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『インセプション』『ダークナイト』、そしてアカデミー賞受賞作『オッペンハイマー』で世界に名を馳せるクリストファー・ノーラン監督。最新作『オデュッセイア』で描くのは、古代ギリシャを舞台とした10年にも及ぶ壮大な旅と冒険の物語。7月より北米を皮切りに世界各国で順次公開されると、本年度実写作品No.1、マット・デイモン主演映画史上No.1のオープニング成績を達成(Box Office Mojo調べ)。また、ノーラン作品としても、全米興収・世界興収のトップを誇っていた『ダークナイト』『ダークナイト ライジング』をともに上回り、ノーラン作品史上No.1を獲得した(Box Office Mojo調べ)。今月10日にはIMAX®興収がIMAX®歴代最高に到達(IMAX Corporation発表)。9月11日(金)の日本公開を前に、『地球の歩き方』式に物語の世界へご案内。まずはストーリーを予習して、“10年の帰還の旅”へ出かける準備を始めましょう。
※1 1ドル162円換算 7月20日時点 ※2 Box Office Mojo調べ
※本表紙は、WEB記事限定企画となります。
物語の主人公は、トロイア戦争で「トロイの木馬」を考案した知略の英雄オデュッセウス。戦争終結後、故郷イタケ島への帰路につきますが、その航海は思いもよらぬ試練の連続となり、終わりの見えない旅へと変わっていくのでした。その頃、イタケ島では、夫の帰還を待つ王妃ペネロペと息子テレマコスが、不在の王に代わって国を守り続けていました。そこへペネロペへの求婚を迫る者たちが現れ、王宮は次第に混乱へと巻き込まれていきます。
ひとつ目の巨人キュクロプス、魔女キルケー、美しい歌声で船乗りを惑わせるセイレーンなど、神話で知られる数々の存在と遭遇しながら、果たしてオデュッセウスは幾多の試練を乗り越え、故郷へ帰り着き愛する家族を取り戻すことができるのでしょうか。
本作でクリストファー・ノーラン監督が描くのは、英雄の冒険だけではありません。長い旅路の先にある「帰還」をめぐる、壮大な叙事詩に注目です!
本編をより楽しむために、『オデュッセイア』が生まれた背景となるトロイア戦争との関係を知っておきましょう。
「オデュッセイア」は、古代ギリシャの詩人ホメロスによる叙事詩で、「イリアス」と並ぶ西洋文学の原点とされる作品。紀元前8世紀頃に成立したと考えられ、約3000年にわたり読み継がれてきました。主人公オデュッセウスの故郷への帰還を描く物語です。
※旅メモ:「Odyssey」は、「オデュッセイア」に由来する英単語で、「長い冒険の旅」や「波乱に満ちた遍歴」を意味します。ノーラン監督も、長年温めてきた本作の映画化への道のりを、自身にとっての「Odyssey(旅)」と表現しています。
原作「オデュッセイア」のあらすじはこちら
https://www.arukikata.co.jp/webmagazine/381387/
ギリシャ軍とトロイア軍が約10年にわたって戦った「トロイア戦争」。オデュッセウスは、敵城へ兵士を潜ませる「トロイの木馬」を考案した英雄として有名です。「イリアス」がトロイア戦争末期を描くのに対し、「オデュッセイアは、その戦いを終えたオデュッセウスが故郷へ帰るまでの10年に及ぶ旅を描いた物語です。
これを踏まえて、クリストファー・ノーラン監督の最新作では、この普遍的な物語がどのような映像体験として描かれるのかにも注目したいですね。
故郷イタケ島への帰還を目指すオデュッセウスの旅には、武器だけでは乗り越えられない試練が待ち受けています。英雄の旅を支える「必需品」(※ほぼ精神論)をチェックしてみましょう。
□ 船と櫂
古代ギリシャのロングシップと、それを動かす仲間たちの櫂(かい)。風任せではなく、人の力で海を渡るための相棒。これらがなければ航海は始まらない。
□ 鎧
青銅器時代ならではの青銅や革、布を組み合わせた装具。怪物や敵との遭遇に備える、旅の基本装備。
□ オデュッセウスの弓
英雄の力を象徴する愛用の弓。単なる武器ではなく、「真の王だけが扱える」とされる特別な一本。帰還の物語を象徴する重要なアイテムでもある。
□ 蜜蝋・ロープ
美しい歌声で船乗りを惑わせるセイレーン対策に欠かせないアイテム。使い方は、本編でのお楽しみ。
□ 仲間
どんな英雄でも一人では海を渡れない。旅を支える仲間は欠かせない。
□ 知恵
絶体絶命の場面でも活路を切り開く機転こそ、オデュッセウス最大の武器。
□ 冷静な判断力
怪物や神々が待ち受ける旅では、状況を見極める判断力が命綱。
□ 帰る覚悟(究極の旅支度)
数々の誘惑や試練にも揺るがない、「何が何でも故郷へ帰ってやる!」という強い意志。
◆オデュッセウス(演:マット・デイモン)
イタケ島の王であり、この物語の主人公。知略に優れた英雄で、トロイア戦争では「トロイの木馬」を考案。終戦後、故郷への帰還を目指し、長く過酷な航海へと旅立つ。
◆ペネロペ(演:アン・ハサウェイ)
イタケの王妃であり、オデュッセウスの妻。王不在の宮殿を守りながら、求婚者たちの圧力にも屈することなく、夫の帰りを待ち続ける。
◆テレマコス(演:トム・ホランド)
オデュッセウスとペネロペの息子。幼い頃に父と別れ、その帰還を信じながら成長。荒れゆく王国と母を守るため、自ら行動を起こす。
◆アテナ(演:ゼンデイヤ)
知恵と戦いを司る女神。数々の試練に挑むオデュッセウスを静かに見守る存在。
◆エウマイオス(演:ジョン・レグイザモ)
オデュッセウスに忠誠を尽くす豚飼い。長年にわたり王家を支え続ける存在。
◆アルゴス
オデュッセウスの愛犬。主人を待ち続ける姿が、長い旅の歳月を物語る。
◆アンティノオス(演:ロバート・パティンソン)
ペネロペへの求婚者たちを率いる中心人物。王不在のイタケで勢力を拡大していく。
◆キルケー(演:サマンサ・モートン)
人間を獣へ変える魔法を操る魔女。オデュッセウス一行の運命を大きく左右する存在。
◆キュクロプス(演:ビル・アーウィン)
一つ目を持つ巨大な怪物。オデュッセウスの知恵が試される代表的な試練として知られる。
◆カリュプソ(演:シャーリーズ・セロン)
神アトラスの娘。漂着したオデュッセウスを自らの島に迎え入れ、長く引き留める精霊。
◆セイレーン
美しい歌声で船乗りを惑わせる伝説の存在。ギリシャ神話を代表する誘惑の象徴。
◆メネラオス(演:ジョン・バーンサル)
スパルタ王。トロイア戦争の発端となった人物の一人。
◆ヘレネ(演:ルピタ・ニョンゴ)
スパルタ王妃。彼女をめぐる出来事が、トロイア戦争の引き金となった。
◆アガメムノン(演:ベニー・サフディ)
トロイア戦争でギリシャ軍を率いた総大将。オデュッセウスとは異なる「帰還」をたどる英雄。
【トロイア戦争】
ギリシャ軍とトロイア軍が約10年にわたって戦ったとされる伝説の戦争。「トロイの木馬」を考案した知略の英雄オデュッセウスは、故郷への旅の途中でも、その壮絶な記憶に何度も向き合うことになる。
【イタケ】
オデュッセウスが治める故郷の島。長い旅の果てに目指す「帰るべき場所」であり、家族との絆や、失われた日常を取り戻すという帰還の象徴として描かれる。
【カリュブディス】
海に渦巻く巨大な渦潮。オデュッセウスの航海を阻む脅威の象徴であり、ギリシャ神話では対岸に潜む怪物スキュラと並び、船乗りたちが恐れた存在。
【ハデス(冥界)】
死者の魂が行き着くとされる地下世界。オデュッセウスが旅の途中で足を踏み入れる重要な場所となる。生者と死者が交わる、神話ならではの世界観を象徴する舞台。
【ゼウスの掟】
神々の王ゼウスが定めたこの世界のルール。旅人や客人は神の化身かもしれない――そんな考えから、見知らぬ人でもていねいにもてなすことが何より大切とされた。「オデュッセイア」では、この掟を守るか破るかが、多くの運命を左右していく。
【ノストス(郷愁)】
古代ギリシャで「故郷への帰還」を意味する言葉。単に故郷へ戻ることではなく、数々の試練を経て人間として成長し、本当に大切なものを取り戻す精神的な旅も表している。『オデュッセイア』全体を貫く、もっとも重要なテーマのひとつ。
予習を終えたら、いよいよ映画館でクリストファー・ノーラン監督が描く新たな『オデュッセイア』の旅へ出発しましょう。後編では、映画ならではの見どころやロケ地の魅力をご紹介します。
© 2026 UNIVERSAL STUDIOS
photo by Melinda Sue Gordon © Universal Studios. All Rights Reserved.
<参考文献>『オデュッセイア[上][下]』(岩波文庫)
TEXT:『地球の歩き方 W29 世界の映画の舞台&ロケ地』編集担当 清水真理子