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一度は行きたい世界の濁り湯20選!青やオレンジ、黒などカラフルな絶景温泉
2025.1.1
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皆さんは、温泉旅に何を求めますか? 温泉らしさを感じられる濁り湯が好き、歴史ある温泉宿に泊まってみたい、温泉成分が生み出す造形に興味がある、自然と一体化した露天風呂に入りたい……。そのニーズは人によってさまざまで、家族や友人の間で一致しないことも多いでしょう。ところが、200を超える温泉が湧くハンガリーは、そんな多種多様なニーズを満たしてくれます。
首都ブダペストの世界遺産エリアを見学すると、すぐに次の国に移動してしまう旅行者が多いのですが、温泉に興味があるならば、数日間かけてじっくりと巡る価値のある国です。
目次
ハンガリーでは、全土で濃厚な成分の温泉が湧いています。筆者は約50ヵ所の温泉を訪ねましたが、半数近くは「濁り湯」だったのが印象的でした(透明度の高い「色付き湯」を含みます)。それらは実はブダペストから離れたエリアに多く、日本人には馴染みのない場所ばかりなのですが、今回はとっておきの濁り湯を厳選し、湯の「色別」に紹介します。
なお、ハンガリーの温泉はプールのような公共施設が中心で、最初はちょっと戸惑うかもしれません。しかし、実際に入ってみるとどこも色やニオイがはっきりしている壮大な「露天風呂」で、感動すること間違いありません!
ハンガリー南西部のペーチには初期のキリスト教墓所があり、世界遺産に登録されています。ペーチから南へ25 km、クロアチア国境に近いハルカーニ温泉は硫黄成分が豊富に含まれた良質の湯として知られています。総面積が2000平方メートルを超える露天風呂(冒頭の写真)と内風呂にミルキーブルーの湯がかけ流しで使われています。
ブダペストから南東へ240km、ルーマニア国境近くにジュラの町があります。国防上の拠点であったジュラ城の敷地内にヨーロッパ屈指の「黒湯」が湧いています。ヨウ素を含む植物由来の湯で、鼻を衝くような強いアブラ臭が特徴。普通の水を沸かした浴槽もありますが、強烈な黒湯が好きで毎日のように通う人が少なくありません。
日本では、北海道や東北、東京などで黒い温泉が湧いていますが、ヨーロッパではほとんど見かけないレアな温泉です。
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ジュラから北へ、約100 kmにあるハイデゥソボスローでは、ジュラと同系の黒湯ですが少し明るめの紅茶色の温泉が湧いています。アンモニアを含むため、独特なニオイがただよっています。特徴的な風味があり好き嫌いは分かれますが、飲むことができるので地元の人は飲んで温泉を摂取しています。ヨーロッパには珍しく、温泉を引いたホテルが周囲に何軒もあり、宿泊すると夕食後にひと風呂、朝起きてのひと風呂が可能です。
ブダペストから西へ200 km。オーストリア国境が近いブクには、炭酸成分が豊富な温泉が湧いています。1957年、石油探査のために井戸を掘ったところ、温泉が湧き出したのが始まりです。泉質調査の結果、ミネラル含有量の多い屈指の高濃度温泉とわかり、「薬用水」に認定されています。
ブダペストの南東150 kmに位置するセンテシュ周辺は、ハンガリー最大の地熱地帯です。市街地には30を超える泉源があり、その3分の2は90℃を超える高温泉です。温泉病院にも供給されているという温泉水は、透き通った美しい琥珀色が特徴的です。
ハルカーニの東約50 kmの小さな町に湧く、おそらくハンガリーで唯一の茶色い濃厚な濁り湯温泉です。有馬温泉(兵庫県)の「金泉」のような湯が、ここだけポツンと湧いています。ただ調べたところ、現在は休業中でした。とても貴重な温泉ですので再開が待たれます。
なお、濁り湯の色は天候や時間帯、季節などで変化するので、写真の色とは異なる場合があります。
ブダペストは、100以上の源泉を有する温泉都市としても知られています。もっとも有名なのが、王宮のあったブダの丘の南麓にあるゲッレールト温泉です。20世紀初頭に建設されたホテルの雄々しい姿は、ドナウ川クルーズの船からも眺められます。
アールヌーボー様式の太い柱が並ぶ広大な温泉プールはガイドブックなどでよく紹介されています。階下には硫黄臭のただよう男女別内風呂があり、プールより温度の高い浴槽での入浴を楽しめます。
なお、ホテルは現在改修工事中で、温泉は営業していますが、今年(2025年)の秋から温泉施設も改修工事が予定されています。
ブダペストでゲッレールトと人気を二分するのがセーチェニ温泉です。世界遺産に登録されている地下鉄1号線の「セーチェニ温泉駅」で降りるとすぐ、という抜群のアクセスも魅力です。柱頭飾りが美しい宮殿のような外観は、ハプスブルグ帝国の「女帝」マリアテレジアに由来するテレジアンイエローに彩られています。
まもなく開業100年を迎える温泉プールはとにかく広大です。宮殿を眺めての入浴はブダペスト観光の思い出になること間違いなし! 泉質にこだわる人には、硫黄臭や金気臭を感じられる内風呂がおすすめです。
ブダペストから東へ130 km。古都エゲル市の郊外にあるエゲルサローク温泉は、1961年の石油採掘中に、70℃の温泉が湧きだしたことが始まりです。炭酸カルシウムを含む温泉はみるみるうちに純白の石灰棚を形成しました。かつては石灰棚の下で入浴を楽しめる豪快で素朴な温泉でしたが、リゾートホテルが一帯を購入し、石灰棚はプール脇に鎮座しています。
野趣あふれる景観は失われましたが、設備の整った温泉プールで大量のかけ流し温泉を楽しめます。
ブダペストから北東へ150 km、ミシュコルツ市南部のタポルツァにある洞窟温泉です。古代ローマ時代から利用されていた温泉を活用し、1959年に開業しました。温泉プールから続く洞窟内には分かれ道があって探検気分を楽しめます。
炭酸カルシウムが豊富で析出物が鍾乳石のように発達し、湯口は原形をとどめていません。勢いある温泉を利用した打たせ湯が人気で、時に順番待ちとなります。
現在、火災の影響で一時休業中ですが、今年(2025年)7月に再開予定です。
ハンガリー西部、バラトン湖の北西にあるヘーヴィーズは、湖全体がぬるめの温泉です。世界的にも珍しい温泉なので、一年を通して観光客でにぎわいます。湖は深いので、泳ぎに自信のない人はレンタルの浮き輪を利用するか、湖のなかの止まり木につかまるのがおすすめです。施設は湖上に浮かぶように建っており、硫黄臭が強めの内風呂もあります。
長い歴史を有するハンガリーは、広大な国土を有するオーストリア・ハンガリー二重帝国(ハプスブルグ帝国)の中心であったこともあって、郷土色豊かな料理を楽しめます。パプリカパウダーをふんだんに使った赤いスープ「グヤーシュ」はまさに国民食といわれるほど愛されており、季節限定のサクランボのスープも人気です。
エゲルサローク温泉の湧くエゲルは「雄牛の血」と呼ばれる赤ワインの産地で、「美女の谷」とよばれるエリアに、40軒以上のワインセラーが軒を連ねています。また、貴腐ブドウを使ったトカイワインは隠れた名産です。
ヨーロッパでは源泉をろ過して湯の華などを取り除き、塩素消毒を加えて浴用に使う国が少なくありません。ハンガリーでは源泉をそのまま使用している施設が大半で、これはとても珍しいことです。ろ過・消毒している場合も、それとは別に源泉プールを備えている施設が多くあり、温泉そのものの良さを楽しむこともできます。
今回の記事では11か所の温泉を紹介しましたが、ほかにも魅力的な温泉はたくさんあります。ほとんどの温泉はブダペストから日帰り、または一泊二日で利用できますし、公共交通機関のみでアクセスできる温泉も多いです。興味のある温泉を見つけて、ぜひハンガリーを旅してみてください!
なお、ハンガリーの温泉施設は基本的に年中無休ですが、日本の露天風呂とかなり違うので、冬場は屋外プールや露天風呂を休止している場合があります。ご注意ください。
紹介した温泉
ハンガリー230か所の温泉紹介ページ
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