• Facebook でシェア
  • X でシェア
  • LINE でシェア

グランドサークルの壮大な景色と歴史を楽しむ!アメリカの国立公園の歩き方

美丸(Mimaru)

美丸(Mimaru)

アメリカ・カリフォルニア州特派員

更新日
2020年12月6日
公開日
2020年12月6日
AD
ホースシューベンド(HorseshoeBend)

アメリカの国立公園の観光で、人気のある「グランドサークル(Grand Circle)」を紹介します。訪れたのは2020年10月。広大な国立公園は、スポットによってさまざまな表情を見せます。グランドキャニオンを中心に、コロナ禍での変化とともにグランドサークルの多様な見どころを現地在住のウェブ特派員がレポートします。

【はじめに】2020年11月26日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方ニュース&レポート』では、昨今の世界情勢をふまえ観光地情報の発信を抑制してきました。しかし、「近い将来に旅したい場所」として、世界の現地観光記事の発信を6月から再開しています。

世界各地のまだ行ったことのない、あるいは再び訪れたい旅先の詳しい情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス禍収束後は、ぜひ旅にお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを、心より願っています。

グランドサークルといえばグランドキャニオン

日の出。マーザーポイントにて

「グランドサークル」とは、グリーンリバーとコロラドリバーが合流しレイクパウエルに流れ着く、ユタ州とアリゾナ州の境目を中心に、ニューメキシコ州とコロラド州を含めた4州にまたがる半径230kmの“大きな円”のなかのエリアのことです。歴史的な公園を含めた国立公園が12、またモニュメントもたくさんあり、国立公園のデパートのような場所になっています。

グランドサークルのなかで最も人気があるのは、やはり「グランドキャニオン(Grand Canyon)」です。サンフランシスコから近い国立公園には、ヨセミテ国立公園があります。“滝を見上げるヨセミテ公園”と初めて訪れた“渓谷を見下ろすグランドキャニオン”は、特徴がはっきりしていてとても興味深く感じました。

グランドキャニオンには、サウスリム(南側)とノースリム(北側)に見学場所があります。ノースリムは南側に向かって傾斜しており、流れる水が岩肌を削っているので反対側のサウスリムからは荒々しく変化に富んだ景色を観ることができます。
ホテルやビジターセンターなどの施設やビューポイントも充実しているので、限られた滞在時間の場合はサウスリムの観光がおすすめです。新型コロナウイルス対策で公園のシャトルバスは運休かもしれないと心配しましたが、コースの一部を除いて運行されています。グランドキャニオン鉄道で訪れる場合も不便はありません。季節により運休することがありますのでその点は確認してください。

公園内で最もすてきなレストランは、ビレッジ地区にある老舗ホテル「エル・トバ(El Tovar)」のメインダイニングです。予約を取らず、人数制限があるもののオープンしていたので、食事も堪能できました。
エル・トバ・ホテルは、アメリカ屈指の山岳リゾートホテルです。大きな暖炉やドッシリした柱、梁には温もりを感じ、古き良きアメリカ開拓時の雰囲気を感じることができます。ビレッジ地区に行ったら訪れておきたい場所です。

■Grand Canyon
・URL: https://www.nps.gov/grca/learn/management/cvip09.htm

■El Tover
・URL: https://www.grandcanyonlodges.com/lodging/el-tovar-hotel/

美しすぎる自然のグラデーション

とにかくすばらしかったのは日の出と日没です。移り変わる渓谷の色は水彩画のような繊細さと透明感。撮影を楽しめば、誰でもフォトグラファーになった気になれます。正直に言うと、ほかには何もしなくていいので朝日と夕陽だけは必ず見てください! グランドキャニオンのアクティビティから絶対外さないでほしい、必見のスポットです。

■グランドキャニオンの日の出・日没
・URL: https://www.nps.gov/grca/planyourvisit/sunrise_set_moon.htm#CP_JUMP_2183487

“モニュメントバレー”のおすすめホテル

映画でも有名なフォレスト・ガンプ・ポイント

グランドサークルの次に押さえておきたい場所は、「モニュメントバレー(Monument Valley)」。ここもあまりにも有名ですが、実は国立公園ではありません。
どこまでも伸びる1本の道をドライブ。両サイドに西部劇の風景が広がり、奇妙な岩が次々と現れ「何の形に見える?」と会話も弾みます。グランドサークルでは、地形を表す“ビュート”と“メサ”という言葉をよく聞きます。

●ビュートとメサの違い
・横幅より高さがあるのがビュート(Butte)
・高さより横幅があるのがメサ(Mesa)
覚えておけば目安になります。

滞在したホテル「グラウディングス・ロッジ」

メサの一部のようなホテルが、「グラウディングス・ロッジ(Goulding’s Lodge)」。すべての客室からどこまでも続くオレンジの大地とビュートを見ることができます。ホテル敷地内にミュージアム(Trading Post Museum)やレストラン、ギフトショップ、室内プールを完備しています。丘を降りるとスーパーもあり、施設は充実していました。Wi-fi環境も整っているので、ワーケーションにおすすめだと思います。
宿泊した日は新月に近かったので、満天の星空と天の川、スーッという流れ星の音が聴こえそうなほど夜空が近くに見えます。一生分の流れ星をひと晩で見たかもしれません。満月のときはどうなのでしょう? 満月も見てみたい!と期待と想像が膨らみます。

●星空観察のポイント(星がきれいに見える条件)
・近くに都市がない
・空気中の水分が少ない
・空気中に塵が少ない
・標高が高い

■Goulding’s Lodge
・URL: https://gouldings.com
※Trading Post Museumの入場料は、大人(12歳以上)$5

巨大な“隕石跡”

隕石落下地点

コロナ禍でもあり、すべて順調にコースが回れたわけではありませんでした。しかし幸いほかにも見どころが多いのがグランドサークルのいいところです。そのひとつが「ミティア・クレーター(Meteor Crater National Natural Landmark)」、隕石が落ちたところ!

いまから5万年前、まだマンモスがいた時代。直径30〜50mの隕石がこの場所に落下しました。大気圏突入時の時速は4万km/hで衝突の振動はマグニチュード5.5。隕石孔として地球上で最もいい状態で残っている場所だそうです。入場料は大人$22。中庭にはアポロの模型があり、子供たちにとっては宇宙飛行士や宇宙への夢が広がる史跡です。

写真右下の展望台に見学者が見えますが、とてつもなく大きい落下跡であることがわかると思います。もし遠回りできたら訪れてみてください。

■Meteor Crater
・URL: https://meteorcrater.com

グランドキャニオンより美しいと言われた幻の渓谷「グレンキャニオン」

歩道から眺めたグレンキャニオン・ダム

「グレンキャニオン・ダム(Glen Canyon Dam)」は、高さ216m、幅475m。1956年から始まった工事でページ(Page)という町ができました。ダムの脇の歩道から見下ろすとフェンスがあるとはいえ、さすがに足がすくみます。隣接している「カール・ハイデン・ビジターセンター(Carl Hayden Visitor Center )」は、コロナで閉鎖中。フーバーダム(Hoover dam)もセキュリティゲートより先が閉鎖となっていました。

幻の渓谷グレンキャニオンに思いを馳せます

ラスベガス郊外にあるフーバーダムは、ニューディール政策でできた多目的ダムです。フーバーダムに流れ込む土砂が想像以上に多く、ミード湖(Lake Mead)が埋まってしまう危険性があったため、造られたのがグレンキャニオン・ダムです。
グランドキャニオンより美しいと言われたかつてのグレンキャニオンは湖底へ沈んでしまいました。皮肉なことですがそれによってできた世界一大きな人造湖のパウエル湖(Lake Powell)周辺は、グランドサークルでも人気のレクリエーション・エリアになっています。

■Glen Canyon
・URL: https://www.nps.gov/glca/planyourvisit/guidedtours.htm

グランドサークル生誕の地「キャニオンランズ」

グランド・ビュー・ポイントからの眺め

公園の宝庫であるユタ州で最も大きい国立公園が「キャニオンランズ国立公園(Canyon lands National Park)」。コロラド台地(Colorado Plateau)にあり、コロラド川(Colorado river)とグリーン川(Green River)の合流地点でもあります。ここからコロラド川はレイクパウエル貯水池、そしてグランドキャニオンに続きます。

大陸ができるとき、地表はその下にある地殻の上を大きく波打つように移動します。
家で誰かとお互い向き合い、床の上(地殻)のマット(大陸・地表)を左右違うタイミングで上下させるように動かしてみてください。小さいうねりの中に一瞬平らな盛り上がりができます、それがコロラド台地です。コロラド台地の大きさは日本列島と同じくらい。それがポコッと隆起したのです。この台地は穏やかで、過去6億年の間、地層が曲がったり壊れたりしていないそうです。
しかし周りには、短期間で急激に隆起したせっかちなロッキー山脈やネバダ山脈の存在があります。その周りの山脈ができたおかげで人が住みにくく、やや乾燥していて雨による浸食が少ないため、景色もあまり変化しません。またコロラド台地は、北東が少し高く南西に向かって緩やかなスロープになっているそうで、グランドキャニオンは、サウスリムからノースリムを見るのがよさそうです。

穏やかな台地を中心にセカセカ動き回る地殻とふたつの川の出合いから自然公園のデパートができました。このエリアは人の住まない内陸部(Empty Interior)としても知られています。グランドサークルにとっては重要な場所ですが、観光客は比較的少ない公園です(2018年で約79万人)。
川に遮られた公園は行き来ができないので不便ですが、グランドサークル発祥の地と言われているこの景色を眺めると自分が探検家になったような気分が味わえます。

グランド・ビュー・ポイント(Grand View Point Overlook)から見える、はるか向こうで川が合流しています。合流地点(Confluence Overlook)までは、別エリアから4輪駆動のオフロード車でなければ行くことができず、今回は断念しました。
舗装されていない道が多いこともあって、オフロード・ドライブ・ファンには人気の場所のようです。

■Canyonlands National Park
・URL: https://www.nps.gov/cany/index.htm

取り残された悲しき馬たち

ホースシューベンドのようなグースネック

名前からして悲しい逸話がありそうな「デッド・ホース・ポイント・ユタ州立公園(Dead Horse Point State Park)」。かつて、年に1回カウボーイたちは野生の馬(マスタング)の捕獲のため、川のU字型のポイントグースネックまで馬を囲い込み、いい馬だけを連れて帰っていました。
ほかの馬は、そのあと逃がされるのですが、取り残された野生の馬たちは荒野に戻ることはなく、コロラド川を目の前に喉の渇きや飢えで死んでしまったのだそうです。そこから“死んだ馬の岬(突端)”という名前がつきました。

奇妙な岩の宝庫「アーチーズ」

穴の空いたアーチ

もともと海だったなんて信じ難いグランドサークル。海水が蒸発すると塩になりますが、塩は固まると弾力が出るそうです、弾力があるので硬い岩盤から柔らかい地層へ移動するのだそう。それだけに岩塩層はもろく、壊れやすい岩。水や風で亀裂が入り、もろい部分には穴ができます。
そんな岩が2000以上あるのが「アーチーズ (Arches National Park)」。車でエントランスから道なりにデビルスガーデン(Devils Garden)まで、さまざまなアーチが見えるのでドライブしていて楽しいです。
有名なデリケートアーチ(delicate Arch)には時間の関係で行けませんでしたが、ノースウィンド・サウスウィンド・タレットアーチがある「ウインド・セクション(The Windows Section)」は、簡単に見学できるのでおすすめです。

■Arches
・URL: https://www.nps.gov/arch/index.htm

絶妙な重なりのバランスロック

アーチだけでなく妙な形の岩もたくさんあります。まさにインディー・ジョーンズ(Indiana Jones)の世界です。ここはつい登りたくなる岩がいっぱいありますが、ロッククライミングなどは禁止されているのでご注意を。
アーチとブリッジの基準は、幅90m以下がアーチ、それ以上はブリッジだそう。名前によって大きさがざっくりわかります。

兵馬俑を彷彿とさせる「ブライスキャニオン」

整然と並ぶ美しい岩々

渓谷を眺める日々が続くと、どれも似たような景色に見え始めるようになります。しかし「ブライスキャニオン国立公園(Bryce Canyon National park)」ではその独特な風景に驚くでしょう。まるで始皇帝陵兵馬俑博物館(中国の世界遺産)の兵馬俑のような奇妙な岩々が並んでいます。

この正体は“土柱(どちゅう)”という小石や砂の堆積岩が侵食によってできたもの。その周囲を壁が囲み、まるでコロッセオの中をのぞきこんでいるようです。岩の色も、オレンジという単純な言葉では表現できないほど複雑な濃淡があり、陽の光によって時間とともに変化していく様子は言葉を失うほどの美しさです。いつまでも眺めていたい、そんな場所です。

■Bryce Canyon NP
・URL: https://www.nps.gov/brca/index.htm

滞在したホテルは、「ルビーズ・イン(Ruby’s Inn)」。迷ってしまうくらい大きなゼネラルストアやギフトショップがあり、とても便利な宿泊施設です。レストランでは小さなサラダバーが使えました。客室も比較的広く、清潔です。

■Best Western plus Ruby’s Inn
・URL: https://www.rubysinn.com

ユタ州最古の国立公園「ザイオン」

ザイオン国立公園の看板

グランドキャニオンで見かけた日本人の少年が「お母さん、山はどこにあるの?」と質問していました。言われてみれば山は見上げるもので、見下ろす渓谷をどう説明するのか? 幼児の素朴な疑問に大人たちは誰も答えることができませんでした。ここ「ザイオン国立公園(Zion National Park)」には、見上げる山があります。

看板手前に駐車できるスペースがあるので、ぜひ記念写真を撮ってください。山沿いのカーメルトンネル(Zion-Mt Carmel Tunnel)を抜け、ワインディングロードを過ぎ、キャニオンジャンクション(Canyon Junction)のビジターセンターからシャトルバスに乗ります。しかし、この日はまさかの満車! 天気のいい週末だったこともありますが、コロナ禍でもこれだけの人が訪れるのかとたいへん驚きました。もちろん皆さんマスク着用。各所にサニタイザーがあり、ソーシャルディスタンスをきちんと守っていました。

駐車・下車は無理と判断し、車窓からだけのザイオン国立公園観賞。南側のスプリングデール(Springdale)の町は、おしゃれなショップがたくさんあって、ここも立ち寄りたいポイントです。

■Zion National Park
・URL: https://www.nps.gov/zion/index.htm

ネバダ州最大のステイトパーク

まさに炎の谷

まさか、ザイオンで駐車場に泣かされるとは予想外の展開だったので、ラスベガスに向かう途中に寄ってみたのが「バレー・オブ・ファイアーネバダ州立公園(Valley of Fire State Park)」です。
フリーウェイから30分ほどして、ようやく奇岩が見え始めました。到着したのは夕方で、日没までには少し時間がありました。日の出・日没時は燃えるような色になると教えてもらいましたが、その日の気温は30℃。ビジターセンターが開いていたのでクーラーで涼み、周辺の道路を少し歩きました。ビジターセンターはけっこう充実しており、ネバダ州が公園にかける意気込みを感じます。

■Valley of Fire State Park
・URL: http://parks.nv.gov/parks/valley-of-fire

ポストコロナでの地球・アメリカの歩き方

願いがかなうといわれる風景

今回の旅では、コロナ禍で閉鎖になっていたエリアや時間的に行けなかった場所、広大過ぎて紹介しきれない部分もありました。渓谷から見えるむき出しの地層は、途方もない年月を経ていまもなお変化し続けています。また、地平線の向こうには先住民族が過酷な試練を乗り越え、住み続けています。素直に“すごい景色”の連続でしたが、では“どうやってできたのか?”と疑問もたくさんできました。

早く終わって欲しいこのパンデミックですが、収束までの間、アメリカの地図を眺めることに少し時間を使ってみるのもいいかもしれません。ガイドブックやインターネットで調べて、地球儀を回しているうちに旅が始っている気分になっている不思議。まだ少し先になりますが、自由にアメリカ大陸にやってこられるとき、ぜひこのグランドサークルを見てまわってほしいです。そして不思議な地形の謎を感じていただければと思います。
収束までもう少し、頑張りましょう。そして近い将来、不安なく旅行ができるときが来たら思いきり地球を歩きましょう!

≫≫≫(関連記事)アムトラックで行くカリフォルニア・ヨセミテ国立公園

※当記事の観光情報は、2020年11月26日現在のものです。

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2020年11月26日現在、外務省はアメリカについて「渡航は止めてください(レベル3)」の勧告を出しています。渡航についての最新情報、情報の詳細は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

トップへ戻る

TOP