
連載「JICA職員がお届け!世界の街のつくり方」記事一覧
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今回の執筆者:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
社会基盤部都市・地域開発グループ第1チーム 今出川祐亮
ビル、道路、地下鉄……東南アジアでもっとも開発が熱い国「インドネシア」。
この国の躍進はアジア圏の国々を経済成長の海へ駆り立てた。
「Jakarta Kota Global Berjuta Peson(魅力あふれるグローバル都市)」※
インドネシアの首都はまさに、大変革時代!!
今回は新首都ヌサンタラへの遷都に向けた開発計画が水面下で動いている、首都ジャカルタの魅力を都市課題とともに紹介していきます!
東京からジャカルタまで距離にして約5,700km、時差は-2時間。「ONE PIECE」や「進撃の巨人」、「鬼滅の刃」など日本のアニメ文化も浸透しており、物理的・心理的距離がともに近いのでは!? と、そんなことを期待しながら、JICAが始めようとしている技術協力プロジェクトの枠組みを、インドネシア側と話し合うことを目的とした協議およびサイト視察を実施するために、筆者は2024年夏期に初めてジャカルタを訪れました。
人人人人人車車人人車…ビルビルビルッ!! スカルノ・ハッタ国際空港に到着してから市街地に向かうまでに、都市の海に溺れる感覚を味わいました。ホテルに着くや否や、少しの車酔いと新天地に圧倒された筆者をインドネシア人が溢れんばかりの笑顔で出迎えてくれました。
インドネシア全土の人口約2億7,000万人のうち約3,100 万人がジャカルタ首都圏で生活をしており、彼らは「Gotong Royong(ゴトン・ロヨン)」という相互扶助の精神が根底にあるため、非常に温かみのあるフレンドリーな方が多く、期待以上に素敵な国民性を持っていました。
ジャカルタには、都市の骨格として内環状・外環状道路と放射状に広がる5つの有料道路が存在し、鉄道をはじめとする公共交通とともに首都圏での移動を支えています。経済成長の著しい国々が抱える悩みはそう、恋!!……ではなく交通渋滞ですね。ジャカルタにおける都市課題のひとつで、ピーク時には「あれ?時が止まってる?」なんて思うこともしばしば。そんなお悩みを解決すべく、幹線道路では緩和政策として2016年より導入された「Ganjil-Genp(ガンジル・グナップ)」というナンバープレートの末尾が偶数奇数によって通行を制限する制度や、過去には乗車人数が3人以下の車両に通行規制を設ける「3IN1交通規制」などユニークな取り組みがなされてきました。
渋滞緩和のヒーローといえば、公共交通です! ジャカルタでは鉄道事業にも積極的に取り組んでおり、ジャカルタを走る鉄道は2019年に開業したMRT南北線(地下鉄)とLRT(軽量鉄道)、首都圏と郊外を結ぶKRL(通勤鉄道)の3本柱となっています。特に、MRTは日本の円借款事業によって支援された事業であり、南北線の延伸や東西線の着工など、今後の展開に注目が集まっています。そしてKRLでは昔の日本の鉄道車両が再利用されていて、今もなおレトロな鉄道がインドネシアの地で活躍している姿を見ることができます! 鉄道好きの方はぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
また、BRT(バス・ラピット・トランジット)の運行も実施しており、幹線道路に専用レーンと素敵なデザインを持つ駅の設置が行われ、渋滞緩和の一助を担っています。
ジャカルタの都市としての魅力は、林立する超高層ビル群とダイナミックな都市交通、その足元で生き生きとする植生のコントラストが織りなす都市景観です。 ぜひ訪れた際にはさまざまな交通手段を存分に使い、縦横無尽に駆け回ってみてください。筆者のおすすめスポットは中央ジャカルタにあるモナス(独立記念塔)です。132mの展望台からジャカルタを一望することができ、都市交通を視覚的に楽しめます。
ここまで読んでいただきありがとうございました。それでは次回をお楽しみに!