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トルコ・パムッカレはガッカリ温泉?温泉探検家が楽しむ術を伝授

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トルコ・パムッカレは「世界一美しい石灰棚」として有名です。ミルキーブルーの温泉水を湛えた純白の石灰棚はまさに奇跡の絶景です。しかし、パムッカレという検索ワードを入力すると、「ガッカリ」というサブワードが上位に表示されます。なぜガッカリなのか、行く価値はないのか、ガッカリしない楽しみ方はあるのか。これまでの経験をもとに解説したいと思います。

ガッカリの理由は?

「温泉水が少なく石灰棚は乾いていて、期待外れだった」。これが、大半の人がガッカリした理由です。

実際のところ、温泉の湧出量はかつてに比べ減少しています。石灰棚は乾くとすぐに黒ずんでしまうため、管理者は日によって温泉水を流す場所を変えながら、劣化を少しでも防ごうと努力しています。パムッカレの温泉は自然に流れているのではなく、人工的にコントロールされているのです。

遊歩道からみた石灰棚の上部。メインのビューポイントに着く前に、温泉水の放出口や黒ずんだ大地が目に入ってしまいます

20~30年前は湧出量が多く、「棚」の中に入って全身浴を楽しめました。旅行会社のパンフレットやガイドブックのなかには、いまだに当時の写真を使っているものを見かけます。それを見れば、「わーすごい! 一度はこんな光景を見てみたい」という気持ちになるのも無理はありません。

ところが実際に訪れると、温泉が流れているエリアは広い石灰棚のほんの一部で、入浴などできません。いくら旅行気分を高めるためとはいえ、今では「体験できない写真」で旅行者の期待値を高め、現地で落胆させてしまうのは、どうかと思うところです。

では、冒頭の写真も昔のものなのかというと、そうではありません。今でもこのような写真を撮ることができます。いったいどういうことでしょうか?

パムッカレを楽しむポイント4つ

ということで、今回はパムッカレで石灰棚を見たり写真を撮ったりする際のポイントと、パムッカレを訪れたときにガッカリしないための楽しみ方を紹介します。

ポイント1.見学ツアーなら滞在時間をしっかり確認して美しい写真を撮ろう

パムッカレを訪れる場合、8~10日間のトルコ周遊ツアーを利用しているケースも多いと思います。こういったツアーでは、日本の国土の2倍以上の広さを持つトルコをたった8~10日間で回るのですから、かなりの強行日程です。

これらのツアーパンフレットをよく読むと、パムッカレの滞在時間は2~3時間というものが目立ちます。石灰棚は幅2km以上と広大なため、一番近い南門から歩いても、温泉水が流れている場所まで歩いて20~30分はかかります。観光シーズンの夏場の日中は40℃を超え、熱中症対策が必要なため、多くのツアーは朝か夕方に2時間程度のスケジュールを組んでいます。棚への往復時間を除くと、実際に見学できるのは30分しかないというツアーも珍しくありません。

広大な石灰棚の大半は乾いて少し変色しています

実際のパムッカレはこんな感じで、温泉水が流れている場所はごく一部です。これでも世界的にとても貴重な光景なのですが、見渡す限りのミルキーブルーの石灰棚を期待して訪れると、ガッカリしてしまうでしょう。

実は冒頭の写真は、中央の温泉水の部分だけを撮影したものです。見学ツアーの場合、大きな期待を抱かず、最初からこんな感じだと思っておくとガッカリせずに済むでしょう。石灰棚やミルキーブルーの温泉が美しいことには変わりがないので、思い出に残る写真撮影にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

石灰棚を美しく撮るポイント

撮影にあたっては、「どこから石灰棚を眺めるか」が重要です。狭い国土を開墾して田畑を広げるよう努力してきた日本人は各地で棚田を生み出しました。傾斜が厳しく、農作業は大変ですが、棚田の美しさは見る人の心を惹きつけます。美しい棚田といわれる名所には、必ず美しく見える場所(展望台)があります。

上から見るとこんな感じ。のっぺりした池が広がるだけで上段は黒ずんでいます

パムッカレも同様です。到着して真上から見下ろすと、棚を支える側壁が見えないため、平板な感じです。これではガッカリ感が増幅されてしまいます。

一方、石灰棚を真下から見上げると、今度は棚1枚1枚側壁しか見えず、肝心のミルキーブルーの温泉は見えません。

下からみるとこんな感じ。温泉水は見えず、まさに白い壁です。どちらも冒頭の写真と同じ日に撮影しましたが、印象はまったく異なります

パムッカレで美しい写真を撮るには、斜め方向から撮影する必要があります*。パンフレットやガイドブックの写真はみな斜め方向から撮られています。限られた時間の中で、いい撮影場所を探してみましょう。

スマホでも撮れます。ぜひ、思い出に残る1枚を!

写真撮影をしていると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。

ちなみに、ツアーによっては石灰棚の下流で足湯を楽しめるものもあります。ただし流れ落ちてきた温泉はかなりぬるく、夏場以外は冷たく感じられます。温泉好きな人はツアーの内容をしっかり確認し、パムッカレでの滞在時間や時期が自分に合ったものを選びましょう。

時期や天候で石灰棚下流の湯量は大幅に変わります。コロナ禍前に筆者が訪れたときは、半身浴を楽しめました

ポイント2.「アンティーク・プール」の温泉に浸かろう

ヒエラポリスは広大で、夏は炎天下を歩かなくてはなりません

多くはないものの、ツアーのなかには「アンティーク・プール」(別名クレオパトラプール)と呼ばれる温泉プール施設での入浴を含むものがあります。パムッカレは、ユネスコ世界遺産として有名ですが、自然遺産ではなく文化遺産として登録されています。大自然が作り上げた石灰棚だけでなく、周辺に広がるローマ時代の都市遺跡ヒエラポリスと合わせて登録されているのです。古代ローマの人々にとっても、パムッカレの温泉は魅力的だったのでしょう。当時の円形劇場や温泉大浴場がよい状態で保存されていますが、すべてを見学するにはかなりの時間と体力が必要です。

古代遺跡が沈む温泉露天風呂はぬるめなので、暑い夏は特に心地よく感じます

巨大な露天風呂のアンティーク・プールはヒエラポリスの一角にあります。ローマ時代の遺跡の隙間から湧く温泉を、そのままプールにしてしまった珍しい露天風呂です。地震で倒壊したローマ時代の柱や台座に腰掛けて浸かれる温泉は世界で唯一でしょう。石灰棚は時期や滞在時間によって入浴できないこともありますが、こちらは広く快適な温泉ですし、暑い中を歩いてきた火照りを冷ますにも最適です。この温泉に浸かれたかどうかでパムッカレの印象は大きく変わると言っても過言ではありません。トルコ旅行でパムッカレに訪れるのを重視している人は、滞在時間が長く、アンティーク・プールでの入浴やヒエラポリス観光を含むものを選ぶのがおすすめです。

ポイント3.カラハユットの温泉ホテルに宿泊する

パムッカレの周辺は遺跡や温泉を保護するため、開発が制限されていますが、5km離れたカラハユットには温泉付きのホテルがたくさんあります。真っ白なパムッカレに対し、こちらは鉄分を含む茶褐色の温泉(赤湯)が特徴的です。日帰り温泉や共同浴場もあります。カラハユットに滞在すれば、温泉旅はさらに充実します。

ツアーのなかには、パムッカレを見学してすぐに次の目的地へ移動するものもありますし、温泉のない近場のホテルに宿泊して旅行代金を抑えているものもあります。温泉ホテルに泊まって夕食後や朝に入浴できたら、気分も最高です。もちろん、パムッカレでの滞在時間が長く、しかも温泉ホテルでの宿泊を確約するようなプランは旅行日数も増え、料金も割高になります。ただ、トルコに行きたいと思った最大の理由がパムッカレだという人には、いち押しのポイントです。

ポラット・テルマルホテルのシンボルは、玄関わきの巨大プールの噴泉塔

パムッカレと同じく、カラハユットの温泉は成分が堆積しやすい泉質です。このため、その施設のシンボルとなるような析出物のオブジェが競うように作られてきました。今では、温泉プールの析出物オブジェを見れば、どの施設かがわかるほどです。筆者はできるだけ多くの施設を体験したかったので、ふたつの宿に1泊ずつしました。「ポラット・テルマルホテル」にはプリンのような形状の噴泉塔、「パム・テルマルホテル」には石灰棚を模したような温泉プールがあり、どちらもすばらしいホテルでした。

パム・テルマルホテルの見事な人工石灰棚プール。頂上の噴泉から湯が注ぐように造られている
日帰り温泉施設の「クルムズ・スー」にも人工の石灰棚があります

なお、海外の温泉ホテルは宿泊代金に夕食を含まないのが普通ですが、観光以外でカラハユットに泊まる人は少ないのか、どちらもビュッフェの夕食付きプランでした。海外ホテルの予約サイトでふつうに予約できるのですが、宿泊してみると団体客しかいません。夕食時にレストランの受付では、「ひとりですか?」とびっくりされました。それでも、宿泊客名簿と照合してひとりなのを確認すると、何事もなかったかのように席に案内してくれました。2泊とも、受付の係員の対応はまるでコントのように同じだったのが笑えます。レストランは広いですし、ひとりで座って食事をしていても誰も気にしませんので、ひとりで旅行しようと思っている方もご心配なく。

町のレストランでトルコ料理を楽しむ

鶏肉、マッシュルーム、野菜のソテー、ごはん付き。素材をそのまま生かした料理が自慢です。固形燃料で保温されているので、常に熱々です

カラハユットの町中には喫茶や食堂が並んでいます。観光客向けの大型レストランもありますが、多くは地元の人々向けで、素朴なトルコ料理を食べられます。カラハユットに滞在していると、1日5回の礼拝の時間に、礼拝を呼びかけるアザーンが聞こえます。キリスト教の鐘に相当するものですが、アザーンは人の肉声です。哀愁を帯びたメロディのようなアザーンを耳にすると、イスラムの国を旅していることを実感します。

トルコの代表料理のケバブ。羊肉4本と大きなしし唐の焼き物、トマトと胡瓜の酢の物などのセットです
町の中心のロータリーには温泉成分が固まってできたオブジェがあります

ポイント4.デニズリ県で温泉三昧!

パムッカレのあるデニズリ県には多くの温泉があります。個人旅行でパムッカレを訪れるなら、ぜひ周辺の温泉巡りを楽しみたいものです。個人の場合、イスタンブールから国内線でデニズリ空港に向かいます。空港からパムッカレやカラハユットへはシャトルバスが運行されていて、約1時間です。カラハユットのホテルに事前にメールで依頼しておけば、好きなところを回れる専用車を手配できますし、日本の旅行会社のなかにも対応してくれるところがあります。

それではさっそく、筆者が訪れたなかで印象的だった温泉を5つ紹介します。

1.残念ながら無名のカクルック洞窟(Kaklık)

入浴できませんが、瑞々しい石灰棚は迫力十分です

パムッカレとデニズリ空港の中間にあります。1999年の大地震のあと、天井が崩れて発見されました。湯量・水量とも豊富で往時のパムッカレを彷彿させますが、ほとんど知られていません。

2.温泉巡りの拠点ともなるウムット温泉(Umut)

温泉の噴気は遠くからでもはっきり見えます

パムッカレの西、約40kmにある一軒宿のリゾートホテルです。パムッカレの喧騒がウソのように静かな温泉ホテルは入浴のみの利用も可能です。泥湯も楽しめます。

眺めのよい露天の温泉プールは、やっぱり棚田風のデザインです

3.掘立て小屋風の秘湯ババチュク温泉(Babacık)

白濁した浴槽が3つ。流れる温泉の川を仕切っただけなので、下流側の浴槽はぬるいです

言葉が理解できなくても、元気なご主人が猛烈な勢いで温泉のすばらしさを説明してくれます。

4.川自体が温泉のクズルデレ温泉(Kızıldere)

トルコはイスラム教の国。周りから丸見えの場所なので、真っ裸での入浴は厳禁です

地熱発電所からオーバーフローした温泉が、適温の川となっています。近くには温泉を引いた小規模なホテルがあります。

5.析出物が見事なギョレメズリ温泉(Gölemezli)

この温泉は拙著<a href="https://amzn.to/3P8sA1t" target="_blank">「ほぼ本邦初紹介!世界の絶景温泉」</a>で詳しく紹介しています

開発が頓挫したギョレメズリの新温泉。近くの温泉宿で教えてもらいました。日本人と知ると、「開発に一役買ってくれ」と投資計画を示した分厚いパンフレットをくれます。

最後に

水量が減少しているとはいえ、パムッカレは世界にふたつとない貴重な温泉遺産だと思います。現状を理解したうえで、今回ご紹介したポイント4つを活用して、ぜひパムッカレを満喫してもらえたら嬉しいです。

なおこの度、パムッカレをはじめ世界中から厳選した50の名湯を紹介した書籍が発売されましたので、どうぞご覧ください。

この記事で紹介した主な温泉

施設名(日本語) 施設名(英語・トルコ語) URL
石灰棚&ヒエラポリス遺跡 Hierapolis-Pamukkale https://www.pamukkale-turkey.com/
パム・テルマルホテル Pam Thermal Hotel https://www.pamthermal.com/
ポラット・テルマルホテル Polat Thermal Hotel https://polathotel.com.tr/
カクルック洞窟 Kaklık Cave (Kaklık Mağarası) https://denizli.ktb.gov.tr/EN-251433/cave-tourism.html
ウムット・テルマル・スパ&ウェルネス・ホテル Umut Thermal Spa & Wellness Hotel https://www.umutthermal.com/
ババチュク温泉ホテル Babacık Thermal Otel https://www.facebook.com/babaciktermalkaplicasi/
クズルデレ温泉(野湯) Kızıldere Thermal https://guneytermalotel.com/
ギョレメズリ温泉(野湯) Gölemezli Thermal https://www.kulturportali.gov.tr/turkiye/denizli/
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