
- スリランカ
謎だらけの「空中宮殿」スリランカの世界遺産シーギリヤ・ロック登頂に挑戦!
2024.12.14
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今回の執筆者:独立行政法人 国際協力機構(JICA)
社会基盤部 都市・地域開発グループ第三チーム 植田 隆誠
「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、ආයුබෝවන් !(アユボワン!:シンハラ語) こんにちは!
インド洋に浮かぶ南アジアの島国、スリランカ。世界中で愛されるセイロンティーや、スリランカカレーが有名ですが、広大なジャングルに凛とたたずむ巨岩、古代宮殿シーギリヤ・ロックなど、歴史的な名所や文化遺産も多く、北海道よりも小さな面積ながら、世界遺産はなんと全8カ所もあるのです! 今回の記事では、そんなスリランカの魅力とJICAの都市・地域開発分野における取り組みをご紹介します!
スリランカの正式名称はスリランカ民主社会主義共和国、首都はスリ・ジャヤワルダナプラ・コッテです(長い!)。公用語はシンハラ語とタミル語ですが、共通語として英語も広く使われており、海外初心者の方にもおすすめの国です。
ポルトガル、オランダ、イギリスの植民地だった過去をもつスリランカでは、さまざまな文化や宗教が混在しています。人口の約4分の3を占める先住民のシンハラ人は仏教徒が中心、主にヒンドゥー教を信仰しているのが少数派のタミル人です。北部のジャフナには多くのタミル人が住んでおり、シンハラ人が多いコロンボとは言語も宗教も食べ物も違い、まるで別の国に来たかのようです。
スリランカと言われて思い浮かぶのは“カレー”と“紅茶”ですね! 日本人が毎日ご飯を食べるように、スリランカ人は毎日(毎食?)のようにカレーを食べ、紅茶を飲みます。
スリランカでは、ご飯の周りに盛られた3~4種類のカレーを手で混ぜながら食べます。飽きないおいしさですが、とても辛いので慣れていない人は食べすぎには注意が必要かもしれません!(観光客用のレストランではマイルドな辛さのカレーも出してくれます)。
車の運転や仕事の合間には甘い紅茶を飲んでひと息つくのがスリランカンスタイル。「シーニエパ!(シンハラ語で「砂糖いらない」)」と伝えても結構甘いのはスリランカあるあるなのでしょうか。きっと辛い料理と甘い紅茶でスリランカ人はバランスをとっているんだ! と個人的には予想をしています。
風味を愉しむのはもちろんですが、スリランカを訪れる際にはぜひ紅茶畑にも足を運んでみてください! 山一面に広がる紅茶畑はずっと眺めていたいほど美しく、そこで飲む紅茶は格別です。紅茶畑はスリランカ各地にあり、産地ごとの風味の違いを愉しむのもまた一興です。
スリランカ観光で外せないのが世界遺産シーギリヤ・ロックです。5世紀ごろに造られたとされ、もともとは宮殿として使われていました。高さ約200mの岩山を約1200段の階段で登ります。
ゲームの世界のような圧巻の景色ですが、注目したいのはその灌漑技術です。頂上には王が使っていたと云われるプール(貯水池)や水路、庭園には噴水もあります。1500年以上前に造られたものとは思えないほどの高い技術力に驚かされます。当時の人々はこの景色のなかで何を思いながら過ごしていたのでしょうか、想像が膨らみます。
シーギリヤ・ロックに限らず、かつてのスリランカのまちづくりでは灌漑に力を入れていたと云われ、スリランカ国内にはタンクと呼ばれる貯水池が数多く存在しています。なかには今でも農業用水などとして使われているものもあり、国土の半分以上を乾燥地帯が占めるスリランカにとって欠かせないものとなっています。このおかげで現代のスリランカ人がカレーや紅茶を口にできているともいっても過言ではないのかもしれませんね。
地図上でみても、タンクと呼ばれる貯水池が数多く点在していることが分かります。
スリランカのみどころは山間部だけではなく、南部州には、美しいインド洋の海が広がり、サーフィンやホエールウォッチングなど、さまざまなアクティビティを楽しむことができます。
そんな観光と漁業が盛んな南部州に「タンゴール(Tangalle)」という地域があります。美しいビーチがあり、スリランカ有数の漁港でもあるタンゴールですが、洪水や干ばつ、津波などの自然災害リスクへの対応や、観光開発と漁業や農業に従事する住民の生活をどう両立させるかなどの課題も抱えています。そこでJICAは同地域における開発計画であるTangalle Development Planの策定支援を進めています。この取り組みは「都市開発計画能力強化プロジェクト」のパイロットプロジェクト(※)として実施されており、今後、タンゴールでの経験がスリランカ各地で応用されていく予定です。
パイロットプロジェクト:プロジェクトで得た知見を用いて先行的に実施、実証するプロジェクトのこと。
スリランカの戦略計画では、すべての指定都市開発地域の計画策定を期間内に行うことや、都市計画策定手法の近代化を実現させることを目指していますが、タンゴールだけでなく、多くの都市で計画策定が遅れています。また、データや人材の不足によって、十分に都市を分析できないことも課題となっています。
このような課題を踏まえ、本プロジェクトでは、都市計画策定に携わるスリランカの行政官の技能レベルを向上させ、国内の指導者を育成することで、持続的なスリランカの都市開発計画能力の向上を目指す取り組みを行っています。
これまでご紹介してきたようにさまざまな顔を持つスリランカだからこそ、街づくりにおいても各地域のニーズや周辺都市とのつながりを大切にした計画を策定し、適切に運用していく必要があります。
本プロジェクトのように、JICAでは街づくりに携わる人々の技能レベル向上や組織力強化のためのプロジェクトも多く実施しています。建築物を建てるだけが街づくりではなく、人材育成も重要な要素のひとつだということをお分かりいただけたでしょうか。
いかがでしたか? 日本との国交樹立から70年以上経つスリランカですが、初めて知ることも多かったのではないでしょうか。
実は、スリランカは第二次世界大戦後のサンフランシスコ講和会議にて、連合国側による分割統治計画から日本を救ってくれた恩人でもあります。「憎悪は憎悪によって止むことはなく、愛によって止む(Hatred ceases not by hatred, But by love.)」という演説をご存知の方もいるかもしれません。(気になった方はぜひ調べてみてください、冒頭ご紹介したあの長い首都名とも関係しています!)
このように日本とのつながりも深いスリランカですが、2022年には経済危機に陥り、大規模な抗議デモが発生したり大統領が国外脱出したりするなどの事態となりました。その間、JICA事業も一時停止していましたが、現在は安定した政治経済への道を歩みだしており、JICAも両国の社会へ貢献すべく事業を再開しています。ぜひ、再始動したスリランカにも注目してみてくださいね!
今回の記事で、スリランカやJICAに少しでも興味を持っていただけたならとても嬉しいです。
நன்றி!(ナンドュリ!:タミル語) ありがとうございました!