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ハワイでカルチャーさんぽ!オアフ島で訪れるべき神話・伝説スポット7選

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2025年6月27日
公開日
2025年6月30日
©iStock

美しい自然が印象的なハワイですが、一方、実は神話の宝庫なのを知っていますか? 海にも山にも神々の物語が残り、ホテルが林立する中心地・ワイキキにも、神秘の伝承が残っています。今回はハワイの神話や伝説に詳しいライターの森出じゅんさんが偏愛するスポットを厳選して7つご紹介。神話の舞台が数多く存在するオアフ島で、旅の途中で気軽に行けるのに実はあまり知られていない神話スポットをおすすめしてくださいました。

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ハワイの神話・伝説スポット7選

1.サメの化身の女首長がサーフィンを楽しんだホノルル港

©︎iStock クルーズ船の拠点としてにぎわうホノルル港。港入口に立つ波がママラのサーフスポット
©︎iStock 港には今、商業施設「アロハ・タワー・マーケットプレース」やハワイ・パシフィック大学がある

オアフ島の海の玄関、ホノルル港が外国船を迎えるようになったのは18世紀末。そのはるか前から海辺にはハワイアンの村があり、カヌーが出入りする入り江が広がっていました。周辺には神話がいくつも伝わっていますが、なかでも有名なのが美しい女首長、ママラの物語でしょう。

港近くの村で暮らしていたママラは、実はサメの化身で半神半人。サーフィンの名手で、港の入口がママラのお気に入りのサーフスポットだったとか。荒い波も楽々と乗りこなすママラを岸から眺めて、村人たちは喝采を送ったということです。ママラの愛した港入口のサーフスポットはハワイ語で「ママラの海」を意味するケ・カイ・オ・ママラと呼ばれ、現代の地図にも、ホノルル港から真珠湾にかけての海はママラ湾と記されています。

◆ 私の偏愛POINT ◆

ホノルルのダウンタウン在住の私。毎日、窓からホノルル港を眺めながら暮らしています。大きな客船の出入りはもちろん、沖に立つ波を見ながらふと考えるのがママラの神話。日々、神話の舞台を見ながら暮らすというのもなかなか贅沢な経験で、告白すればこれが私の神話熱というか、神話を学ぼう! という原動力にもなっているんです。ちなみにママラの神話は、昨年ワイキキで始まったショー、シルク・ドゥ・ソレイユ「アウアナ」でも取り上げられています。ずばり「ママラ」と題する一幕があるのです。ショーを観て以来、私の頭のなかでママラの存在感が一段と大きくなりました。

このホノルル港、日本の皆さんにとってはディナークルーズ乗船の際などに訪れることが多いかと思いますが、ダウンタウン散策に合わせて日中、ぜひ足を延ばしてほしいと思います。岸壁からはカラフルな熱帯魚がたくさん見えるので、私も朝散歩の際、パン屑を持って立ち寄ったりします。

ホノルル港

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住所
1 Aloha Tower Drive, Honolulu, HI

2.不思議な癒やしのパワーがみなぎるカヴェへヴェへ

©︎クニナカイ 地下水が噴き出る箇所には藻が生えず白い砂地が続く
癒やしの海周辺はボードウオークになっている

ワイキキの高級ホテル、ハレクラニの前の海は古来、カヴェへヴェへ(ハワイ語で癒やしの海)と呼ばれ、癒やしのパワーがみなぎると信じられてきました。昔は癒やしを司るカフナ(ハワイ語で専門家。神官、医師など)が常駐し、治癒を求めて病人たちが集まったといわれます。

病は神や先祖の怒りのメッセージとも考えられていた、昔のハワイ。そのため病人はカフナとともに海に入り、まずは祈りを捧げることから癒やしのプロセスを始めたそうです。神や先祖に許しを乞い、病からの回復を祈願するためです。

その海水に不思議なマナ(霊力)がみなぎると信じられていた一方で、もうひとつ、一帯の海底からは淡水が湧き出ているため水温が低く、それが病を癒やす……と現代風の解釈を試みる人もいます。真相は「神のみぞ知る」ですが、カヴェへヴェへは、ワイキキの癒やしの伝統を代表する神秘の場所といえるでしょう。

◆ 私の偏愛POINT ◆

ハレクラニホテルといえば、ワイキキを代表する洗練された高級ホテル。そのホテルの目の前の海に神秘の伝承が残るというギャップに驚愕し、以来、カヴェへヴェへが気になるスポットとなりました。カヴェへヴェへの神秘に心ひかれるのは、もちろん私だけではありません。ホテルのカルチャー担当ディレクターから以前、ホテルを定宿とする米本土の某ドクターがカヴェへヴェへの海水を瓶に詰めて持って帰り、クリニックに飾っているという話を聞きました。

もしかしたら現代医学の限界を感じたドクターが、カヴェへヴェへの神秘に心のよりどころを求めたのかもしれません。見知らぬドクターの思いを想像し、なんだか胸が熱くなりました。

一帯には地下水が噴き出しているため、まるで井戸水のように冷たいですが、晴れた午後にでもぜひカヴェへヴェへで泳いでみてください。それこそ身も心も浄化されるような、不思議な感覚に浸れます。私はときどき、シェラトンホテル側からカヴェヘヴェヘに回り、足元を海に浸して癒やされています。

カヴェヘヴェヘ(グレイズ・ビーチ)

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住所
2199 Kalia Rd. Honolulu, HI

3.タヒチからやってきた4人のマナがこもるカフナストーン

©︎PIXTA 4つの岩にはそれぞれ、癒やしの力を残していったカフナの名がついている
©︎iStock 巨岩の横にはタヒチ・ライアテア島から贈られた小さな岩も

クヒオビーチ沿いのワイキキ警察署隣に鎮座する巨岩群。カフナストーン、魔術師の岩、などさまざまな名で呼ばれるこの4つの岩には、大昔、タヒチからやって来た4人のカフナの癒やしの力がこもるという伝説が残っています。伝説によれば16世紀、タヒチの神官がワイキキに住み着き、人々の病気治療を始めたとか。4人は優れた癒やしの術を持ち、その名声はハワイ中にとどろいたそう。

一帯の人々に深く慕われていた4人ですが、数年後、タヒチに戻ることに。そこで4人のリクエストに従って土地のハワイアンは近隣のカイムキ地区から4つの巨岩をこの地に運び、4人の記念碑とすることにしました。4人はそれぞれの岩に手をかざして癒やしの力を岩に残すと、タヒチへと帰っていったということです。

◆ 私の偏愛POINT ◆

不思議なカフナストーンを信奉する人は王族にもいて、19世紀、岩の近くに住んでいたリケリケ王女(ハワイ王国君主のカラカウア王&リリウオカラニ女王の妹)も、よく海に入る前に岩にレイを捧げ、祈りを捧げていたそうです。「王女が岩に祈った」という逸話がなんとも印象深く、私もワイキキに行くたび、聖なる岩を詣でるようになりました。

なお岩々の横には、カフナの故郷というタヒチのライアテア島から贈られた小さな岩も、一緒に飾られています。実際、タヒチでもカフナストーンのことはよく知られているとか。そんな話を以前、ハワイアンシンガーでハワイ文化の権威でもあるクウイポ・クムカヒさんから聞きました。クウイポさんはタヒチの王女とともにカフナストーンを訪れ、そう聞いたそうです。にぎやかなワイキキの真ん中にあるカフナストーンですが、数世紀も崇拝されてきたこの岩には、不思議なマナがこもっている気がします。素通りしてしまうのはもったいない。ぜひお参りしてみてください。

カフナストーン

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住所
2425 Kalakaua Ave. Honolulu, HI

4.英雄に退治された巨人の成れの果て、オロマナ山

©︎クニナカイ パリハイウエイ沿いの小さな見晴らし台「パリハイウエイ・オーバールック」から眺めたオロマナ山

頂上がⅯ字型をした、ユニークな姿のオロマナ山。カイルアにそびえるこの山は、大昔に退治された巨人の下半身が山になったものといわれています。

大昔、コオラウ山脈沿いのマカプウからクアロアに陣取っていたオロマナは、天を突くような巨人でした。オアフ島の首長でさえオロマナの陣地には手を出せないほどの無法者だったので、カウアイ島からやってきた勇者パリラがオロマナ退治に乗り出すことに。勇猛なだけでなく、神の血を母に持つ半神でもあったパリラはアッという間にオロマナを真っ二つに切り裂き、上半身は海近くに落ちてマヒヌイの丘に。下半身は山になり、今ではオロマナ山として知られています。

◆ 私の偏愛POINT ◆

オロマナ山のビューポイントのひとつが、ホノルルのダウンタウンからカイルアへと続くパリハイウエイ途中の見晴らし台です。眼下にはカイルアの海や町が広がり、一般に絶景スポットとして知られています。この展望台で、アメリカ本土から来たらしき一家と一緒になったことがありました。しきりに「グリーンの海がきれい!」と感心する様子を見て、フと思ったのです。同じ景色を見ていても、その方たちの目には眼下の美しい海や町並みしか映っていない。オロマナ山にしても、巨人伝説を知らなければただの山にしか見えないですよね。

一方、昔のハワイアンは、オロマナ山を眺めれば巨人の物語を思い出したでしょうから、そう考えると、神話や昔話を知って眺める景色こそがハワイの原風景。先人たちが見ていたハワイだと思います。カイルアを訪れる時、ぜひ巨人伝説を意識してオロマナ山を眺めてみてください。

オロマナ山

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住所
Kailua, HI

5.ハワイの閻魔さまがいた? ヘエイア州立公園

©︎クニナカイ 手前が空から眺めたケアロヒ岬
©︎iStock ヘエイアの海の珊瑚礁や砂州は女神マルラニの身体から造られたとか

カネオヘ近くにあるヘエイア州立公園は、神秘の物語が残るケアロヒ岬に位置しています。岬の先端はその昔、土地のハワイアンがあの世に飛び立つと信じられていたスポット。集まってきた魂はここで左右に分けられ、善良な魂は左へ、邪悪な魂は右へ。つまり岬の左は天国、右は地獄とみなされていたわけです。

また岬周辺の海に点在する珊瑚礁や砂州は、もとは女神マルラニの身体から派生したとか。マルラニはヘエイアの海に埋葬され、海中で分離した身体がいつしか陸地や珊瑚礁になったそうです。そんなわけで今もマルラニが、ヘエイアの海を守っているといわれます。さらに岬の正面に見えるモカプ半島は、神々がこの世で初めてのハワイアンを創造した場所。創造神話に関わりがある聖地なんです。

◆ 私の偏愛POINT ◆

ヘエイアは、私的にはオアフ島指折りの神話スポットのひとつです。上記のようなメジャーな神話のほか、公園の右下にある養魚池には大トカゲの半神の伝説が。また岬近くには月の女神ヒナの神話の舞台とされる丘があるなど、右を見ても左を見ても神々の物語が残るエリアで、まさに神話の里のような地域といえます。

ヘエイア州立公園にはまたハワイアンの主食のひとつだったパンノキや、お祓いにも使われる聖なる植物ティーリーフなど、島の生活に欠かせなかった植物もたくさん。こうしたハワイらしい植物を愛でたり写真を撮るためにも、私はちょくちょくヘエイアを訪れています。

ヘエイア州立公園

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住所
46-465 Kamehameha Hwy. Kaneohe, HI

6.天地創造神話にも登場する歴史深い地、クアロア

©︎iStock 大トカゲと女神ヒイアカの神話が残るモコリイ島(通称チャイナマンズハット)
©︎PIXTA 「パリク」との古称で創世記にも登場するクアロア

ヘエイアからほど近いクアロアは、ヘエイアに並ぶ神話の宝庫。まずクアロア部分のコオラウ山脈は、「パリク」との古称でハワイの創世記にも登場。たいへん古い土地として知られます。海辺に目を移せば、クアロア・ビーチパークの目前には「元は大トカゲの尻尾だった」という小島、モコリイ島が。神話によれば大昔、その名もモコリイとの名の大トカゲがクアロアの海辺に陣取り、旅人を脅かしていました。

ところが通りかかった女神ヒイアカに襲いかかって逆に退治され、切り落とされた尾は海に突き刺さって島に。胴体はコオラウ山脈の前に横たわって道になったということです。ほかにも小人族メネフネが造ったという養魚池、サメの神が起こしたという津波の話など、数々の神話が伝わっています。

◆ 私の偏愛POINT ◆

クアロア・ビーチパークにはホノルル市の運営するキャンプ場があり、以前はよくキャンプに出かけました。私には第6感のようなものは全くないのですが、静まり返った早朝などにはやはり偉大なマナというか、土地の聖なる空気をひしひしと感じることがありました。クアロアに漂う神秘の香りに、強くひかれています。

クアロアビーチにはいつも涼しい午前中から出かけますが、ランチタイムは通常、すぐ近くのクアロアランチのカフェへ。牧場産のビーフを使ったハンバーガー、ジューシーでおいしいのでおすすめです。

クアロア・ビーチパーク

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住所
49-479 Kamehameha Hwy. Kaneohe, HI

7.サメの神の祭壇として使われてきた岩、ポハク・パアキキ

©︎クニナカイ 鮫の神のための祭壇として使われたポハク・パアキキ
©︎クニナカイ 遠く背後にはマカプウ・リサーチ・ピアが見える

海洋施設「シーライフパーク」からほど近い海辺にある岩、ポハク・パアキキは昔、サメの神にアヴァ酒を捧げる祭壇として使われていたそうです。アヴァ酒とは、木の根から造る飲物。アルコール分はありませんが酩酊作用があり、ハワイではお神酒代わりに使われてきました。

神話によれば、近郊の信心深い男は祭壇にアヴァ酒を捧げるのを日課としていましたが、底意地の悪い隣人が嫌がらせをはじめました。小さなサメを切り刻んでは祭壇近くに投げ込むという愚行を繰り返したので、ついにサメの神が激高。意地の悪い男を食い殺してしまったのです。ところが男の身体があまりに不味くて悪臭がしたので、サメの神は「未来永劫、自分も含めサメはこの海で人を食べまい」と誓った……との物語が伝わっています。

◆ 私の偏愛POINT ◆

祭壇だったという岩のあるカウポビーチは波が穏やかで、家族連れにも人気。そんなにぎやかなビーチにサメの神話が残るなんて、ユニークですよね。くだんの岩は波打ち際近くにあるので、引き潮の時も満ち潮の時も、簡単に見つけることができます。ちなみにカウポビーチからは、巨人伝説のオロマナ山や、ハワイアン発祥の地というモカプ半島も遠望できます。知る人ぞ知る神話スポットといえるでしょう。

なおワイマナロ方面にビーチ沿いにしばらく歩いていくと、インスタスポットとしても人気のマカイ・リサーチ・ピアが。15分ほどかかりますが、ピア周辺は駐車スペースが少ないので、ときどきカウポビーチから歩いて出かけたりします。

カウポ・ビーチパーク

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住所
Kaupo Beach Park, Waimanalo, HI

まとめ

オアフ島のなかでも比較的訪れやすい私の偏愛する神話&伝説スポットを紹介してきました。ハワイが精神性の高い神秘の島であること、ご理解いただけたでしょうか? 島を歩けば、神話・伝説の舞台につきあたるハワイ。島の過去や神々の物語の舞台を訪れ、どうぞハワイの深遠なカルチャーを満喫してみてください。もっと深く知りたい方は著書『史跡と神話の舞台をホロホロ! ハワイカルチャーさんぽ』もぜひご覧ください。

■著者プロフィール

森出じゅん Jun Moride
オアフ島ホノルル在住。横浜出身。青山学院大学法学部卒業後、新聞・雑誌・広告のライターとして活動。1990年、ハワイ移住。フリーランスのジャーナリストとして活動する傍ら、ハワイの文化や歴史、神話・伝説、民間伝承を研究中。単に「美しいハワイ」にとどまらないハワイの奥深い魅力、真の姿を日本に発信すべく、執筆を続ける。イオラニ宮殿日本語ドーセントも務める。

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