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先日カスティーヤ・イ・レオン州のソリアで開催された国際トリュフ料理コンクールについてレポートしましたが、今回はその前日に訪問したソリア郊外のトリュフ農園のお話です。トリュフと言えば昔は自生しているものしかありませんでしたが、今では流通するトリュフの9割が栽培ものだとのこと(自生でも栽培でも風味に違いはないそうです)。トリュフ農園ってどんなところなんだろう?とわくわくしていた私を迎えてくれたのは、なんとも愛らしい豚ちゃんでした。
今回お邪魔したのはトリュフ農園のEncitruf。ソリア市中心部からトリュフ栽培の中心地アベハール方向に車で20分ほど行った場所にあります。農園を切り盛りするのはハビエル&フェリ夫妻。ハビエルのお母さんが飲食業に就いていて、トリュフに着目したことが栽培を始めるきっかけだったそうです。
農園では、トリュフ栽培のほかにトリュフが寄生しやすい西洋ヒイラギガシの苗木を育てて販売しています。また、観光の一環としてトリュフツーリズムも手掛けています。私はここで初めて耳にしましたが、トリュフツーリズムはスペイン語でtrufiturismo(トゥルフィトゥリスモ)と言うそうです。
トリュフは地中に生息するいわゆる“きのこ”で、スペインで栽培されているトリュフは黒トリュフが主流。世界の生産量を見ると1位がフランスで約45%、次いでスペインが約35%を占めるのだとか。ここで栽培しているのも黒トリュフです。その希少性からスペインでは“diamante negro(黒ダイアモンド)”と呼ばれます。
収穫シーズンは11月から3月。特にクリスマスの終わった後からが旬だそうです。トリュフはカシやナラの木の根元の近くに寄生しますが、地表には出てこないため、昔から犬や豚の嗅覚を頼りに収穫していました。この農園では、現在9匹の犬と1匹の豚がトリュフハンターとして活躍しています。「トリュフ犬に適した種や性別はないけれど、だからってどの犬もなれるわけではないの」とフェリが話してくれました。生後2か月過ぎから訓練をはじめ、適性を見極めるそうです
Encitrufの看板っ子はトリュフ豚のブジャ。昔はトリュフ狩りに豚が使われていましたが、その後犬だけになったといいます。そこでハビエル&フェリ夫妻は「トリュフ豚を復活させてみない?」と思いついたとのこと。生後3か月の子豚を飼いはじめ、ひと月ほどしてから訓練をはじめたところ、現在はスペインで唯一のトリュフ豚に育ったそうです。
ブジャは、私たちが農園に着くとフェリと一緒にブヒブヒと出迎えてくれ、とってもフレンドリー。フェリが「お手」と言うと、ちゃんと前足を出すのです。豚ってこんなに賢くかわいらしいのですね。人気者のブジャは、インスタグラムのアカウントも持っているんですよ。興味のある方はこちらをどうぞ。
農園ではブジャの活躍ぶりを見せてもらいました。地面のにおいを嗅ぎながら、とことこと歩いていくブジャ。どんぐりが好物なので、トリュフを見つけたかと思ったらどんぐりを食べていることも。トリュフの香りを感知すると、鼻を使って土を掘りはじめます。そこでハビエルやフェリが手伝い、共同作業でトリュフを見つけるのです。見つけた後にもらえるご褒美が楽しみなようでした。
この日はブジャと犬のルナと農園に行ったのですが、ルナが大きなトリュフを見つけていました。私はブジャに夢中で、トリュフ犬の仕事ぶりを見逃したことが残念。ちなみにこれまで農園で見つけた一番大きなトリュフは600gもあったそうです(相場としては1㎏で約800ユーロ)
日本ではなかなか入手が難しいトリュフですが、手に入れた時のアドバイスを聞いてきました。まず、獲ってから1週間以内に食べることがお勧めだそうです。冷水で洗ってから乾かし、キッチンペーパーに包んでタッパーウェアに入れ、冷蔵庫で保管します。1日おきにふたを開けて空気にあてるといいそうです。凝った料理にする必要はなく、半熟の目玉焼きやカルボナーラ、クリーム系のリゾット、バタートーストなどに削ってかけるだけで香しいトリュフの風味を楽しむことができます。ただ、地元の味を楽しむにはそこに行くのが一番。ぜひトリュフシーズンにソリアに来て、トリュフ料理や農園訪問をお楽しみください!!
訪れるたびに新しい感動が待っている、大人気のスペイン。今回の巻頭は、高速列車AVEの開通でますます注目度UPの「グラナダ」特集! スペイン料理カタログからバルの楽しみ方まで食を満喫する手ほどき、多彩な世界遺産、フィエスタなども写真豊富にご案内。図版つきの名所ガイドや、各地の魅力的な町も多数収録しています!
■地球の歩き方 ガイドブック A20 スペイン 2020年~2021年版
・URL: https://hon.gakken.jp/book/2080128500
※当記事は、2022年4月1日現在のものです
スペイン・バレンシア特派員 田川 敬子/地球の歩き方編集部
〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2022年4月1日現在、国によってはいまだ観光目的の渡航が難しい状況です。『地球の歩き方 ニュース&レポート』では、近い将来に旅したい場所として世界の観光記事を発信しています。渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
旅したい場所の情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス収束後はぜひお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを心より願っています。
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