• Facebook でシェア
  • X でシェア
  • LINE でシェア

ハワイ編集のサラブレッド?島流しでハワイに?『地球の歩き方 ハワイ』初版を個性的な編集者たちでひも解く!

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2025年5月23日
公開日
2025年6月30日

「インド」初版を読む回に続き、今回は42年前の1983年に創刊した『地球の歩き方 ハワイ』のページを、関連書籍のスタッフ3人でめくってみた。巻頭特集の「宇宙」、手描きのショッピングセンターの地図など、当時の編集者が自由に作った、時代が感じられる記事が満載。編集のおふたりのハワイに携わるきっかけも、運命的&おもしろすぎる!?
親子2代で『地球の歩き方 ハワイ』の編集を担当する原万有伊さん、『arucoハワイ』の編集を担当する井上香菜美さんのおふたりに、ハワイ担当プロデューサーの日隈理絵がインタビュー。

AD

『ハワイ』初版とは

こちらが、1983年に発売された『地球の歩き方 ハワイ』の初版。これまでのバックパッカーに向けた「地球の歩き方」シリーズの意志を継いで、1日25ドル以内で楽しめる旅の訴求や「見つけた! 新しいハワイ」というテーマでハワイを紹介している。担当した編集者の主観や偏見、こだわりがたっぷり詰まった1冊だ。

まずはおふたりが初めてハワイに訪れた時のことを聞かせてください

左から井上さん、中央が原さん、右がプロデューサー日隈(インタビュアー)
井上

井上

初めてハワイに行ったのは中学2年生で、母とふたりの家族旅行でした。そのあとは大学卒業後、就職せずに自宅に引きこもっていたら、なんと首にカビが生えてしまって(笑)

井上

井上

お医者さんからは、とにかく外へ出て陽に当たってくださいと言われ……。そんな私を見かねた父とも不仲になり、家族会議の結果、当時親戚が住んでいたハワイのコンドミニアムに転がり込むことになりました。いわば島流しのような形でした。

原

「首にカビ」「島流しでハワイ」とパワーワードが多過ぎますね。ハワイには何年くらい住んでいたんですか?

井上

井上

ビザの関係もあり初めは半年で日本に帰って、またハワイへ行ってを繰り返し、結局2〜3年住んでいました。住み始めたら友達ができ、ハワイにすっかりはまってしまったので、日本で会社勤めをしても長続きせず。お金が貯まったらすぐにハワイへ戻っていました。

ハワイに住んでいた頃(右上)とハワイ島取材中の井上さんの写真
井上

井上

行き来を繰り返すうちに、ハワイ専門の情報誌と出合って編集者として働くようになり、本格的にこの業界に入っていきました。

原さんはお父様がこのハワイの初版を作った編集者ですよね

最新版『地球の歩き方 ハワイ』のP.193には子供の頃の原さんとお父様の写真が掲載されている
原

初めてハワイに訪れたのは生後10ヵ月ごろだったようなので、ほぼ記憶がありません。父は毎年『地球の歩き方 ハワイ』の取材で年に数回ハワイに行っていて、そのたびに母と自分もその出張によくついて行き、アクティビティなどの体験ものの撮影のときはモデルになったりしていました(笑)

井上

井上

原さんの名前の「万有伊(マウイ)」も今でこそたまにいるけれど、まさにこの仕事をするために生まれてきたようなサラブレッドですね。

原

よくマウイ島という島の名前から由来していると思われがちなんですが、実はハワイの神話に登場する人間と神さまのハーフで英雄の「マウイ」から来ています。初版のP.267にもマウイの説明がありますね。

井上

井上

ご両親の出会いもハワイが関係しているんですよね?

機内で初めて出会ったあと、成田空港で両親が撮影した写真
原

はい。ハワイから日本へ帰国する機内で、3人掛けの端と端に父と母が座っていたそうです。真ん中には父に同行していたアシスタントが座っていて、2人で母に声をかけて仲良くなったのがきっかけと聞いています。しかもあまり被らなそうなビタミンカラーの服を着ていて、運命だ!と思ったそうです(笑)

お父様が『地球の歩き方 ハワイ』を作るきっかけは何だったんですか?

原

父は当時大学生でスポーツライターのアシスタントをしていました。ライターのアルバイトをしていた編集部に、たまたま「ハワイに行きたい若いヤツはいないか」という仕事の依頼があり、手を挙げたのがきっかけだと聞いています。

原

特別ハワイに興味があったわけではないけど、書く機会が欲しかったのと、「若いヤツ」ということで引き受けたそうです。この初版を読んでいても、当時父親が初めてハワイを訪れた時の心情や目にしたものが書かれているような気がして、とても興味深いです。そんな父の背中を見て育ってきたので、自然とこの仕事に興味をもち、今にいたっています。

ではそんな『地球の歩き方 ハワイ』初版を読んでいきましょう。いきなりの特集が「宇宙」というのはとても斬新!

井上

井上

確かに。今でこそハワイ島のマウナ・ケアには日本の「すばる望遠鏡」があったり、宇宙観測に最適な場所として認知されているけれど、当時はハワイ=宇宙というイメージは少なかったですよね。

原

「見つけた!新しいハワイ」というテーマもあって、尖った切り口にしたかったのかも。南十字星が見えるスポットを紹介したり、ワイキキのホテル群を星座に見立てた「ホテルの星座表」なるコラムまで作ったりしていますね(笑)

井上

井上

『中心点となるのはキングス・アレイ。これはいわば北極点。この北東にあるのが大三角座。ここには安いアパートメントホテルが集まっている。(中略)その北にはクヒオ通り沿いにエコノミー・ホテルが連なっている。クヒオ座とでも名付けましょう。』う〜ん、絶妙にわかりづらい(笑)

原

尖ってますね(笑)

ショッピングモールのMAPが全て手描き! 斬新でかわいい!

原

父がガイドブック作りで一番大切にしているのは地図だと聞いたことがあります。実際、この初版のMAPもすべて自分で歩いてメモを取ったそうです。大陸を歩くことが主である「地球の歩き方」にとって、こういった商業施設の詳細なMAPを載せたのはおそらく初なのではないかと思います。

井上

井上

昔は今みたいにショッピングモールの構造自体が複雑ではなかったから、地図に落とし込みやすいというのはあったのかも。それでも一軒ずつ見てまわるのは大変ですよね。

原

ショッピングモールMAPは最新版でもいまだに全店舗掲載しているのですが、お店の名前のあとにどんなジャンルのお店かを記載する箇所に、初版では「靴の修理はおまかせ!」とか「友達に差をつけよう」とかひと言コメントが入っていておもしろい(笑)

全体的に、今では考えられないような情緒的でくすっと笑えてしまう文章が多いですよね

原

これは他の「地球の歩き方」のタイトルでもそうだと思いますが、特に注意喚起のページはそういった傾向が多いです。

井上

井上

「ビーチで盗難にあわないために」のコラムでは『日本人が一番盗難にあいやすいのがワイキキビーチなんだそうで。(中略)カメラやラジカセなんかも、一度盗まれたら、今生の別れ、二度と生きてはめぐり逢えぬから(死んでもお目にかかれないが)』なんてポエティックな表現も。

原

同じページの「花売りムスメに御用心」というコラムは『見知らぬ美人がツツツ……と近寄ってきたかと思うと(中略)「おっ、おっ、オレにも運が巡ってきたかな。」なんてデレデレしてはいけない。日本でモテない男は世界中どこに行ってもモテない。これは永遠不変の真理なのだ』だって。厳しい(笑)

おもしろい文章、まだまだありそうです!

原

「地球の歩き方」の代名詞ともいえる読者投稿ですが、この頃は本文にしっかりと掲載していたんですね。『私のアパートはアラ・ワイ運河に面してSeaside St.とLewers St.の間にある住所は〜』ってがっつり住所が載っている!

井上

井上

あ!私が住んでいたところと同じ住所だ!

原

え〜!?

井上

井上

最初の島流しで住んでいたところで、当時はポリスがよく来る事件の多いコンドミニアムだった(笑)

原

時代ですね……。バスの旅の章で『これら40近いバスルートのうち、ボクたちが実際に利用する路線はごく一部だ。(中略)確かにレンタカーや観光バスのツアーでまわるという手段もある。が、地元の人たちの愛用する交通機関で観光をする方が“地球を歩く旅人”にふさわしい体験だと思いません? オアフ島ではThe Busに乗ること自体が新しいハワイ体験なのだ。』まさに地球の歩き方イズムを象徴したような一節!

初版を読んでいると、この当時から劇的に変わったものや逆に変わらないものが見えてきますね

井上

井上

物価は今とは全然違いますね。これを読んでいても「食費を1日2ドルにする方法」とか書かれているし。今ではコーヒーも厳しい……。

原

食のクオリティは当時からかなり上がったなと最近よく考えます。昔はハンバーガーかステーキ、あとはプレートランチ、みたいな。選択肢も少ないし、味もはっきりいって微妙だった。

井上

井上

あとはコロナ禍以降特に顕著になってきたけれど、夜遊びよりも、朝早く起きてヨガやランニング、SUPなどで朝活しよう、といった流れが主流ですよね。この初版では「アフターダーク」というまるまる夜遊びの章があってディスコやライブスポット、今よりかなりラフな感じのルアウなどが手厚く紹介されているのもおもしろい。

原

ハワイ式人力車「ペディキャブ」なんてものまであったなんて、全然知りませんでした。

井上

井上

ペディキャブドライバーへのインタビューまで載ってる!(笑)

一方大きな町の作りはこの初版当時のままだし、ハワイらしい人の温かさや空気感、は変わっていないような気がします

原

ハワイの独特なゆったりした空気感は大きな魅力のひとつですね。ゆっくり過ぎるのも玉に傷ですが(笑)

井上

井上

ハワイアンタイム!(笑)でも昔に比べてThe Busは割と時間通りに来るようになったと思います。とはいえ、ハワイならではのおおらかな時間感覚はいまも変わらずに残っていますよね。

私はハワイのなかでカウアイ島が一番好きなのですが、おふたりの好きな場所やハワイの魅力は何だと思いますか?

井上

井上

私もネイバーアイランドだったらカウアイ島が好きです。でもやっぱりワイキキかな。ほかのエリアでもそうだけど、広く網羅するよりは狭いエリアを完全制覇したいタイプ。ワイキキのごちゃっとしている感じも落ち着くし、あのサイズ感が好きなんですよね。

原

わかります。僕もやっぱり一周まわってワイキキ、アラモアナあたりが好き。特にワイキキは家族との楽しい記憶や思い出のすべてが詰まった場所で、子供の頃はハワイ=ワイキキ・ビーチだと勘違いしていて。子供の頃はホテル着いてから「早くハワイ行こうよ!」って言っていたくらい(笑)

原

あと僕は1992年から『地球の歩き方 ハワイ』に掲載している“「ハワイ症候群」に感染した患者の皆さんへ”という導入ページに、ハワイの魅力のヒントがあるような気がしています。『本書は“ハワイ症候群”(「ハワイ大好き病」)に感染してしまった人が、ハワイで治療に専念するための手引書です。』という内容。ハワイ好きはハワイに行くことでしか得られない特別な栄養分があると思っています。

井上

井上

美しい自然や温かい人々、風や空気感はもちろんですが、そのほかにある言語化できない不思議な魅力の答えを見つけるために私たちはハワイに行き続けるのかもしれませんね。

まとめ

今回42年前に発刊された初版とともに、「地球の歩き方」と「ハワイ」の歴史をひも解きながら当時の制作者の思い、今と昔のハワイを語り合ってみた。結論は、いつだってハワイは私たちをあたたかく迎えてくれるということ。旅するハワイLOVERのため、「地球の歩き方」はこれからもガイドブックを作り続けます。mahalo!

ほかの記事もチェック!

トップへ戻る

TOP