
【フランス】是枝監督と早川監督がカンヌで語る、映画界での働き方と女性へのサポート
2025.5.24
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5月に南仏のカンヌで開かれたカンヌ国際映画祭。このコンペティション部門で上映された早川千絵監督の『ルノワール』が6月20日に日本で公開されます。1980年代後半を舞台に少女の心模様を描いた作品で、岐阜市でロケが行われました。同作品の魅力とカンヌでの様子をまとめました。
物語の舞台は1980 年代後半のある夏。両親と3人で郊外の家に暮らしている11 歳のフキ(鈴木唯さん)は、得意の想像力を膨らませながら自由気ままに過ごしていました。闘病中の父(リリー・フランキーさん)と仕事に追われる母(石田ひかりさん)の間にはいつしか大きな溝が生まれていき、フキの日常も否応なしに揺らいでいくというストーリーです。
作品中に登場する、物質的でどこか懐かしさも含む市街地などの風景は、一部を岐阜市などで撮ったもの。同作の撮影監督を務めた浦田秀穂さんの生まれ故郷が岐阜市だったそうで、80年代の郊外に見えるようなロケーションを探す際に、浦田さんのアドバイスで岐阜市での撮影が決まりました。
岐阜市について、カンヌ国際映画祭の公式会見で早川監督は「実際にロケハンで伺ってみたら、求めていた雰囲気があり、80年代の建物も残っていてとても美しい町並みだったんです。特に魅力的だったのは、長良川が流れていることです。とてもシネマティックでここしかないなと思い、岐阜で撮影することを決めました」と述べています。現代的な建物が少なく、後から合成で消さないといけないものが少ないというメリットもあったそうです。
本作において、石田ひかりさんとリリー・フランスキーさんという二人の名優と四つに組むのが、鈴木唯さん。鈴木さんの起用について早川監督は「絶対に妥協せずにこの子だと思える子に巡り合うまで数百人と会って探すつもりだったのですが、最初にオーディションに来たのが鈴木唯ちゃんでした。しょっぱなでフキに出会ってしまった。ディレクションをしなくても、彼女が自然にそのままのお芝居でやってくれたものがほんとうに素晴らしかった」と振り返ります。
また作品内では、1980年代後半に流行った当時の日本社会の営みを感じさせる、さまざまなものが出てきます。その一つがフランス印象派画家のルノワールの絵です。
早川監督は「私が子どもの頃に、西洋美術の絵画がとても人気で、あらゆるところでレプリカが売られていました。偽物の絵画なのに、すごくゴージャスで、額縁に入れられていて。劇中にも出てくるイレーヌの少女の絵は、私も憧れて、父親にねだったという思い出があるんです。自分自身の子どもの時代と80年代後半の当時の日本の社会への郷愁もあり、そういった理由であの絵が登場します」と述べます。
今回のカンヌ国際映画祭において、『ルノワール』は最高賞であるパルム・ドールを競うコンペティション部門に選出された唯一の日本映画でした。
ワールドプレミアとなる5月17日の公式上映では、上映後に約6分間のスタンディングオベーション。海外メディアからは「エレガントで思慮深い作品」(Screen Daily)、「ニューカマーである鈴木唯の演技がまばゆく美しい」(The Hollywood Reporter)といった評価も出ました。早川監督は「映画祭の1番大きいリュミエール(カンヌ国際映画祭のメーンシアター)で上映するのは初めてでしたが、場内の熱気が段違いで、胸が一杯になりました」と感想を述べています。
上映後に行われた日本メディア向けの囲み取材で、早川監督は「海外のメディアの取材を受けた中で、『この映画はいろいろなエピソードがあって、点がどんどん繋がっていき、全体像が見えてくる。そういったところが、印象派の絵画のようだ』と仰っていただいた。面白いなと感じましたね」と、観客が持ったイマジネーションについて日本の記者たちに語りました。
『ルノワール』は、今月6月20日から新宿ピカデリー他で全国ロードショーされます。ぜひ足を運んでみてください。
『ルノワール』
6月20日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー
© 2025「RENOIR」製作委員会/International Partners
配給:ハピネットファントム・スタジオ
鈴木唯
石田ひかり 中島歩 河合優実 坂東龍汰
リリー・フランキー
脚本・監督:早川千絵
製作年:2025年/製作国:日本、フランス、シンガポール、フィリピン、インドネシア、カタール/上映時間:122分
スクリーンサイズ:ヨーロピアンビスタ/音声:5.1ch/言語:日本語、英語/英題:RENOIR/映倫:G