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「若いうちの海外旅行がよい理由」という投稿を見て、思わず目が覚めた。長時間のエコノミークラスも平気、LCCや長距離バスにも耐えられる。空港のベンチで横たわることができ、寝不足も引きずらず、体調を崩しても治りが早い。荷物は少なく、万が一の時は、走って逃げられる脚力もある。なるほど、若いうちに旅をするメリットは多い。でも、この条件を眺めているうちに、ふと思った。これ、どこかで聞いたことがある。そう、シリコンバレーの起業家に求められる資質そのものではないか。
窮屈な座席に耐え、空港のベンチで雑魚寝し、時差ボケすらねじ伏せる。そんなタフさは、リソースも資金もない創業期の起業家にも必要だ。不測の事態や徹夜続きの日々を乗り切るには、圧倒的な体力と、多少の無鉄砲さが大きな武器。バックパッカーで旅した人はちょっと身に覚えがあるかもしれない。
投稿で印象に残った「トラブル経験がその後の旅の糧となる」。飛行機が遅れる。ホテルの予約が見つからない。財布をなくす。言葉が通じない。予定が狂う。それでも現地で調べ、人に聞き、どうにか解決する。そんな経験の積み重ねは、次に起きるトラブルへの教訓となっていく。
シリコンバレーでよく知られる「Fail Fast(早く失敗せよ)」という考え方にも通じる。失敗しないことを目指すのではなく、早く失敗し、学び、次へ進む。旅先で「これは絶体絶命のピンチ」と思いながらも自力で切り抜けた経験は、事業が壁にぶつかったときの回復力、底力につながるのかもしれない。
数年前、日本有数のシンクタンク企業を退職し、サンフランシスコを皮切りに世界一周をするという青年と話をする機会がありました。日本に戻ったら、カフェを開きたいと話していた彼とは、名刺交換の代わりにSNSを交換し、今でも投稿をフォローしています。
サンフランシスコではファーマーズマーケットを巡り、ヨーロッパではバルを中心に、アジアでは屋台を見て歩く。各地での失敗談もSNSに残していた。それから2年ほど経ったある日、ふと彼の投稿を見てみると、なんと都内でサラダ店のオーナーになっていた。おぉひょっとしてファーマーズマーケットが役に立ったかとも思ったけど、旅の途中で見たもの、食べたもの、そして数々の失敗が、彼なりの形になったのかもしれない。そして今では、アジア方面にも店舗を展開しているようだ。
お店の前に立つ彼。目の輝きは初めて話した時と同じだった。
若い頃の無茶な旅で身につけた体力、フットワーク、そして「なんとかなる」というしぶとさ。それは世界を見るためだけでなく、限られた条件の中で問題を解決する予行練習だったのかもしれない。「トラベルの語源はトラブル」勝手にそう思って貧乏旅行を乗り越えていた。
昔は体力と勢いでトラブルを乗り越えてきた。今は……タクシー(Uber)を呼ぶありさま(苦笑)。
それでも、旅先で予定が狂い、知らない場所で「さて、どうする?」と考える。その経験が自分の引き出しになっていくのは、今も変わらない。