世界最北の観光地で廃墟を訪問 ピラミデンPyramiden
2023.2.10
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ノルウェー領のスヴァールバル諸島は、定期運航便を使って訪問できる世界最北端の観光地です。ゲートウェイはスピッツベルゲン島にあるロングヤービーエンで、いたるところに世界最北端の物件があります。ここはどんな町で、どんな観光ができるのでしょうか。世界最北の観光地をご紹介します。
※観光局や航空会社ではロングヤービーエンという日本語表記を採用していますが、ロングイェールビーン(Wikipedia)やロングイールビュエン(Google map)と表記されることもあります。
目次
ノルウェーのオスロやトロムソから定期便が飛ぶ人口約2500人の町です。北緯78度13分に位置しており、町には世界最北のポイントがあちこちにあります。以前は炭鉱業で栄えましたが、現在のメイン産業は観光業です。スヴァールバル条約に加盟している国の国民であれば、ビザなしで渡航、居住することができ、就業も可能です。
町は大学から延びる道路をメインストリートに、南北に広がっています。住宅やオフィス用の建物はわりと狭いエリアにT字状に存在しており、町の南部の外れにはレストランや宿泊施設が点在しています。観光するには町の中心部近くに滞在するのが便利です。
ロングヤービーエンの町歩きでは博物館と世界最北ポイント巡りを楽しみましょう。まず訪れたい場所は、町の北に位置するスヴァールバル博物館Svalbard Museumです。スヴァールバル諸島の自然や炭鉱業の歴史などを知ることができます。極地にすむ動物たちの剥製も豊富に展示され、彼らの行動を特徴づけるポージングが施されています。動物たちのサイズや生態がひと目でわかります。スヴァールバル博物館の北側には北極点探検博物館North Pole Expedition Museumがあります。
世界最北のポイントはあちらこちらにあります。写真に映えるのは町の西側に位置するスヴァールバル教会Svalbard churchです。博物館が入っている大学も世界最北です。民間人が定住している町としては、世界各国の研究者が滞在しているニーオーレスンという町もあり、そちらには世界最北の郵便ポストがありますが、ATMやホテル、博物館などはロングヤービーエンの物件が最北です。町歩きを楽しみながら探してみましょう。
ロングヤービーエンも一時はオーバーツーリズムが心配されるほどおおぜいの観光客が訪れていました。そのため宿泊施設の建設が進みましたが、元々のキャパシティが少ない場所ですので、夏のハイシーズンは今後も混雑すると思われます。空港の近くにキャンプ場がありますが、キャンプの際はホッキョクグマ対策が必要ですので、知識のない人が個人でキャンピングするのは現実的ではありません。必ず宿を取ってから訪れましょう。
レストランやおみやげを購入できるショップはそれほど多くはなく、メインストリート沿いに点在しています。レストランはホテルに併設されていることもあります。希望する時間にきちんと食べたいと思うときは、事前に予約を入れておくのが無難です。おみやげ探しなら、まずは町の中心部にあるスーパーマーケットThe Svalbard Storeを訪問しましょう。食料品やお酒からおみやげ、電化製品、化粧品まで何でも揃っており、免税で購入できます。
緯度が高いため、夏は真昼並みに明るい白夜、冬は漆黒の闇が続く極夜のシーズンとなります。冬でもアクティビティ体験は可能ですが、行動できる範囲が広く景色も楽しめる夏に旅行することをおすすめします。夏でも気温は低く、平均気温は10度未満と寒いので、関東地方の真冬の服装をイメージして準備していきましょう。太陽が出て暖かくなったとしても、半袖が必要なほどではありません。風が強いので、マフラーや手袋、帽子も必要です。冬はマイナス20度以下まで下がるので、しっかりした防寒着が必要です。
持ち物としては白夜に備えてアイマスクを準備しておくことをおすすめします。またスリッパが必携です。ノルウェーでは日本同様、自宅では玄関先で靴を脱ぐ習慣があります。ロングヤービーエンでは、ホテルでもそのマナーが適用されており、館内レストラン利用時にも靴を脱ぐことがあります。しかし日本のように室内履き(スリッパ)が準備されていることはまれですので、持参していくことをおすすめします。さすがに裸足では足が汚れてしまいます。
スリッパも布製のものよりはサンダルのような水にも強い素材にしたほうが無難です。宿によってはバスルームの床に段差がなく、シャワーを使うとバスルームの床全体が水浸しとなってしまう施設もあるからです。あとはティッシュペーパーも持参しましょう。日本では安宿でも必ずといっていいほどティッシュペーパーが準備されていますが、北欧の宿では期待できません。
ノルウェーのオスロまたはトロムソからアクセスできます。オスロからは約3時間、トロムソからは2時間弱です。世界最北の国際線空港ロングヤービーエン空港(3レターコードはLYR)があり、空港と町を結ぶバスも運行されています。ノルウェーからのフライトですが、スヴァールバル諸島はシェンゲン外のため、国際線扱いになります。搭乗口がターミナルの端になっている可能性もあります。搭乗口に向かう際は早めに行動しましょう。パスポートも必要ですので、ノルウェーに再び戻る予定があったとしても持参しましょう。
町の中心部では問題ありませんが、郊外に出るときは銃を持った人とともに行動する必要があります。ホッキョクグマに遭遇した場合に備えての準備です。ロングヤービーエンの町の近くの犬ぞりアクティビティ会社の方の話では、施設の窓からホッキョクグマが中をのぞいていたこともあるそうです。2020年8月末には空港下のキャンプ場でオランダ人男性がホッキョクグマに襲われ、死亡するという事故がありました。
ロングヤービーエンにも病院はありますが、そこで対応できないような病状になる可能性もあります。必ず海外旅行傷害保険に加入しておきましょう。クレジットカード付帯の保険では、万が一の際に補償されないケースもありますので、必ず契約内容を確認しておいてください。
北緯78度を超える極地での滞在は、特に自然に触れるほどその極端な自然環境に驚かされます。道端の1cmにも届かない小石の影が10cm近くにも伸びる様子も見られます。町に住む人々から日頃の生活の様子を聞けば、ここでの暮らしが別世界だということがよくわかるでしょう。ロングヤービーエンは個人旅行でもアクセス可能な究極の旅行先です。
Text、Photo:小山田浩明
監修:地球の歩き方