定期運航便で観光できる世界最北の町 ロングヤービーエンの魅力
2023.2.3
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ホッキョクグマは気候変動の影響を受け、絶滅の危機にある北極の王者です。南極のペンギンのようなコロニーをもたず、氷上や海上で生活しているため、遭遇するのは難しいですが、観光旅行でも目撃できる可能性がある場所がいくつかあります。ホッキョクグマの生態とどこに行けば観察できるかをご紹介します。
目次
北欧およびロシア、カナダの北極圏エリアとカナダのハドソン湾に生息しています。氷上で狩りを行いますので、海と氷が接するエリアの氷の上で生活しています。子育ては陸上に雪洞を堀りそこで3月から4月にかけて出産し、母親が2~3年に渡り子供の世話を行います。夏は南のエリアの氷が溶けてしまうので、氷が残る北部で生活します。
ホッキョクグマは常に移動しているので、遭遇のチャンスは乏しいですが、カナダのチャーチルでは10月から11月にかけ、町の近くを移動するホッキョクグマの姿を見ることができます。近年ロシアのいくつかの村にエサを求めて定期的に姿を現しており問題になっていますが、観光旅行で訪問できる場所ではありません。この記事の写真はスヴァールバル諸島で撮影しましたが、メインの島スピッツベルゲン島では、クルーズツアーが催行されており、夏季は高確率でホッキョクグマと出合うことができます。遭遇の可能性がある期間が長いことと、トータルの旅行代金を勘案すると、ロングヤービーエンから出る宿泊タイプのクルーズツアーに乗るのがおすすめです。
体毛が白いのでシロクマとも呼ばれますが、体表は黒色で白く見える毛は中空になっている透明な毛です。毛の中に空気があることで断熱性が高まり、北極の冬もしのぐことができます。泳ぎも得意で1日に数十キロメートルを移動することが可能です。学名のUrsus maritimusは「海のクマ」という意味で、海棲哺乳類として分類されています。
脂肪を蓄えたワモンアザラシを主食としており、氷上で待ち伏せによる狩りを行います。アザラシが呼吸のために上ってくる穴のすぐそばで待ち構え、水面に顔を出したところを襲います。また前足に体重をかけて氷を崩し、氷の下の穴に隠れている赤ちゃんアザラシを狙うこともあります。非常にすぐれた嗅覚をもち、1km以上離れた場所から獲物の臭いをかぎ分けることができます。
ホッキョクグマの足は前足には水掻きがあり、氷の上で滑らないように肉球がよく発達しています。足の裏の毛とともにブレーキの機能を果たすと考えられています。氷の上で体重を分散させるため、足裏は幅広く大きな面積を有しています。
ホッキョクグマは食物連鎖の頂点に位置していますが、子連れの雌グマは雄グマに襲われる危険性が高いので、常に注意しながら行動しています。身体は顔が小さく首が長い流線型スタイルです。水中を泳ぐのに適した姿をしています。潜水も得意で鼻の穴を閉じて潜ることができます。また耳は小さく放熱を抑えているとも考えられています。
ホッキョクグマは1973年までハンティングの対象とされていました。北極圏の町に行けば、さまざまな場所で剥製と出合うことがあります。しかし、現在は絶滅の危機に瀕しており、ホッキョクグマは大切に保護されています。スピッツベルゲン島では、ロングヤービーエンの町から離れるときは銃を携帯しなければなりませんが、ホッキョクグマへの無差別な発砲が許可されているわけではありません。
個人旅行が可能なスヴァールバル諸島の例をご紹介します。ゲートウェイの町であるロングヤービーエンの町なかではさすがに遭遇の心配はありませんが、30分ほど歩いたエリアに行くと、ホッキョクグマとの遭遇の危険性があります。町の東の道路にホッキョクグマ注意の道路標識が立っています。
別記事のロングヤービーエン訪問時の注意点に書きましたが、スヴァールバル諸島では銃を携帯するか、銃を携帯した人とともに行動する必要があります。またホッキョクグマの接近を知らせるための犬を連れていくことも有効な対策です。
ホッキョクグマと遭遇し、こちらに向かってくるようだったらまずは信号拳銃などを使い光や音で威嚇します。それでも接近しこちらを襲ってくる兆候があれば発砲が認められますが、横向きのホッキョクグマを撃つのは違法で、正面から向かってくる場合にのみ射殺が正当化されています。
現在の生息数は2万数千頭と言われています。統計数字上では激減しておらず、ホッキョクグマは安泰だという説を唱える人もいますが、エサ不足から体格が小さくなっており、以前は捕食しなかったスヴァールバル・トナカイを襲う個体が現れたり、ロシアの村を定期的に訪れてゴミをあさったりする個体が現れています。
気候変動による海氷の消滅はホッキョクグマの狩場を奪うだけでなく、アザラシたちの子育て場所も奪っています。主食のアザラシが減少すれば狩りはますます難しくなります。また海洋汚染の影響で、食物連鎖の頂点にいるホッキョクグマが体内に有害物質を蓄え、寿命が短くなっているとも報告されています。生活スタイルを変えたり、狩りの方法や獲物を変えたりと、ホッキョクグマは環境に順応しようとしていますが、その将来は楽観的なものではないといえるでしょう。
Text、Photo:小山田浩明
監修:地球の歩き方