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【フランス】パリ日本文化会館で写真家・北井一夫の特別展、成田闘争などから現在まで網羅

守隨 亨延

守隨 亨延

フランス特派員

更新日
2026年5月12日
公開日
2026年5月12日
©︎Yukinobu Shuzui

パリ日本文化会館では2026年7月25日まで、写真家・北井一夫氏の個展が開催中です。成田闘争など社会運動を扱った初期作品から日本の地方、そして過去をベースにした最新作に至る、現時点までの回顧展となっています。北井氏の作品が単独で海外で紹介される初の試みです。

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北井作品の流れを俯瞰できる展示

©︎Yukinobu Shuzui

今回の特別展では、写真家・北井一夫氏の初期作品から80歳を越えた現在までの、作品とテーマの変遷を俯瞰できる展示となっています。

会場に入ってまず出迎えてくれるのが、北井氏が20代の時に撮った作品群。アメリカの原子力潜水艦の横須賀寄港に反対する様子を捉えた「抵抗」、全共闘を扱った「バリケード」、新東京(成田)国際空港建設反対運動をルポルタージュした「三里塚」と言った写真が並びます。

©︎Kazuo Kitai Unité de résistance des enfants, série Sanrizuka, Narita (dép. de Chiba), 1970

今回のキュレーターであり、プレス向け内覧会で解説を担当したアーツカウンシル東京の藤村里美さんは、「学生運動の中においても日常の生活は同時に行われているんだということを、闘争の写真と一緒に現したのが北井独自の視点」と説明。当時これらの写真が発表された雑誌『アサヒカメラ』なども展示されています。

©︎Yukinobu Shuzui キュレーターの藤森さん

その後に展示が続くのが、市民運動と向き合った北井氏が次に向かったテーマである日本の農村。当時、森山大道氏や中平卓馬氏といった写真家が、当時都市の生活を中心に撮った一方で、北井氏は三里塚で出会ったような農民たちの生活に注目しました。そこから生まれたシリーズが「村へ」「いつか見た風景」といった作品群です。

「当時は高度経済成長の時代。働き手である若い世代が(都市への出稼ぎで)いなくなってしまい、老人と子供だけというような生活になっているというのが、この写真から見ていただけると思います」(藤村さん)

北井氏は東北から沖縄まで日本各地を巡りました。

©︎Kazuo Kitai Sœurs, série Paysages vaguement familiers, Shimokita (dép. d’Aomori), 1970

農村にフォーカスしていた北井氏が、街を撮り始めたのが「新世界物語」。大阪のロックバンドの取材をきっかけに、大阪の下町でシャッターを切りました。また、東京のベッドタウンである船橋を題材にした「フナバシストーリー」という作品も発表。かつて三里塚を取材していた時代に、北井氏は三里塚へ通うため船橋市で暮らしていた時期があったそうです。その時の縁により船橋市から依頼されました。

©︎Kazuo Kitai Départ pour le travail, série Funabashi Story, département de Chiba, 1984

当時「ニューファミリー」と呼ばれていた、団地などで暮らす新しい家族の形を見ることができます。

フランス放浪の作品紹介も

©︎Kazuo Kitai △ jaune de IROHA, série IROHA, 2024 (photo de 1968)

展示の最後を飾るのは、70代から80歳を超えた現在に至るまでの作品。年齢と共に、旅をするということが体力的につらくなってきた北井氏が、ライカのカメラ1台を抱えて近所を散歩をしながら撮った作品が「ライカで散歩」シリーズ。その後、北井氏は散歩に出る機会も減り、室内で果物などの静物を写すことに注目していきます。

さらに70代後半になってくると、撮影・現像という制作活動そのものが体力的に厳しくなってきました。そこで「抵抗」や「バリケード」で扱った写真を一度破り、それをベースに新しい作品に仕立て直したの「イロハ」というシリーズが生まれます。

これら近年の作品群の紹介に添える形で、「フランス放浪」シリーズの展示もあります。70年代にフランス各地を編集者と一緒に巡り、連載したもの。当時発表された写真が載る書籍の一部は、手に取って見ることができます。

©︎Yukinobu Shuzui 「フランス放浪」は1972年12月から1973年1月にかけて雑誌『アサヒグラフ』に掲載された

「北井一夫さんというのは、奇をてらったような作品ではなく日常の人々の生活に注目をして、一貫して撮っている作家。過去が素晴らしかったという郷愁だけではなく、今現在、その当時の作品を見ていただくことによって、これから先の私たちの日常がどういうことになっていく可能性があるのかということを、ずっと問い続けていく作品ではないかと考えています。写真発祥の地であるフランスで、北井さんの作品がどのように評価されるのか、大変楽しみにしています」(藤村さん)

フランスの雰囲気の中で作品を鑑賞することで、また新しい北井一夫氏の世界を発見してみてください。

■パリ日本文化会館(Maison de la culture du Japon à Paris)
住所:101 bis Quai Jacques Chirac 75015
URL:https://www.mcjp.fr/ja
期間:2026年4月30日〜同7月25日「北井一夫 日常礼賛~日本を見つめた60年」

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