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マダガスカルの帽子はファッションを超える!社会運動を彩った帽子たち

アイ・シー・ネット株式会社

アイ・シー・ネット株式会社

更新日
2026年5月26日
公開日
2026年5月27日

藤田 章
フランスの高校・大学を卒業後、テレビ番組制作会社およびフランス系PR会社での勤務を経て、JICAのODA事業に約10年間従事し、モロッコ、カメルーン、マダガスカルに赴任。2023年にアイ・シー・ネットに入社。コンサルタントとして農業分野を中心に業務に従事し、現在はマダガスカルの稲作技術普及プロジェクトを担当している。

アフリカ南東部に浮かぶ島国マダガスカル。実はマダガスカルの人々は、アフリカでも随一の帽子好きなのではないかと、私はひそかに思っています。町を歩けば、形も色も違う帽子が目に飛び込んできて、見ているだけでワクワクします。この国で、帽子は単なるファッションアイテムや日差し除けだけではありません。そこには、歴史や民族の誇り、そして若者たちの思いが込められています。今回は、そんな知られざるマダガスカルの帽子文化の一端をご紹介します。

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市民運動のシンボルとなった帽子

アフリカ東海岸から約400km離れた島国、マダガスカルは独自の生態系や巨大なバオバブ並木など海外からの観光客を魅了してやみません。しかしその一方で、国民の約8割が貧困状態にあるともいわれ、世界でも最貧国のひとつとされています。2025年9月には慢性的な断水や停電に抗議する反政府デモが発生し、その動きは瞬く間に全国へと広がりました。

この動きを主導したのは、いわゆるZ世代とよばれる若者たち。彼らが掲げたシンボルは、日本の人気漫画『ONE PIECE』の海賊旗でした。ネパールやインドネシアでも、同じアイコンが反政府デモで使われていますが、マダガスカルで掲げられた旗には、ひとつ印象的な違いがありました。骸骨が被っていたのは、原作の麦わら帽子ではなく、マダガスカルの伝統的な帽子だったのです。ほかの国を模範するのではなく、「自分たちの物語」を語ろうとする意思表示にも見えました。

世界的ポップカルチャーに、自国の文化を重ね合わせるーーその遊び心のあるアレンジに惹かれると同時に、帽子はもしかすると彼らにとって特別な意味を持つ存在なのかもしれないと感じました。

集会広場に掲げられた旗

「どの部族かは頭を見ればわかる」

18の部族が手書きで描かれたポスター

マダガスカルには「民族の数だけ帽子がある」といわれるほど、多様な伝統帽子が存在します。18の主要民族を抱える多民族国家であり、帽子は出身や社会的背景を示すアイデンティティでもあります。また植物資源に恵まれた環境だからこそ、さまざまな素材や種類の帽子が生まれてきたのです。

たとえば、欧米のハイブランドでも採用され、海外でも人気の高いラフィア素材(麦わらより柔らかいマダガスカル原産の植物繊維)の帽子。これは主に西部沿岸に暮らすサカラヴァ系の人々が得意とする編み細工です。一方、パナマ帽を思わせる麦わら帽子は中央高地のメリナ族の間で広まりました。

行商の帽子売り

そして昨年、デモの場で多くの若者が被っていたのが「Chapeau Betsireo」(ベチレオ族の帽子)とよばれる帽子です。中央高地アムルマニ地方で作られ、乾燥地でも育つ強い天然繊維・ザイザル麻が使われています。やせた土地でも栽培できるこの植物は、農村部にとって大切な現金収入源でもあります。若者たちは、この“自分たちの国で作られた”工芸品に、愛国心や農村の純朴さといった意味を重ね、運動の象徴としました。

  • 帽子を高々と挙げ、メッセージを送る
  • デモに賛同を表明する証として帽子をかぶる若者たち

お土産にもぴったり!帽子探しの楽しみ

伝統的なものから新しいデザインまでさまざま

これほど種類が豊富だと、帽子選びはまるで宝探しです。素材も形も本当にさまざまで、シンプルな日常使いのものから芸術品のような編み込み細工まで幅広く揃っています。値段も150~600円ほどと手頃なものが多く、実際に手に取ってみると、編み目の細かさや軽さに驚かされます。天然素材なので通気性が良く、日本の夏にもぴったりです。

お土産を買うならアンタナナリボ中心部にあるアナラケリー市場(Marche d’Analakely)がおすすめです。通り沿いの露店には、中国製の化学繊維で作られた大量生産品が多いですが、賑やかな市場の奥にある小さな店舗には、質の良い帽子が揃っています。お店の人に帽子の産地や歴史について話を聞くのも楽しい体験です。ただし市場にはスリやひったくりが多いので、貴重品の管理も忘れずに。

■アナラケリー市場(Marche d’Analakely)
住所:Pavillon Analakely, Avenue Andrianampoinimerina, Antananarivo
電話:なし

あふれんばかりの商品が並ぶ

地元の人に人気なのは、首都アンタナナリボの国道沿いに100以上のお土産屋が軒を連なるディグ市場(Le Marché Artisanal de La Digue)。各地から集まった帽子がずらりと並び、地方ごとの違いを見比べることができます。市内から空港に向かう途中にあるので、出国の前にお土産をまとめ買いするのにピッタリです。121番ブースのNirinaさんのお店は、帽子以外にもラフィアのバッグやポーチなど豊富なラインナップが手ごろな価格で売られていておすすめです。

■ディグ市場(Le Marché Artisanal de La Digue)
住所:Marché Artisanal de La Digue, Antananarivo
電話:+215-038-04-3910

Nirinaさん(右)が帽子の歴史について教えてくれました。

私が今回の出張で手に入れたもののなかでも特に印象に残っているのが、マダガスカル東部、インド洋に面したMananjary地方のAntambahoaka族の帽子。上の写真のNirinaさんの隣で黒いTシャツの男性が被っているもので、縁のない素朴な四角いかたちに、緻密な編みと赤い糸のステッチがさりげなく施され、控えめながらも洗練されたつくりに一目惚れしました。

  • 手工芸に長けたマダガスカルらしい、美しい編み込み
  • 使っていくうちにあめ色に変化するのも楽しみな一品。 約240円で購入

当初は小物入れとして使うつもりで選んだのですが、後に、これは祭りの際にかぶっていき、その場でふるまわれる料理の取り皿として使えるように工夫された帽子なのだと知りました。その役割に触れたとき、この土地の暮らしの知恵の深さに感動しました。

マダガスカルを訪れたら、ぜひ“自分だけの一帽”を探してみてください。被れば、マダガスカルの多彩な文化や誇りを、身近に感じられるかもしれません。

With thanks to Mika Sarry Full, Bright News Madagascar, Loic Ralainindriana

アイ・シー・ネット株式会社について

アイ・シー・ネット株式会社では、新興国・途上国150ヵ国以上で社会課題の解決を行っています。下記のサイトで事業内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。

事業紹介(アイ・シー・ネット株式会社)

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