コロンビアで知られざる湯滝を発見!豪快な野湯「セタキラの湯滝」
2024.4.1
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スペインといえばバルセロナやマドリッドが人気の観光地ですが、今回紹介する温泉は遠く離れた北西部のガリシア州にあります。ガリシア語という独自の言語を持つ歴史ある自治州ですが、日本ではあまり知られていません。しかし、ここは数多くの温泉が湧く「温泉の都」としてマニアに知られています。今回は、ローマ帝国の時代から知られ、無料の露天風呂があることでも有名なふたつの温泉を紹介します。
マドリッドやバルセロナから温泉を訪れる場合は、ガリシア州の州都サンティアゴ・デ・コンポステラまで国内線のフライトを利用します。この町は、キリスト教の巡礼路の終焉の地として世界遺産に登録されていて、欧米人にとても人気です。ここから第一の目的地であるバンデ温泉までは、車で1時間30分~2時間程度です
ただ、筆者はポルトガルの温泉を旅したついでに訪れたので、ポルトの町で車をチャーターしました。ポルトはリスボンに次ぐポルトガル第二の都市で、ドゥロ川の河口に位置します。河口付近の急峻な斜面に建てられた伝統的な街並みは美しく、「ポルト歴史地区」として世界遺産に登録されています。ポルトに一泊して、翌日はホテルで車をチャーターし、ガリシア州オウレンセ県のふたつの温泉を巡りました。
まずは、オウレンセ県のバンデ温泉へ北上します。途中、国境を越えてスペインに入ると、スマホの時計は自動的に1時間進みます。両国間に時差があるためですが、北上していて「経度」は変わらないのに、時差があるのは不思議な感じです。ポルトから2時間(時計の上では3時間)でバンデ温泉に到着です。駐車場には20台以上の車が停まっており、半数以上は長逗留のキャンピングカーでした。
バンデ温泉には石積みの4つの露天風呂があり、誰でも無料で利用できます。なかでも次のふたつがおすすめです。
まずひとつ目は、駐車場から左手に見える露天風呂です。ひらがなの「の」の字型で、右下のスロープから入ると、徐々に深くなります。温泉の湧く場所をそのまま石で囲っただけなので、浴槽の底から気泡とともに適温の湯が自噴しています。
もうひとつは駐車場からみて一番奥の貯水池側の露天風呂です。向かって右の主浴槽は同じく自噴泉で、溢れた湯は左手のひとり用浴槽に注いでいます。主浴槽は肩まで浸かれる深さがあって、じっくりと楽しめます。一方、ひとり用の浴槽はぬるいのですが、身体がすっぽりと収まる大きさです。首を浴槽の縁に載せて、青空を眺めながらの入浴は格別なものでした。
どちらの露天風呂もちょうどよい温度の温泉が大量に湧きだしていて、まさに奇跡的です。水着着用で男女一緒に浸かる温泉ですが、とても開放感のあるロケーションです。ほとんど知られていませんが、どの角度から見てもフォトジェニックですばらしい露天風呂でした。
なお、温泉はコンチャス貯水池のすぐそばにあり、湯量は季節によってかなり変動するそうです。貯水池が増水すると、露天風呂は水没してしまいます。地元の人の話では、地面の傾斜が小さいので、雨が続くとすぐに水没してしまうが、引くのも早いとのことでした。
バンデ温泉は「バンデのローマ温泉(Termas Romanas de Bande)」という名でも呼ばれます。石積み浴槽が作られたのは後世のようですが、ローマ帝国時代から温泉の存在は知られており、すぐ近くにローマ軍の宿営地の跡が残っています。
貯水池の右手の遊歩道を進むと「アクイス・ケルケニス」遺跡があります。古代ローマ帝国の時代、スペイン北西部(現在のガリシア州に相当)とポルトガル北部は、ガラエキア(ガリシアの語源)と呼ばれる属州のひとつでした。この地域を南北に通行できる400km近い道路(Via XVIII)を建設するための軍隊の宿営地がここにあったといわれています。
1920年代に発見された遺跡の一部は、1949年に始まったコンチャス貯水池の建設工事で水没してしまったそうですが、それでも見応え十分です。門や壁、礎石などが健在で、司令部、兵舎、穀物倉庫、病院、役人の住居などの説明板から当時の様子を想像できます。なぜ、この場所に宿営地が築かれたのかは不明ですが、豊富な水場と温泉が一因なのは間違いないでしょう。イベリア半島最大といわれるローマ軍の遺跡は、思った以上に壮大で、温泉とともに楽しめました。
バンデから45分ほど車で北上するとオウレンセに着きます。オウレンセはオウレンセ県の県都で人口は約10万人。古代ローマの時代から温泉町として知られ、ブルガスという名で呼ばれていました。
今でも旧市街の中心部にブルガス源泉が湧いています。橋を渡って公園に入ると正面に祭壇のような飲泉施設があります。中央が大きな噴水状のメイン源泉で、湯温は63℃と高めです。温泉は自由に持ち帰ることができ、飲用や浴用、パン作りなどに使われているそうです。
その先にはブルガス源泉を利用した無料の市民プールがあります。午前と午後に入浴時間が設定されていますが、利用者の大半は地元の高齢者でした。周囲にはローマ時代の遺跡があり、今も発掘作業が進められているそうですが、まだ不明な点が多いようでした。
オウレンセは温泉を観光の目玉にしていて、観光協会では温泉の場所を示した地図を発行しています。
地図にある1番(右下のAs Burgas)は、ひとつだけ離れた町中のブルガス温泉(前述)です。それ以外の7つの温泉(2~8番)は、2kmほど離れたミーニョ川沿いにあります。このうち、3番と6番が有料の温泉施設ですが、3番は2019年に火事で焼失してしまい、今はありません。6番は撮影禁止で、4番と8番は源泉井戸があるだけなので、残る2番、5番、7番の3つの無料温泉を紹介します。
町中に最も近く、車でアクセスしやすいのが2番のチャバスケイラ温泉(Termas Chavasqueira)です。車を停めて川へと向かうと温泉の看板があり、左折した先の川原に素朴な岩風呂がありました。きつい日差しの日でしたが、屋根はなく、パラソルや帽子をかぶった人も見当たりません。みな炎天下で日光浴を兼ねて入浴を楽しんでいました。
最も行ってみたかったのが、7番のカネド温泉(Termas Canedo)です。ウェブで見つけた露天風呂は和風情緒満点の岩風呂だったためです。しかし、たどり着くのは大変でした。ドライバーがカーナビを見ながら「7番に着いたけど、降り口がない」と悲鳴を上げます。どうやら、ハイウェイの直下にあるため、カーナビはハイウェイ上の場所を示してしまうのですが、そこに降り口はありません(日本でもたまにこのようなことがありますね)。やむなく3km走って、次のインターチェンジでハイウェイを下りて、温泉につながる道路を探しましたが、見つかりません。地元の人に地図を見せて尋ねると、5番と7番の温泉は遊歩道沿いにあって、車ではアクセスできないとのこと。
確かに観光協会の地図をよく読むとPaseo Termal(温泉ウォーク)と書かれており、各温泉間を歩いた場合の距離が記されています。車でも行けると思ったのが間違いで、歩いてしか行けません。7番の温泉の川向かいに駐車スペースがあるので、車を停めて、歩行者専用の橋を歩いて渡り階段を降りると7番のカネド温泉に着きます。4つある露天風呂は、思った通りの風情ある岩風呂でしたが、やっぱり屋根の類は一切ありません。
せっかくなので、5番まで遊歩道を900m歩いてみました。ところどころに木立があり、暑さを凌げますし、水場も何ヵ所かあります。9月の平日だというのに、大勢の人たち(お年寄りのグループや家族連れが多い)とすれ違います。皆お気に入りの露天風呂があって、通っているのです。到着した5番のムイーニョ・ダ・ベイガ温泉(Termas Muiño da Veiga)は一番広く、4つの露天風呂と1つの水風呂がありました。どの浴槽も湯温は同じでしたが、浴槽を結ぶ通路には木道が敷かれているので、裸足で歩くと気持ちいいです。最も長く歩く必要があるためで、利用者は少なくゆったりと楽しめました。
オウレンセ市の説明板を見ると、川沿いにパイプを設置して送湯しているようですので、泉質的にはどの温泉も一緒です。とはいえ、雰囲気はかなり違います。写真を撮るなら7番がおすすめですが、入浴して一番寛げるのは5番だと思います。車でアクセスできる2番は狭くて混んでいるので、ここだけ浸かって「こんなものか」と思われると残念です。ぜひ、ここを訪れる方は何ヵ所か巡ってお気に入りの温泉を見つけてみてください。
いつものように、旅の食事を紹介しておきます。
スペインではパリーヤ(Parrilla、中南米のスペイン語だとパリージャ)という塊肉専用の焼き網を使った焼肉が人気です。火力が強くて、網の隙間から脂を落とすので、さっぱりと仕上がります。日本でいう炭火焼のような感じです。牛と豚のミックスステーキを2人前注文すると、思った通りでとんでもない量の肉とポテトが届きましたが、しつこくないため、かなり食べられました。
海洋国のポルトガルではシーフードが人気です。一番人気はバカリャウ、日本でいう塩ダラです。大量に獲れたタラを塩干して、必要な時に水で戻して食べるそうです。ポルトガルでは国民食と言えるほど人気があり、様々な調理法があります。例によって、時間に追われたスケジュールでしたので、バカリャウ料理のなかで比較的早く提供できるというバカリャウ・コンナタスを注文しました。塩ダラをほぐして、揚げたポテトと炒めた玉ねぎと一緒にホワイトソースで和えて、オーブンで焼いたグラタンのような料理です。塩味の効いたタラとポテトの食感の違いが心地よく、おいしくないわけがありません。
温泉を目的にスペインを訪れる人は少ないでしょうが、ヨーロッパの中でも、スペインは野趣あふれる無料温泉が多いことで有名です。ほかの温泉については、また別の機会に紹介できればと思います。
温泉名 | URL |
バンデ温泉(Termas de Bande) | https://www.viajargalicia.com/ourense/bande/termas-romanas-de-bande |
アクイス・ケルケニス遺跡(Aquis Querquennis) | http://www.aquisquerquennis.es/en/home/ |
オウレンセ温泉(Termas de Ourense) | https://www.turismodeourense.gal/en/(観光協会のHP) |