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“イギリス特有のお酒”として多くの人が思い浮かべるのは、スコッチ・ウィスキーやエールビールではないでしょうか。起源はイタリアやオランダですが、17世紀にオレンジ公ウィリアムがイングランド国王となった際にオランダから持ち込んだといわれるジンも、実はイギリスで発達を遂げたお酒です。
産業革命の時代には庶民向けの退廃的なお酒とされ評判を落としましたが、今世紀になって人気が復活! その起爆剤といわれているのが、小規模な蒸溜所による高品質なクラフト・ジンの誕生でした。本記事で紹介する「ダヴィ―蒸溜所」も、こだわりの製造元のひとつです。
ジンの製造に欠かせないのは、ジュニパーベリーに代表されるさまざまなハーブ類。お酒の原料そのものは大麦、ライ麦、ジャガイモなどですが、そこに独特な香りを加えるのに必須です。
そこで注目したいのは、ダヴィ―蒸溜所がユネスコの指定する生物圏保護地域(ユネスコ・エコパーク)にあるということ。日本でも志賀高原や屋久島などが指定されているので、ご存知の方も多いことでしょう。
ダヴィ―蒸溜所のあるユネスコ・エコパークは、ダヴィ―川の三角江に位置します。緩やかな山や丘陵に囲まれた低湿地帯では、イギリス国内では珍しいほど豊富な種類の植物に恵まれています。
そんな環境に着目して独特のジン造りを目指したのは、ピート・キャメロンとダニー・キャメロンの兄弟。それがダヴィ―蒸溜所の始まりです。
ダヴィ―蒸溜所はユネスコ・エコパーク内、「コリス・クラフトセンター」という敷地のなかにあります。
森林に囲まれた緑豊かなロケーションのなかでは現在9つの工房や製作所が操業しており、ガラス工芸や木工家具のスタジオなどクリエイティブかつ開放的な雰囲気が魅力です。
ただし冬は厳しい気候になる地域でもあるため、一般に公開しているのは4月から10月の7カ月間のみです。予約は不要なので、天気の良い日を選んで行くのがベストです。
また「アーサー王の迷路(King Arthur’s Labyrinth)」や「ストーンサークルの伝説(Lost Legends of The Stone Circle)などのアトラクションも隣接しているので、子供連れの家族でも楽しむことができます。
通常、ジンに使われるハーブは7種類~9種類とされています。なかでも欠かせないのはジュニパーやコリアンダーシード、カルダモン、ヘザーの根や種子などです。
しかし、蒸溜所が生物圏保護区内にありさまざまなハーブが手に入りやすいメリットをもつダヴィー蒸溜所では、定番ハーブに加えさまざまなハーブを使用してジンに香りづけをしています。
それに加え、ワイン専門家としてのキャリアも豊富なダニーさんによる、従来のジン製造者には思いつかなかったアイディアも大いに功を奏しているようです。
ダヴィー蒸溜所を代表するジンは3種類あります。
・「ダヴィー・オリジナル」
2018年 グレート・ブリティッシュ・フード・アワードでベスト・ブリティッシュ・ジンに選出
・「ポリネーション」
2017年 グレート・ブリティッシュ・フード・アワードでベスト・ブリティッシュ・ジンに選出
・「ハイバネーション」
2017年 インディペンデント紙主催INDY/BESTでベスト・ニュー・ジンに選出
2018年 50ポンド以下で買えるベスト・バイ・ジンに選出
試飲してみたところ、私が一番気に入ったのはハイバネーションでした。ストレートで少しずつ舐めるように飲んだのですが、とってもまろやか。
ハイバネーションはビルベリーや姫リンゴなど、秋の野生フルーツを取り入れたものを、ポルトガルから買い入れた100年以上という古いホワイト・ポートワイン用の樽で熟成させたものです。ワイン専門家だったダニーさんの、真骨頂が発揮されたひと品といえます。
今回の蒸溜所見学で特に感動したのが、醸造ルームにずらりと並ぶボトル。ラベルには、3ヵ所の空欄があり話を聞くと、空欄には手書きで製造年、ロット番号、製造者名(兄のピートさんの名前)を書きこんでから商品として完成するそうです。1本ずつ直筆なんて、さすがこだわりのジンです!
ウェールズの大自然と、キャメロン兄弟の創意工夫の結晶といえる特別なジンを紹介しました。あなたもいつか飲んでみませんか?
■ダヴィ―蒸溜所(The Dyfi Distillery)
・住所: Corris Craft Centre, Corris Machynlleth Wales SY20 9RF United Kingdom
・電話番号: 01654 761551
・営業時間: 4月~10月 毎日10:00~17:00
・URL: https://www.dyfidistillery.com/
※コロナの流行状況により、営業日や営業時間が変更となる恐れがあります。
最新情報は公式ウェブサイトでご確認ください。
巻頭ページでは各地方の魅力をビジュアルで紹介し、体験してほしいテーマは厳選して詳しく解説。さらに世界遺産リストやイベントカレンダーも掲載しています。大観光都市ロンドンや、美しい自然が心を癒してくれるカントリーサイドを訪れる皆さんの「自分流の旅づくり」をとことん応援する一冊です。
■地球の歩き方 ガイドブック A02 イギリス 2019年~2020年版
URL: https://hon.gakken.jp/book/2080126700
※当記事は、2022年2月8日現在のものです。
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年2月8日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。