キーワードで検索
3年に及ぶコロナ禍が終わろうとする中、日本と中国を行き来する日本人の動きも再び活発化してきています。日本にとって中国は最大の貿易相手国であり、日本企業の進出先でも長年トップです。
中国に進出するのは大企業だけでなく多く中小企業も積極的に展開しており、アフターコロナで再び日中経済が活性化することが期待されます。しかし、地政学的観点からみると、今後の中国渡航については不当拘束の面から注意が必要です。
昨年秋、中国の習国家主席は3期目をスタートさせましたが、3年にわたるゼロコロナ政策の影響で国内経済は停滞し、経済成長率も鈍化傾向にあります。それによって中国国内では習体制への不満が高まっており、北京や上海では”習独裁体制反対”などと書かれた横断幕を掲げる市民の姿も目撃されています。習政権が最も警戒するのは国内からの反発であり、今日習政権はそういった反不満分子が大きくならないよう国内での監視の目と強めているとされます。
また、米中対立や台湾を巡る緊張に伴い、中国は軍事戦略や安全保障政策など国家機密に関する情報が米国など対立国に流れないよう、国内にいる外国人へも監視の目を強めています。近年、米国や英国、オーストラリアなど欧米諸国は中国電子機器メーカー製造の監視カメラなどの使用を止め、最近では安全上の懸念が高まっているとして、政府職員が職務用で使用する携帯電話で中国発動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を使用することを禁止すると相次いで発表しましたが、中国も同様の警戒を欧米諸国に対して抱いています。
習政権の発足から10年が経過しますが、その間中国では反スパイ法や国家安全法など国内で反政権的な行動を抑え込む法律が施行され、スパイ容疑で捕まる日本人が相次いでいます。これまでに15人以上の日本が逮捕され、昨年にはスパイ行為に関わったとして北京で拘束され、懲役6年の刑期を終えた邦人男性が帰国しました。同男性は判決で”日本政府からの要請で北朝鮮に関する中国政府の機密情報を日本政府に提供した”と言い渡され、24時間監視状態など6年間の過酷な牢獄生活を明らかにしています。2021年1月にも反スパイ法に抵触したとして逮捕された邦人男性2人の懲役刑が確定し、2019年9月には中国近代史を専門とする大学教授が日本へ帰る直前に北京の空港で拘束される(その後釈放)などしています。
こういった国内、国外的な地政学リスクの変化により、今後こういったケースが増えることが懸念されます。今後も日本企業にとって中国は重要な市場であることに変わりはありません。しかし、中国渡航の際は現地で政治的発言(特に反政権的な言動)を慎む、スマートフォンでも政治的メッセージは打たない、人民解放軍関連の施設や基地の付近では絶対に写真を撮らないなどを意識する必要があります。