
ウガンダのローカルフード「ロレックス」とは?
2023.4.17
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執筆者:大西 由美子
インド・デリー在住。開発コンサルタント会社アイ・シー・ネットでインドを中心に国際協力のプロジェクトやビジネス・コンサルティング事業に従事する。2004年からアイ・シー・ネットで勤務。南アフリカの農村開発に1年半従事したのち、インドへ異動。2006年から4年間は旧JBIC・JICAのインド事務所でODA事業に携わる。2011年頃からはODA事業のモニタリングや評価の業務をメインで担当。ビジネス・コンサルティング事業部でインド進出を目指す日本企業の支援も行っている。遺跡巡りが大好き。インドの遺跡で断トツおすすめは、西部マハーラーシュトラ州にあるアジャンター・エローラ石窟群。
現在、インドには40のユネスコ世界遺産が存在します。タージ・マハルを筆頭に、エロティックな彫刻で有名なカジュラーホー(カジュラホ)や、アジャンター・エローラ石窟群、フマユーン廟などジャイナ教や仏教、ヒンドゥー教、ムガール帝国時代の文化遺産が多数あり、旅行で訪れた方もいることでしょう。しかし、そんな世界遺産の陰に隠れた遺産もインドにはたくさんあるのです。今回は、その中からひとつピックアップして紹介します。
インドといえば多くの方がタージ・マハルを思い浮かべるでしょう。タージ・マハルのある町、アーグラーにはこのほかにもアーグラー城など、ムガル帝国時代の遺跡が複数あります。また、アーグラーから少し足を延ばせば、ファテープル・スィークリーというこれまた有名な世界遺産もあります。
しかし、そんな有名なアーグラーから車で2時間弱のところに、現地の人にもあまり知られていない遺跡群があるんです。タージ・マハルの影に潜み、名前を聞いたことがない人のほうが多い。ここはもはや、人跡まれな地といえます。
その遺跡群があるモレナ(Morena)はアーグラーから南に80㎞の位置にあるマディヤ・プラデーシュ州の小さな町です。
ワニやカワイルカの生息するチャンバル川を越えて程遠くない場所にありますが、ほかに目ぼしい観光スポットなどもない町なので、この町に気づかず通り過ぎてしまう人も少なくありません。国道をそれて集落を抜けると、広大な畑や野原のなか、細い道が続きます。この先に「バテシュワール(Bateshwar)寺院」があります。
敷地の中に入ると、目の前に砂岩でできた何十もの塔のようなものが現れます。主にヒンドゥー教のシヴァ神を崇めるために建設された小さな寺院です。カジュラーホーの典型的な寺院である、ナーガラ様式と呼ばれる砲弾型の塔を小さくしたような構造物は、丘の側面に3~4段に分けて整列しています。長い年月の間、雨風にさらされ地震にも見舞われたため、崩れ落ちているものも。敷地の奥には主殿があり、こちらも半分崩れかかっているものの、なかには司祭がいます。
インド考古学研究所によると、バテシュワール寺院群は8~10世紀に建てられました。25ヘクタールの敷地には、なんと200もの寺院があります。
歴史も古く、遺跡としての規模も大きいですが、バテシュワール寺院があまり知られていないのも無理はありません。ここは2005年に発掘が始まったため、インド人がこの地の名を聞くようになったのもごく最近なのです。発掘は現在も続けられています。
現在のところ、訪れる人は少ないため、バテシュワール寺院群では入場料を徴収していません。しかし、近い将来この状況は変わるとみられています。
この近くにはもうひとつ、忘れられた遺跡があるのです。それは、インドの国会議事堂の原型といわれる「ミタワリ寺院」。国会議事堂をミニチュア化したこの円形寺院は、その形以外あまり見るものはありませんが、国会議事堂のモデルであるということに惹かれ、急な坂道を徒歩で登って訪れる家族連れがまれにいるのです。
いつの日か世界遺産などに登録されれば、多くの観光客が押し寄せるでしょう。その前に、バテシュワール寺院群とミタワリ寺院を目当てに、まだ手付かずのこの地を一日かけて歩き回ってみてはいかがでしょうか。
監修:地球の歩き方
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