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バルト三国ラトビアの最新旅行レポ③ 市民に愛されるマーケットでラトビアの食文化に触れる

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2024年3月6日
公開日
2024年3月6日
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2023年10月31日〜11月5日、ラトビア投資開発庁主催のプレスツアーに参加してきました。今回は首都リーガの市民御用達の3つのマーケットとおすすめランチスポット、最新レストランを訪ね、ユニークなラトビアの食文化を探ります。

週末に開催される野外マーケット

土曜朝10時から開催されるカルンツィエマ街区のマーケット

リーガには常設のマーケットもありますが、週末に滞在できるならぜひ訪れたいのが、毎週土曜日に開催されているカルンツィエマ街区市場です。この地域は以前空き家が多く、治安のよくない場所でしたが、地元の建築家と修復家によって古い木造建築が少しずつリノベーションされてカフェやギャラリーに生まれ変わり、人が集うようになりました。10年ほど前くらいからは毎週土曜日の朝に野外マーケットも開催されています。

カフェやギャラリーが入る建物の回りに野外マーケットが広がる

マーケットには新鮮な野菜果物、パン、お菓子、ハンドメイドの雑貨などの屋台がずらり。香辛料のお店、チリやバジルなどのソース専門店、手編みのミトンやブランケットのお店、バルト海で採れた琥珀のアクセサリー、きれいな花びらのハーブティーなども。店から店へと眺めて歩くだけでもあっという間に時間が経ってしまいます。

種類豊富なハチミツは1瓶2€〜。選ぶのも楽しい

ラトビアの名産のひとつがハチミツです。冬菩提樹、ソバの花からとったもの、ツツジやレンゲなど春の花を集めたものなど、多くの種類が並びます。白く結晶化した濃厚なものと、とろりとした黄金の液状のものがあり、好みで選ぶことも。ミツバチからの恵みは、ハチミツだけではありません。免疫力をアップさせると重宝されている蜂花粉や、ローヤルゼリーも売られていました。冬菩提樹のハチミツは、やさしい甘みと透明感ある香りで、しばらく忘れられないほど芳醇な味でした。

マーケットではかわいい手作りのぬいぐるみも売られている
クリームののったもの(左)はタルスィ県ドゥンダガ郡のレシピ

この野外マーケットの屋台で教えてもらったラトビアの伝統料理は、西部クルゼメ州の郷土料理「スクランドラウスィス」。にんじんとじゃがいもで作られたパイで、欧州食文化遺産にも登録されています。クリームをのせて甘くしたものや、塩で味付けされたものなど、地域によって少しずつレシピが異なります。お祭りの際に食べられていたものだそうで、お店の方はおばあちゃんのレシピを受け継いで作っていると話してくれました。「ちょっと食べてみる?」と試食させてもらった2種類のパイは、どちらも素朴でやさしい味わいでした。

■カルンツィエマ街区市場(Kalnciema Quarter Market)
http://www.kalnciemaiela.lv/en/market/

ラトビアのとっておきのものを探すなら

美しい煉瓦造りのアーゲンスカルンス市場

リーガの2つめのマーケットは、アーゲンスカルンス市場。趣のある煉瓦造りの建物に入っています。その歴史は古く、ここで市場が開かれ始めたのは1898年のこと。1914年に現在の建物ができ、コロナ禍の間に修復を経て2022年に再オープンし、現在の姿になりました。
マーケットの建物の後ろに見える塔は、アーゲンスカルンス通信塔で、ソ連占領時代には周波数を変えてゲリラ放送を行い、独立回復のために闘う人たちを鼓舞しました。

入口で売られていた、愛らしいクリスマスリース
シャンデリアが素敵な吹き抜けのマーケットホール

マーケットの1階には、生鮮食品や花、工芸品、パンやお菓子などの店が並び、地下には掘り出しものに出合えそうなセカンドハンドショップ、2階にはカフェやレストラン、雑貨屋なども入っています。この周囲は大学病院などがある落ち着いた住宅街で、ちょっといい日常のものがほしいとき、リーガの人々はここを訪れるのだそうです。

■アーゲンスカルンス市場(Āgenskakns Market)
http://www.kalnciemaiela.lv/en/market/

ヨーロッパ最大規模のリーガ中央市場

広大な市場には、ラトビア各地から名産品が集う

リーガ市民の食卓やレストランを支えているのが、リーガ中央市場。1930年代に建てられ、魚介館、野菜館、パン館、乳製品館、精肉館の5つの建物から成り立っています。巨大な市場は、地上部分だけでも欧州最大規模の面積を誇ります。魚介館、野菜館、パン館、乳製品館の4つの建物は同じ向きに並んでいますが、精肉館だけ方向が異なるのは、かつてその屋上にホームを設置し、リーガ中央駅とつなげる計画があったからだそう。しかし、ソ連軍の侵略によってプロジェクトは中断され、今は屋上の駅ホームと線路断片だけにその名残を留めています。

4つ並んだかまぼこ型の市場の建物
ラトビアではカワカマスは願いごとを叶えてくれる縁起のいい魚

訪れたのは午後でしたが、まだまだ市場はにぎわっています。カワカマスはラトビアでよく食べられている魚。また、ラトビア北部では、ヤツメウナギをゼリー寄せにして食べる郷土料理があります。ザリガニも人気の食材。バルト三国で捕れる唯一の甲殻類のため、クリームスープにしたりして味わいます。

イカやカニなどが捕れないバルト海ではザリガニが珍味
ラトビアでは一般的な、大麻の種から作られたバター(写真中央の液状のもの)
豚の鼻は冬至のお祭りで欠かせない食材

ここでも産地直送の新鮮なハチミツや、チーズなどの乳製品にたくさん出合うことができました。マーケットでは売り手との会話も楽しいもの。ハチミツ店の女性は、「私は日本の人たちの生きる力を尊敬しているの。大きな戦争を乗り越え、災害も多いのに、元気に頑張ってやっているのには本当に脱帽するわ」と笑顔で話しかけてくれました。

■リーガ中央市場(Rīgas Centrāltirgus)
https://www.rigasnami.lv/lv/parvalda-un-apsaimnieko/tirgi/rigas-centraltirgus

ラトビア民族野外博物館で伝統料理のランチをいただく

緑豊かなラトビア民族野外博物館は、今年100周年を迎える

リーガ近郊に位置する、ラトビア各地の農場や漁家、民家を移築したラトビア民族野外博物館は、毎年6月、全国から職人たちが集って手仕事の伝統工芸を販売する民芸市が開かれることでも知られています。今回はこの民族野外博物館で、ラトビアの伝統料理のランチをいただきました。

さくっとした生地の中に挽肉が詰まったピーラーヅィニ(肉入りパン)

87.66ヘクタールもの面積があり、すべてゆっくり見て回ろうとすると2日間はかかるという広大な民族野外博物館。まずは、腹ごなしにピーラーヅィニというパイをいただいて、今回は入口近くのいくつかの建物を回ることになりました。そのなかでも印象に残ったのは、1704〜1705年にかけてラトビア西部のウスマ湖のほとりに建てられたという礼拝堂です。ここでは現在も毎週日曜日に礼拝が行われていて、建物を活用しながら大切に保存されてきたのが伝わってきます。天井には深い青が美しい、天国を描いた絵。曇ったガラスの窓から厳かな光が静かに差し込んでいました。

天国の絵が美しい木造の礼拝堂
クルゼメ州の農家。天井から伝統装飾のプズリが下がる

西部クルゼメ州から移築した農家では、民族衣装に身を包んだスタッフが、伝統楽器クアクレを弾いて迎えてくれました。クアクレは、フィンランドやバルト三国に同じ形のものが伝わる弦楽器で、きらめくような澄んだ音色が魅力です。ラトビアではオウシュウトウヒで作られることも。

民族楽器クアクレ。弦の本数はさまざまなヴァリエーションがある
豚肉ベーコン巻きにポルチーニソース、チキンとマッシュポテト

お待ちかねのランチは民族野外博物館の入口近くに位置する、1841年に建てられた、元旅籠だったプリエデス・クルアグスでいただきます。
ラトビアでよく食べられているお肉は豚肉。この日のランチのメインにも豚肉のベーコン巻きが登場しました。ベーコン巻きには、ラトビアの秋の恵みには欠かせないきのこのポルチーニソースを添えて。グリルしたチキンとマッシュポテトの組み合わせも絶品。素材の旨味がぎゅっと詰まったおいしいメニューでした。ランチは通年提供されていますが、予約しておくと安心ですよ。

ライ麦パンにクリームとジャムを重ねたデザートもラトビアの定番

■ラトビア民族野外博物館(Latvijas Etnogrāfiskais brīvdabas muzejs)
レストラン「プリエデス・クルアグス(Priedes krogs)」のランチの予約は電話にて。詳細は公式サイトにて
http://brivdabasmuzejs.lv/en/

地元の人たちにも大人気リーガのおすすめレストラン

まるで現代アートのような色とりどりの美しいソース

リーガ旧市街のスウェーデン門すぐ近く、もとは兵舎だった建物にある「三人シェフ」は、楽しいアイディアと旬の素材を生かしたメニューが人気のレストランです。リーマンショックの打撃を受け、お皿が買えなくなってしまったピンチを逆手に取って、クッキングシートをキャンバスに見立て、パンのソースをアート風に描く演出で、一躍話題の店になりました。料理のクオリティの高さも評判を呼び、2024年のミシュランガイドにも選ばれています。

リーマンショックやコロナ禍を乗り越え、楽しいアイディアで人気店に
ビーツとクリームチーズを使った色鮮やかなサラダ

まるで目の前でライブペインティングが行われているような、楽しいパフォーマンスもさることながら、ソースは一つ一つが味わい深く、パンだけでお腹いっぱい食べてしまいそうになるほど。旬の食材を生かした料理はどれも丁寧な味付けで、人気店になるのも頷けました。

■「三人シェフ」(3 pavāru restorāns)
https://www.3pavari.lv/en

黒パンをニンニク風味で揚げたトーストは止まらなくなる

レストラン「アンダルシアの犬」は、サルバドール・ダリの映画のタイトルにあやかった、旧市街近くのおしゃれなお店です。上階には昔ながらの映画館があり、カジュアルで文化的な雰囲気。おいしいラトビア料理をはじめ、ピザやパスタなどのメニューも食べられるので、若い世代や家族連れなどでいつもにぎわっています。

カリカリに焼いたパイクパーチとマッシュポテトの一皿

■アンダルシアの犬(Andalūzijas suns)
https://andaluzijassuns.lv/index.php/en/

円安が旅にも影響を落とす昨今、毎回きちんとしたレストランで食事をするのは経済的に厳しいもの。そんなときにありがたいのが、気軽に入れるチェーン店です。リーガの街にもいくつか店舗がある「Lido」は、日本のファミリーレストランのような存在で、手軽にラトビア料理が食べられるのが魅力。
おいしいものが揃うマーケットもフルに活用しましょう。ライ麦パンや黒パンを買ってきて、名産の大麻バターやチーズと合わせれば、大満足の朝食に。

ラトビアの食料自給率は90%を超え、小麦や肉、野菜などはほとんどが国産品です。生産者と消費者の距離が近く、大地の恵みが豊かな食文化を支えているのを実感します。また、豚肉入りのパイはピロシキを思わせたり、揚げ黒パンはチェコの料理と通じるものがあったりと、伝統料理にはロシアや中央ヨーロッパと共通するものが見られるのにも興味が尽きません。
ラトビアを訪れるときにはぜひ、おいしい郷土料理も味わってみてくださいね。

取材協力
ラトビア投資開発庁(ラトビア政府観光局)https://www.latvia.travel/ja
フィンエアー https://www.finnair.com/jp-ja
フィンエアーの運航状況
2024年3月30日までの冬期スケジュールでは、成田、羽田、関西空港からヘルシンキ路線が運航中。2024年夏期スケジュールから、名古屋―ヘルシンキ路線が週2便で運航再開予定。

TEXT&PHOTO: 内山さつき

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
渡航についての最新情報は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html
(関連記事)https://www.arukikata.co.jp/web/catalog/article/travel-support/

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