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トルコの一大観光地、カッパドキアとともに訪れたい魅力的な温泉

テッキョズ温泉にある半地下のトルコ風浴室

東西文明が交差するエキゾチックな魅力にあふれた国、トルコ。イスタンブールの歴史地区はもちろん、奇妙な形の岩山が林立するカッパドキア、世界一ともいわれるパムッカレの石灰棚、エフェソスの古代遺跡群など、世界遺産に登録された有名な観光地がたくさんあります。この連載でも昨年、パムッカレと周辺の温泉の楽しみ方を紹介しました。今回は、なかでも特に人気の観光地、カッパドキアの周辺にある温泉を紹介したいと思います。

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旅の拠点は歴史の町カイセリ

トルコ旅行を検討するために、トルコのガイドブックを開いたことがある人なら必ず見た事のある巨石群があるのが、トルコのほぼ中央に位置するカッパドキアです。個人で旅行する場合、鉄道でもバスでもイスタンブールから10時間以上かかるため、飛行機の利用がおすすめ。今回、旅の起点とするカイセリ空港まではイスタンブールから1時間半、そこからカッパドキアまでは車で1時間です。

まるで別の星に来たかと思わせるようなカッパドキアの奇観

カッパドキア周辺には地味ながら魅力的な温泉が点在しているので、筆者はカイセリを拠点に、車をチャーターして連日の温泉旅を楽しみました。海外での運転に不安のない方は、レンタカーの利用もおすすめです。
カイセリという地名は聞き慣れないかもしれませんが、古代ローマ帝国の時代に皇帝ティベリウスが「カエサルの都市(=カエサレア)」と名付けたのが由来という歴史ある町です。

独特の感覚がクセになる?小魚療養温泉の「元祖」を訪ねる

1. カンガル・バルクル温泉(Kangal Balıklı Kaplıca)

一見わかりづらいが、無数の小魚が行き交っている

今回、筆者がカイセリを拠点とした最大の目的は、カンガル・バルクル温泉に行くことです。日本の健康ランドなどで、ぬるめの温泉や真水に足や手を浸けると魚が寄ってきて古い角質をついばみ、皮膚の状態を整えてくれるというのを見たことがある方も多いはず。このユニークな温泉の元祖的存在として世界的に有名です。

カンガル・バルクル温泉の「バルクル」は魚という意味で、現地の温泉が流れる川には天然の小魚が泳いでいます。皮膚病の治療者が利用する室内温泉や、一般の旅行者が楽しめる屋外温泉プール、小魚のいない個室温泉などが整備されていて、治療の為だけではなく世界中から温泉通が訪れます。「絶景温泉探検家」を自称する以上、筆者もいつか行かねばならないと思っていました。

5階建ての宿泊棟の前の川に小魚が棲息している

拠点としているカイセリからカンガル・バルクル温泉までは車で4時間。専用車を手配して朝8時にホテルを出発しました。カンガルの町を過ぎると、両側に山が迫る渓谷沿いの細道が続き、秘湯感が高まります。長い道のりを経て、カンガル・バルクル温泉に到着すると一軒の温泉施設がありました。事前に調べていた情報では「日帰り入浴は9時~18時まで」だったのですが、何やら施設の門が閉まっています。

近くにいた係員に尋ねると「正午から午後2時までは従業員の昼食休憩時間で利用できない」とのこと。時計に目をやると、まさに正午を過ぎたばかり。ここで2時間待っていたのでは、予定が大幅に狂います。筆者の表情が曇ったのを見て、「日本からわざわざ来たんだ。入れてくれ」とドライバーが強く頼むと、「わかった」と門を開けてくれました。もし筆者と同じくカイセリを拠点にしてカンガル・バルクル温泉を訪れる場合は、朝早くの出発をおすすめめします。

何の変哲もないプールだが無数の小魚がいて、すぐにアタックしてくる

敷地内は想像していたよりも広大です。宿泊棟の脇にはオープンカフェのパラソルが並び、療養温泉といっても明るい雰囲気で、バーベキューができる広場もありました。目の前の小川に降りるための階段があるので、早速、足湯を体験してみました。足を入れるとあっという間に魚が群がってきます。小魚に突かれると、くすぐったいというより痛いほどです。

建物の裏に回ると日帰り入浴が可能な男女別のプールがあります。水着に着替えて浸かってみると、湯温は体温とほぼ同じ35~36℃。これより熱いと魚が生息できないのだそう。人間にとっては体の芯からポカポカという感じではないので、夏向きの温泉です。湯に浸かるや否や、無数の小魚が寄ってきて体中を突かれます。

  • 小魚は思ったよりも大きく、5cm以上ある
  • 小魚があっという間に身体中にまとわりつく

療養棟の温泉浴室の前にたたずんでいると、係の人が、「見学して構わないよ」と声をかけてくれました。ドアを開けると、高い天井の浴室には六角形の大きなプールがひとつ。底には小石が敷き詰められ、隙間から無数の気泡があがっています。どうやら温泉の湧く場所に浴槽を作った「足元湧出湯」のようです。モノトーンで厳粛な雰囲気の浴室では、男性が1人浮力に身を任せて、水面に浮かんでいました。

  • 日帰り客は入浴できない療養棟の温泉プール
  • 昼時だったので、数組の家族がバーベキューを楽しんでいた


カンガル・バルクル温泉(Kangal Balıklı Kaplıca)

営業時間
9:00~12:00、14:00~18:00
URL
https://www.kangalbaliklikaplicasi.com.tr/en/index.php

日本人にはあまり知られていない魅力的な温泉が多い

2. バイラムハジュ温泉(Termal Bayramhacı Kaplıca)

かつての洞窟住居が奥に見えるバイラムハジュの村

カイセリとカッパドキアの行き来をする場合にぜひ立ち寄って欲しいのが、バイラムハジュ温泉です。この温泉はカイセリとカッパドキアの間にあり、カッパドキアが近いだけあって、斜面に並ぶ家々の背面に洞窟住居の跡を示す穴が数多くみられます。集落内の曲がりくねった道を走ると、突き当りに素朴な温泉施設がありました。

夕焼けが迫る時間帯の露天風呂。左が温泉のプール

露天プールはクズル川を臨む絶好のロケーション。プール内には仕切りがあり、源泉が注いでいる方は40℃前後の適温。「湯の色が緑色ですが、汚れているのではなく温泉の成分によるものです」と壁面に書かれています。もう一方はこぼれ湯なのか、かなりぬるく感じました。

  • 左手の階段を上ると露天プール、右手の入口から入ると内風呂がある
  • トルコらしい青を基調とした内風呂。日差しを受けて浴槽が輝いていた

室内への階段を下りると、長方形の浴槽に温泉がかけ流しであふれていました。高い位置の窓から陽が射しこみ、透明な湯が輝いています。湯温は38~39℃とぬるめで、長湯を楽しみたいところですが、筆者が訪れたのはすでに夕刻だったため、早々に切り上げてカイセリに戻りました。

湯温が低いため、気温の低い時期は休業するようで、こちらもカンガル・バルクル温泉同様に夏向きの温泉です。夏季以外は休業の場合がありますのでご注意ください。

3. コザックル温泉(Kozaklı Kaplıca)

地元の人が中心の共同浴場の浴槽。トルコでは日光をうまく取り込んだ施設が多い

カイセリから北西方面へ約130kmの場所にあるのがコザックル温泉です。ネヴシェヒル県の一大温泉地で、大型のホテルが軒を連ねています。ほとんどのホテルにはきれいで大きな温泉プールがあり、日帰りでも利用可能。

欧米のツアーではコザックルに宿泊するプランが多いようですが、日本のツアーはカッパドキアの後、西に進みパムッカレへと直行するのが「ゴールデンルート」なので、北に位置するコザックル温泉に泊まることはまずないようです。

廃墟の露天風呂。奥に高級なホテル群が見える

ここ数日移動をともにしているドライバーは私の好みを理解してくれたようで、「あなたはきれいで大きな温泉は好きじゃないんだね」と声をかけられました。「できるだけシンプルで、新鮮な湯を使っている温泉が好きなんだ」と答えると、ふたつの場所へ案内してくれました。

ひとつは地元の人たちが利用する共同浴場で、大量の温泉がかけ流しであふれていました。もうひとつは廃業したホテル跡地にある「垂れ流し源泉」です。野湯のような露天風呂を目の前にして思わず歓声を上げると、ドライバーも喜んでくれました。

海外で車をチャーターする際には、「勘」のいいドライバーにあたるかどうかがが重要ですが、今回は大当たりでした。

4. テッキョズ温泉(Tekgöz Kaplıcaları, Yemliha)

施設の外観。地上部分を見ただけでは、どこに何があるのかわからない

コザックル温泉からカイセリへ帰る途中で、もう一ヵ所立ち寄りました。現地のドライバーもその存在を知らなかった、テッキョズ温泉です。温泉施設内の階段を降りると半地下の空間に浴室がありました(冒頭の写真)。

オスマン帝国時代の浴場がそのまま残っているそうで、イスラム建築でよくみかける「ドーム型」のデザインが多用されています。丸みを帯びたアーチ状の天井が印象的な浴室には窓がなく、電球の柔らかな光があるのみ。大量の湯がふたつの湯口からかけ流しのため、蒸気が充満して高湿度です。ここは昔から眼病に効く温泉として有名とのこと。

女性用の浴室。半地下のトルコ風浴室は薄暗くて幻想的

「温泉に興味があってやってきた」と施設の主人に伝えると、女性用の浴室を見せてくれました。同じく半地下の浴室でかけ流しの温泉を楽しめるのですが、こちらは男性用の浴室のようにアーチ状の屋根はなく、ごく普通の長方形の浴槽でした。

隠れたトルコグルメ?ラマダン時期限定のパンがおいしい

マンティはこの地方の名物料理とのこと

トルコはイスラム教徒が多い国ですが、戒律はそれほど厳しくありません。トルコ往復のチケットを予約した後、ラマダン(断食月)がちょうど終わる時期なのを知りました。どうしようかと迷いましたが、時期を変えて旅行するのは難しかったので、何とかなると出発しました。

翌日でラマダンが終わるというタイミング。町中のレストランは日没まで休業ですが、街道沿いのドライブインはふつうに営業していました。ドライバーも「食べないと仕事にならない場合は食べていいんだ。空腹で事故でも起こしたら大変だからね!」というので、一緒に食事をとりました。

牛肉と野菜のスパイシー炒めとラマダンピデ

ひき肉入りのニョッキをトマトとヨーグルトソースで煮込んだマンティと、牛肉と野菜のピリ辛炒めを注文。マンティは主食を兼ねたひと皿で、ヨーグルトのさわやかな酸味で食が進みます。また、ピリ辛炒めといっても料理全体が辛いわけではなく、青い唐辛子をうっかり食べなければ問題ありません。

どちらもおいしかったのですが、驚いたのは「ラマダンピデ」というパンです。ラマダンの期間、人々は日中断食して、日没後に食事をとりますが、ふだんより栄養価の高いものを食べる習慣があるそう。ラマダンピデはラマダン期間中のみ食べる薄型のパンの総称で、特別な配合で生地を練り水分を多く含むため、ふっくらモチモチしておいしく、ゴマの風味が食欲をさらにそそります。

帰国後に調べてみると、ラマダンピデのファンが語り合うサイトがいくつもあってビックリしました。ラマダン時期ならではの食事を楽しめたのも、トルコの旅の思い出です。

まとめ

「カッパドキアとともに訪れたい温泉」はいかがでしたでしょうか? トルコは全国各地に魅力的な温泉が湧いています。拙著「さあ、海外旅行で温泉へ行こう」では、1000年以上の歴史を誇るチェキルゲ温泉や、泥風呂のスルタニエ温泉など、今回は紹介できなかったトルコの魅力ある温泉も紹介しています。あわせてご覧ください。

なお、この記事ではカイセリ空港を起点にしましたが、「カッパドキア観光がメインなので温泉は不要」という方には、西側のネヴシェヒル・カッパドキア空港の方が近いです。今回紹介した温泉は、カンガル・バルクル温泉を除くとどれも小さな施設ですので、もし行かれる場合には最新の情報を確認してください。


「世界のスゴイ温泉旅」これまでの記事はこちら

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