ドラマ『VIVANT』で話題!モンゴル・ウランバートルの新空港近くに3万ヘクタール超えの大都市が誕生!?
2023.11.7
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執筆者:独立行政法人 国際協力機構(JICA)社会基盤部都市・地域開発グループ第二チーム 水上 貴裕「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、こんにちは! 前回の記事では、ドラマ『VIVANT』でも話題になったモンゴルでのJICAの取り組みについてお届けしましたが、いかがでしたでしょうか? 今回は東南アジアに舞台を移し、微笑みの国タイでODAを活用した取り組みについてご紹介したいと思います。
タイの首都といえばバンコク。観光で訪れたことのある方も多いのではないでしょうか?
1782年のラーマ1世による遷都以来、一貫してタイの政治と経済の中心地であり続けてきたこの街ですが、2022年の首都圏の人口はバンコク都と、隣接する6県の合計で約1160万人となり(※) 、同年の国家の総人口約6610万人からすると、およそ2割弱のタイ国民がここに居住していることになります。
そんなバンコクへ、タイの各地方からのアクセス手段として利用されてきたのがタイ国鉄(SRT)が運営する国鉄路線。そしてそのターミナル駅として120年以上の長きにわたり地元の人々に愛されてきた「フアラムポーン駅」が今年、「クルンテープ・アピワット中央駅(旧名:バンスー中央駅)」にその役目を引き継ぎました。
クルンテープ・アピワット中央駅は日本の円借款で新設され、現国王のラーマ10世によって名づけられた駅です。
現在では都市鉄道のうちレッドライン、ブルーラインと呼ばれる路線ががこの駅から利用できるほか、国鉄長距離路線のうち特急、急行等の長距離列車は全てこの駅を終着/始発点として利用しています。
将来的には日本人にも人気のチェンマイやパタヤ、ノンカイといった各都市、そして首都圏の大規模空港であるスワンナプーム、ドーン・ムアンを結ぶ高速鉄道も、この駅を中心として運行を開始する計画です!
このようにタイの鉄道網の心臓となりつつあるクルンテープ・アピワット中央駅ですが、その駅周辺地域の開発はまだまだこれからです。
この駅があるバンスー地区では、いくつかの企業や公的機関のオフィス、「チャトゥチャック・ウィークエンド・マーケット」などが駅に近接しているものの、駅前などは驚くほど閑散としています。
日本でいえば、「東京駅のような大規模な新ターミナル駅を開業したのはいいけれど、丸の内や八重洲にあたるエリアがほとんど開発されていない状況」といったところでしょうか。開発が計画されるバンスー地区は372haという、横浜みなとみらい地区のおよそ2倍にもなる広大な面積を誇りますが、その土地の大部分を所有するSRTに不動産開発の経験がほとんどないことがネックとなり、新駅の開業後もその開発は進んでいない状況です。
そんな「もったいない!」状況のバンスー地区を、タイの将来を担う次世代都市として開発するため、日本の国土交通省、独立行政法人都市再生機構(UR)、JICAなどで構成されるチーム・ジャパンが支援しています。
2016年に日本とタイで都市開発を協力して進めるためのワーキング・グループが発足し、以降は日本による調査の実施や都市開発の専門家の派遣、日本の事例見学を行う機会提供といった取り組みがなされてきました。
これらの協力では、バンスー地区を「スマートシティ(ICTなどを活用して地域の計画や整備、運営などが行われる、持続可能な未来型の都市)」として開発することが目指されており、日本でも先進的な取り組みをしている横浜みなとみらい、千葉の柏の葉地区、大阪のうめきた再開発地区などの事例を参考に、計画が進められてきています。
タイ王国きっての巨大な都市再開発構想となったバンスー・スマートシティ開発。現場に先進的な施設や街区ができ上がり、未来都市の姿が現れるのはまだまだ先ですが、逆にいえば「ここにそんな都市ができるんだなぁ……」と想像しながら訪れられるのは今だけ。バンコク旅行の際には、チャトゥチャック市場やバンスー中央駅など周辺の施設に立ち寄ったついでに、ぜひそんなバンスー・スマートシティの未来を思い浮かべながら、街歩きを楽しんでみてください!
監修:地球の歩き方