キーワードで検索
この夏から初秋にかけて、サンフランシスコの外食マップにちょっとした変化がありました。7月31日にフィリピン発の「ジョリビー(Jollibee)」がマーケット通りに、9月21日には「レイジング・ケインズ(Raising Cane’s)」がフィッシャーマンズワーフに、営業を始じめました。個性豊かな名物レストランがひしめくこの街で、なぜ今ファストフードなのか。フードコーディネーターの視点で真面目に考えてみました。
ジョリビーが出店したのは、BARTパウエル駅近くのマーケット通り。1998年にデイリーシティで米国1号店を開き、ベイエリア各地で店舗展開し、市内では約15年ぶりの復帰です。出店計画の発表から約6年を経ての開業となりました。オープニングに出席したルーリーサンフランシスコ市長が、許認可手続きの迅速化に触れていたのも印象的でした。
実はサンフランシスコには、チェーン店の出店を独自に規制する「フォーミュラ・リテール規制(Formula Retail Controls)」があります。かなり大雑把に言えば、世界中に同じお店が11軒以上あればチェーン店ということです(下記サイト参照)。2007年の住民投票で可決されたProposition Gにより、近隣商業地区では原則として条件付き使用許可が必要になりました。地区によっては、出店そのものが認められない場合もあります。
地域の個性や小規模事業者を守るための仕組みですが、チェーン店にとっては出店のハードルの一つ。そー言えば、ノースビーチやチャイナタウン周辺でチェーン店をあまり見かけないのも、こうしたルールと何か関係がありそうです。
一方、レイジング・ケインズは、サンフランシスコ湾やゴールデンゲートブリッジ、アシカ、アルカトラズなどをモチーフにした内装で、フィッシャーマンズワーフに市内初の店舗をオープン。郊外のドライブスルー型とは異なり、観光客が徒歩で立ち寄れる立地に進出しました。
街の個性を守ることと、新しい店を呼び込むこと。その両立は簡単ではなさそうですが、ファストフード店のオープンは、サンフランシスコの街づくりを考える小さな手がかりにもなりそうです。
※フォーミュラ・リテール規制の対象となるチェーン店は、市の規定で定義されています。詳しくは、サンフランシスコ市計画局の公式サイトをご覧ください。
興味深いのは、同じチキン系メニューでも、両店の個性が違うこと。レイジング・ケインズは、チキンフィンガー、テキサストースト、特製ソースなどを組み合わせたシンプルな構成。一方のジョリビーは、看板のチキンジョイに加え、スパゲッティや麺料理、ピーチマンゴーパイなど、フィリピンの食文化を感じさせるメニューが並びます。
フードコーディネーターとして気になるのは、主役のチキンだけでなく、サイドメニューやソースまで含めた食事の組み立て方。どちらも揚げ物が中心なので、栄養成分を確認しながら、飲み物を水や無糖のお茶にするなど、組み合わせを工夫するのも一案。レイジング・ケインズの公式サイトでは、アレルゲンや栄養成分の情報も確認できます。
名物グルメを巡る旅の合間に、あえてアメリカのチェーン店をのぞいてみるのも、その土地の食と暮らしを知る近道かもしれません。ジョリビーではフィリピン系コミュニティの味を、レイジング・ケインズではアメリカ発のチキンフィンガー専門店ならではのスタイルを楽しめます。サンフランシスコに来たというより、「アメリカにやって来た!」という気分になれるかも?
チェーン店の出店に独自のルールを設け、街の個性を守ろうとしてきたサンフランシスコ。そんな街に新たに登場したファストフード店も、街の“いま”を映す小さな窓です。旅のスケジュールに1食だけ組み込んでみてはいかがでしょう。今回はフードコーディネーターの視点から、街のルールとメニューの特徴を紹介しました。とはいえ、食は実際に味わってこそ。百聞は一食にしかず! 次は自分で食べ比べた感想もお届けしたいと思います。