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ブダペストだけじゃない!温泉探検家が紹介するハンガリーの「スゴイ湯」11選
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日本人に馴染みの深い温泉マークは、今やスマホやパソコンでも絵文字に使われたり、「温泉」と入力すると見慣れたあのマークがすぐに変換候補に出るほどです。温泉マークの由来については諸説あるものの、江戸時代にはすでに現在の温泉マークと同じものが使用されていたようです。では、日本以外にも温泉マークはあるのでしょうか?
結論から伝えると、温泉の数が多く生活のなかで温泉が身近な国には、その国独自の温泉マークがあります。今回はいつもと少し趣向を変えて、筆者が出合った「世界の温泉マーク」を紹介します。
※温泉マークは絵で情報を伝える記号「ピクトグラム」の一種です。このため正確には「温泉を表すピクトグラム」というべきですが、この記事では馴染み深い「温泉マーク」という表現を用います。
ヨーロッパの温泉はおもに飲泉として利用されているものと、入浴のために利用されているものとがあり、温泉マークは大きくふたつのタイプに分かれます。
ひとつ目は「温泉が湧き出す」様子(噴泉)を表したもの、もうひとつは「温泉に浸かる」様子(入浴)を表したものです。イタリアやギリシャのように温泉入浴が盛んでも、噴泉タイプのマークを使用している国もあるので、必ずしも飲泉=噴泉タイプ、入浴=入浴タイプのマークを使用するというわけではなさそうです。いくつかの例を紹介します。
イタリアの温泉(テルメ)マークは典型的な噴泉タイプです。少しデザインは異なりますが、ギリシャのマークも噴泉タイプです。
ハンガリーとアイスランドでは入浴タイプが使用されています。どちらも入浴文化の発達した国で、「浸かる」デザインですが、筆者的にはなんとなくプールのように見えなくもありません。
ハンガリーの温泉を厳選して紹介
アイスランドの温泉マークはハンガリーに似ていますが、とても親切で温泉の温度が併記されています。写真はミーヴァトン温泉のもので、湯温が40℃であることを示しています。
地理的、歴史的なつながりもあって、アジア地域では日本の温泉マークをそのまま使っているケースを多く見かけます。特に台湾では、いたるところで日本の温泉マークが利用されています。
お隣、韓国でも日本の温泉マークをよく見かけます。
ただ、必ずそこに温泉があるわけでは無く「風呂のある宿」という広い意味で使われてきた歴史があるそうで、時に誤解を生みます。「マークを見て宿泊したが、ただの沸かし湯で温泉ではなかった」、「温泉宿かと思って訪ねたらそうではなかった」といった苦情が絶えなかったため、2008年に新しい温泉マークを制定しました。
入浴している様子を図案化したもので、普及までに時間はかかりましたが、最近では大半の施設が新しいマークを採用しています。また、天然温泉を引いていないのに温泉マークを使っていた古い宿の廃業が増えたこともあり、誤解自体は減っているとのことです。
中国では温泉を表す共通のマークはないようですが、観光に力を入れている自治体では独自のマークを使っています。また、「こんなところで?」と思うような場所で日本の温泉マークに出合うことがあります。
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東南アジアのタイでも日本の温泉マークをよく見かけます。ただ、タイでは、自噴する源泉を持つ温泉が多いので、噴き上げるタイプの温泉マークが併用されています。
温泉マークはアジアだけでなく、遠く離れた国々でも利用されています。例えばオーストラリア、メルボルン近郊のペニンシュラ温泉は、日本の温泉地などを参考に開発されたというだけあって温泉マークも日本のものにそっくりです。スペイン北西部のオウレンセ温泉も日本の温泉を参考に開発を進めた温泉町で、温泉マークだけでなく「温泉」という漢字を見かけます。海外で日本の温泉マークを見かけると、嬉しいものがあります。
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南半球のニュージーランドは、日本と同じ環太平洋火山帯に位置し、数多くの温泉が湧いています。なかでも、北島にある最大の温泉郷ロトルアからタウポまでの約80kmの区間には20ヵ所以上の温泉が密集しています。この区間を含む国道は別名「温泉探検街道(サーマル・エクスプローラー・ハイウェイ)」とよばれ、ニュージーランドに多い間欠泉が噴き上がる様子をモチーフにしたマークを沿線で見かけます。
カナダも環太平洋火山帯に位置する西海岸沿いに多くの温泉があります。温泉そのものを表すマークではありませんが、ブリティッシュコロンビア州では「温泉一周ルート(サークルルート)」の標識を設けて観光を盛り上げています。山手線や大阪環状線のように、一周できる道路沿いに約10ヵ所の温泉が点在しています。
外国人のなかには、「日本の温泉マークは、お皿の上の料理の湯気のように見えてしまう」という声があります。国際的なルール作りを推進している国際標準化機構(ISO)では2013年に、「温泉のピクトグラム」を制定しました。確かにこれなら人が浸かっているのがすぐにわかり、料理には見えず、湯気と「誤解する」「間違える」ということは防げそうです。
東京オリンピックの開催を2020年に控えていた日本では、来日する多くの外国人にわかりやすいように、諸々のピクトグラムをISO規格に統一するという方向性が示されました。温泉マークもISO規格と同じものにするといったんは決めたものの、関係者への意見聴取の結果、ここまで馴染んでいる温泉マークを変更することへの抵抗は根強く、2017年に、「従来の日本式温泉マークでもISOの定めるピクトグラムでも構わない」という最終決定をしました。
では、ISO式は実際に使われているのでしょうか?
タイでは前述のように日本式のマークが使われていますが、新しく設置した案内看板ではISO式を採用しています。タイ北部チェンマイの北西にあるターパイ温泉では、入浴する場所はISO式、源泉の湧く場所は従来の噴泉マークと使い分けていました。
今回はちょっと変わった特集でしたが、いかがでしたでしょうか? 筆者が訪ねた限りではアジアとヨーロッパが温泉マーク文化の中心のようです。温泉マークのある国にも、今までなかった国にもISO式が広がっていくのか、それとも定着しないのかが気になるところです。これからも引き続き「温泉マークの旅」を続けてみたいと思います。