのVCで公園の情報を必ず収集してください。ここで、入園料を払うと公園の地図がもらえます。
また、VC前にある大きな温度計は、2020年8月16日15:30に54.4℃/130℉を記録しました。日本のニュースでも大きく映ったあの温度計です。見た方もいらっしゃるかもしれませんね。1913年の56.7℃/134℉以来の記録的な温度でした。
海抜がマイナスになる場所の表示でよく登場するのが、「ELEVATION SEA LEVEL(標高海面)」0m地点の案内板です。ここも記念写真の人気ポイント。表示があるだけの少し歪んだT字路になっているので運転していると一瞬迷う場所でもあります。また、見通しがいいぶんスピードも出やすく、事故も多い場所です。写真を撮るときは十分に気をつけてください。
奥に見えるパームツリー。なんと世界一暑いデスバレーに高級ゴルフ場「ファーニス・クリーク・ゴルフ・コース(The Furnace Creek Golf Course)」があります。入口の看板には“214 Below Sea Level(海抜マイナス65.2m)”と書かれており、ここは世界一低い場所にある国立公園内の非常に珍しいゴルフ場です。ゴルフ場の人いわく11〜4月がベスト・シーズンだそう。
■The Furnace Creek Golf Course
・URL: https://www.oasisatdeathvalley.com/furnace-creek-golf-course/
■The Oasis at Death Valley
・URL: https://www.oasisatdeathvalley.com
干上がった塩田の荒地には「デビルズ・ゴルフコース(Devil’s Golf Course)」、その名も“悪魔のゴルフ場”という名のポイントがあります。フェアウェイはなくすべて強烈なラフ、といっていい場所で、アイアンで打ったらシャフトが折れてしまいそうなゴツゴツした塩の塊がどこまでも続いています。駐車場までは、車間を広く空けて窓を閉めておかないと埃だらけになります。
デスバレーは冬場に砂が舞う砂嵐がときどき起こります。訪れた日は、天気はすごくよかったのですが、はるか彼方では砂埃が舞い上がり、その先の山が見えなくなることもありました。もし砂嵐に巻き込まれ運転が怖いと思ったら、路肩など安全な場所に車を寄せてライトを点灯し、しばらく車内で待ちましょう。
「バッド・ウオーター盆地(BadwaterBasin)」は、デスバレーに来たら絶対外せないポイントで、いつも混雑しています。英語では、“Birth of Death Valley ”“Earth’s Lowest”“But it’s a Dry Heat”と説明書きがあります。少し水の溜まっている場所が、「Badwater Pool」。ここの木道、白い塩の中の道を歩きましょう。
海抜はマイナス282フィートなので、約86m。家の高さは、1階分が3mの目安と言われているので、それを想像すると地下29階です。すごく深い窪地に来たようで驚いてしまいました。
【“Earth’s Lowest”より世界で最も低い場所トップ3】
1 Dead Sea(死海/ヨルダン・イスラエルほか)マイナス414m
2 Lake Assai(アッサル湖/ジブチ) マイナス155m
3 Trufan Depression(トルファンの窪地/中国)マイナス154m
灼熱の乾燥地帯。なぜここが“死の谷”と言われるほど暑いのか? デスバレーは、周囲の高い山に囲まれた場所でとても狭く、空気の循環が非常に悪く暑い空気が留まりやすい地形です。また西側に発生した湿った空気(雨雲)もシエラ山脈などの周囲の山脈に阻まれ、山を越えてバレーに流れ込むときにはとても乾いた風になります。“Rain Shadow(雨陰)”と呼ばれる現象で、乾燥の原因でもあります。
冬場の日本では“からっ風”の言葉を耳にしますが、デスバレーはアメリカ版“赤城おろし”が吹く場所です。加えて太陽光を吸収する植物もほとんどありません。その名にふさわしい、すさまじい環境なのです。
アースカラーのだだっ広いデスバレーですが、デビルズ・ゴルフコースとバッド・ウオーターの間に「ナチュラルブリッジ(Natural Bridge)」と、ほっこりするようなポイントがあったので行ってみました。舗装されていない道路の車列は、砂を巻き上げて砂漠を走るキャラバン隊のようでした。
ナチュラルブリッジ・トレイルヘッドに車を停めます。少し歩きにくい砂利道の緩やかな登り坂をなんとか上がり切ったところで、大岩の間に現れたのがどっしりとしたナチュラルブリッジです。
太陽の角度によって岩の色が変わると思うので、正面から写真を撮ったあと、ブリッジをくぐって裏側にも行ってみてください。乾いたオレンジ色から陰影のある深みのあるオレンジ色になります。アーチーズ国立公園に来たのかと勘違いするほど見事なアーチで、一瞬デスバレーにいるのを忘れたほどです。
「アーティスト・ドライブ(Artists Drive)」は、道幅が狭い一方通行の道。長さ7.7m以上の大型車両は入れませんので気をつけてください。行き方は、ナチュラルブリッジをファーニス・クリーク方面へ北上するとわかりやすいです。
車を停めて向かったのは、色彩豊かな岩の斜面が見られる「アーティスト・パレット(Artists Palette)」。世界一大きなパレットに鮮やかに色づく濃淡の違う“絵の具”は、侵食された岩に含まれている鉱物の種類がそれぞれ異なるのが理由です。
アーティスト・パレットを過ぎると一気に道幅は狭くなります。淡いパステルカラーの岩が次々と現れ、水彩画の世界に入り込みます。ここは淡い色の流れをうっとりしながら眺めておきましょう。
この一方通行のドライブでは迷うことなく本道(Badwater Road)に出ます。右折してファーニス・クリーク方面へ。デソレーション・キャニオン(Desolation Canyon)を通過すると、最初に立ち寄ったザブリスキー・ポイントからのトレイル終着点の「ゴールデン・キャニオン・トレイル(Golden Canyon Trail)」に到着します。
公園で最も人気のトレイルと聞いていましたが、駐車場の外にまで車が停まっていたので、その人気ぶりがうかがえました。名前のとおりその黄金色は深く濃いゴールドです。季節としては、このトレイルに訪れるのは晩秋〜早春が最適でしょう。
ラスベガスからデスバレー・ジャンクション経由で3時間足らず。帰路もナビゲーションの検索結果同じルートでした。途中のPahrumpで休憩。Amargosa Opera Houseは、ゴーストタウンのような雰囲気があって、観光ポイントになっているのを知りました。乾いた砂漠の中のオアシス的な存在のホテルもいつかは泊まってみたい場所です。
ユタ州の「ザイオン国立公園(Zion National Park)」は、2019年の訪問者は数450万人です。公園局によれば、世界遺産のヨセミテ国立公園の入場者数と同じくらいでたいへん人気のある国立公園だそう。グランドサークルの一部で、実は秋に訪れたときに、紅葉の最も美しい週だったため、混雑でパーキングが見つからず諦めました。
この時期でも駐車場は午前中でいっぱいになりそうなほど。ラスベガスとは時差が1時間あるので、駐車場確保のために早く出発することが肝心です。
園内は、一般車両が通れる場所は限られているので、園内宿泊者以外は南側の入口(South Entrance)である「ザイオン・キャニオン・ビジターセンター(Zion Canyon VC)」で駐車して、公園のシャトルバスを利用しましょう。キャニオン・ジャンクション(Canyon Junction)からも北側には行けませんので、VCに向かってください。
2020年7月からシャトルバスは予約制になりました。2歳以上はチケットを予約、遅くとも前日までに済ませておくことです。園内に売り場はないので要注意。始発は8:00〜9:00、9:00〜10:00と毎正時に1時間枠のチケットになっており、最終時間枠は12:00〜13:00で、その時間枠内で乗車するように求められます。
ペーパーチケット、もしくはモバイルチケット(スクリーンショット推奨)は、乗車の際必ず確認されます。チケットがない場合は、パークレンジャーの説明では14:00以降に席があったら乗れるかもしれないとのことでした。なお、他人に譲渡はできないのでID提示が求められるかもしれません。チケットは無料ですが、手数料で$1がかかります。
予約は2週間ごとです。例えば、11月11日〜1月15日の予約分は10月16日の9:00から予約開始になります。このウェブサイトを見たとき、シャトルバスの予約なのに細かいなあと戸惑いましたが、それだけ管理されているので仕方ないとも思いました。いずれにしても事前に予約するに越したことはありません。
■Zion Canyon Shuttle
・URL: https://www.recreation.gov/ticket/facility/300016
・電話によるチケット問い合わせ: 1-877-444-6777
VCには四つ折りにするとA5サイズになる「Shuttle Stops and Zion Canyon Trail」があります。止まらないバス停やトレイルの情報が網羅されているのでかなり便利です。7月以降変更になっていることや、閉鎖になっていたりする場所が発生しますので、できれば事前に情報を調べVCで再確認するのがおすすめです。
VCから出発するシャトルバスは、公園内に生息している動物などがデザインされており、乗るのが楽しくなります。風光明媚なシーニック・ドライブ(Scenic Drive)を30分ほどかけてナレーションを聞きながら進みます、停車するバス停は、VCから#5ザイオン・ロッジ(Zion Lodge)→#6グロット( The Grotto)→#8ビッグ・ベンド( Big Bend )→#9のテンプル・オブ・シナワバ(Temple of Sinawava)を巡回するコースです。#9で降りると、リバーサイド・ウォーク(Riverside Walk)、そしてナローズ(The Narrows)に行くことができます。
■バスのナレーション(英語)
・URL: https://www.nps.gov/zion/learn/photosmultimedia/shuttle-narration.htm
“ザイオン国立公園=ナローズ(The Narrows)”と言われるほどの必須ポイント。リバーサイド・ウオークを歩いているとき、完全防水の服装に杖を持っている人が多くいました。まさかと思ったのですが、冬場でも川にザブザブと入っていくのには驚きました。この日、到着時の気温は9℃。夏場はともかく冬場(11月〜)は、本格的な防水ブーツ、パンツ、ジャケット、杖の“ナローズ・セット”が必要です。
公園南側のスプリングデール(Springdale)に、レンタルショップが数件あるので借りましょう! フル装備の人に質問してみたら、一式で$50だったそう。また、戻ってきた人たちに様子を聞いてみたら、水自体はさほど冷たさは感じなかったし、水かさは深いところで(大人の)膝上くらいまでとのことです。とにかくすごく滑るから上下のスーツを借りたほうがいいとのアドバイスでした(ひょっとして転んじゃったのかしら?)。天気がよかったので大人は防水ジャケットを着てない人もいましたが、子供たちは上下着用していましたので参考までに。
事前調査も虚しく冬場にも入れるとは思わず、ハイキングだけの装備のため断念しました。なかには裸足でトライしていた強者もいましたが、やっぱり冷たいので無理はしないほうがいいと思います。
帰ってきた方たちの表情は、やけに達成感いっぱいの表情で、全員でガッツポーズの写真を撮っていました。それくらいの価値があるやるべきアクティビティということです。
しかし、急な増水など状況が刻一刻と変化するので気象情報には十分注意してください。また、諦めて戻る選択肢も安全な旅には大事です。
■Rental Equipment shop
・URL: https://www.zionguru.com
リバーサイド・ウオークから再びシャトルバスに乗って、公園で唯一のホテル「ザイオン・ロッジ(Zion Lodge)」で休憩するのはおすすめですよ。アメリカの歴史的ホテルにも登録されているだけあって、歴史を感じる重厚なホテルロビー(のぞいただけで入りませんでした)でした。
カフェで注文したハンバーガー&飲み物($12ほど)は、ホテルのカフェだけあって、お肉はしっとりしており野菜もみずみずしくおいしかったです。ホテルの前庭や大きな木の下でのゆったりランチもいいですね。子供たちは走り回ったりして、冬の柔らかい日差しのなか、思い思いのリラックスタイムを過ごしているようでした。
ギフトショップは、こぢんまりしていますが、クオリティが高くすてきなグッズがたくさんあります。人数を制限していることもあり、ゆったり見ることができます。かわいい懐中電灯を見つけておみやげに買ったのですが、レジのスタッフに「宿泊者ですか?」と聞かれました。すぐに使うかどうかの質問だと思いますが、どうもここに泊まるには必需品のようです。
昼間は明るいのですが、夜はほとんど外灯がないため必要なのかもしれません。夏は予約が取れないと聞きます。奥座敷的な場所のロッジの予約者はここまで車で来られる利点もあり、山岳リゾートを十分に楽しめます。
■Zion Lodge
・URL: https://www.zionlodge.com
現在、ミュージアム(Zion Human History Museum)は閉鎖になっているので、シャトルバスで最寄駅の(#2 Museum)には止まりませんが、VCから徒歩20分で行くことができ、ナチュラルブリッジの「クロフォード・アーチ(Crawford Arch)」が見えます。
ザイオンには超有名な“コロブ・アーチ(Kolob Arch)”というのがあり、ガイドブックでも紹介されていますが、こちらは拡大してみないとどこにあるかわからないほど小さいです。ミュージアムの裏手には「テンプル・キャップ(Temple Cap)」も見え、バスでは寄れない隠れたポイントです。
■Zion Human History Museum
・URL: https://www.nps.gov/zion/learn/historyculture/zion-human-history-museum.htm
世界一の繁華街でショー・ビジネスの町であるラスベガスは、年間を通して絶えず観光客が訪れ、さまざまなコンベンションがあります。コロナ禍のいまはそこまでのにぎわいはありませんが、それでも観光客はいました。その場所からわずか2時間あまりで、およそ人を寄せつけないような灼熱の乾いた死の谷に到着します。デスバレーのどこまでも続く塩の大地を眺めると、カジノで負けてしまっても、まあいいかと思えたりします。
2020年の夏に再開し観光客を迎えているザイオン国立公園は、実に整然とニュールールにそって運営をしていると感じました。公園自体がそう大きくないのですべてが行き届いていて、シャトルバスの予約もびっくりするほど管理されており、やはり人気の理由がそこにあると思いました。皆がルールを守り、お互いをリスペクトしあっているようにも見えました。
どちらの公園も大自然だから密にはならないように思いますが、それに甘んずることなく安全対策を徹底していたのには感服しました。
大きな岩や川の流れ、塩の大地はどんな時代でも変わらず広がり、流れ、存在しています。いまは行くこと自体がたいへんなときですが、近い将来、何の不安や心配もなく旅行をできる日がきっと来ます。そのときこそ、乾き切った暑さに驚いたり、腰までつかる川に挑んだり、マスクなして大声で笑えるように……少しでも早く心おきなくはしゃげる日が戻ってきて欲しいと思います。
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※当記事の観光情報は、2020年12月18日現在のものです。
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2020年12月18日現在、外務省はアメリカについて「渡航は止めてください(レベル3)」の勧告を出しています。渡航についての最新情報、情報の詳細は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html