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ニューオリンズ大学やニューオリンズ警察をはじめ、路面電車やスパニッシュモスが垂れ下がる木々、そしてにぎやかな繁華街など、この映画ではニューオリンズらしい風景が見られます。主演を務めたグレン・パウエルはニューオリンズという場所について、「雇われ殺人というファンタジーが合法的で現実的だと感じられる場所。ニューオリンズにはあらゆる人種、信条、社会経済的レベルがあり、そのすべてがこの古く、ある種原始的で刺激的な街に集まっています。」と印象を語っています。
ニューオリンズは主に、有名な旧市街フレンチクオーターがある「ダウンタウン」、その南に位置し、落ち着いた住宅街や大学がある「アップタウン」、ダウンタウンやアップタウンより北西の湖側にある住宅街で、市立公園やニューオリンズ美術館を有する「ミッドシティ」の3つのエリアに分けられます。物語の冒頭で、ゲイリーが大学から自宅へ帰るときに通るアラン・トゥーサン大通り(Allen Toussaint Blvd)は、ミッドシティエリアの市立公園に面した通り。穏やかな住宅街へと続いています。
「ニューオリンズの映画を、ニューオリンズ郊外を舞台に作れたことを誇りに思う。」と話すリチャード・リンクレイター監督。この場所について、「ゲイリーは、とてもニューオリンズって雰囲気ではない退屈な小さな家に住んでいる。でも、それが彼の人生そのものなんだ。言っておきたいのは、そこには、私たちが撮りたかった不安定さという裏の顔があり、それが表れていると思う。」と語っています。
マイク・ブリザードプロデューサーの「ニューオリンズに本当に住む人々の映画だ。だから、ニューオリンズにあるようなお店に行ってもらいたかった。カフェ、公園、近所のバー。マディソンの家は伝統的なニューオリンズの家になっている。一方、ゲイリーの家は郊外のレンガ造りの家でニューオリンズらしくない。でもそれがニューオリンズの人々のリアルであり、私たちもリアルなニューオリンズの街を見せたかった。」というコメントからも、舞台を郊外にした意図が感じられます。地元の人たちからは今までのニューオリンズが舞台の映画と異なり、「ここで撮影する人は今までいなかった」と言われたそう。リアルなニューオリンズを感じられる作品といえそうですね。
グレン・パウエルも「私が演じるすべてのキャラクターが絶対に存在しうる街、それがニューオリンズなんです。リック(リンクレイター監督)と私は、ニューオリンズのさまざまな教区について考えるとき、それがちょっとしたアイデンティティの危機であるという事実も気に入っています。場所や物事のパッチワークキルトなんです。そして、それがゲイリーという人です。彼はちょっとしたパッチワークキルトなんです。ニューオリンズはゲイリー・ジョンソンを象徴していると感じました。」と語っています。
多様な表情をもつこの街は、さまざまな殺し屋の表情を見せるゲイリーの物語の舞台としてピッタリだったようです。
作中で殺し屋に扮したゲイリーが依頼人と初めて会うとき、「パイの味は?」「どのパイもうまい」というやりとりがあります。ゲイリーが食べているパイが何かは不明ですが、アメリカ南部のパイといえばピーカンパイが有名。コーンシロップとペカンナッツで作る甘いパイで、よく感謝祭やクリスマスなどに食べることでも知られています。
ニューオリンズを訪れる際にはぜひ食べてみたいですね。
TEXT:清水真理子
トップ画像:2023 ALL THE HITS, LLC ALL RIGHTS RESERVED
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2023/07/06発売422の映画作品の舞台やロケ地となった場所へご案内。アジアからアフリカまで、物語の世界を旅してみよう。
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