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クロアチアはイタリアの対岸にある国。ブーツの形にたとえられるイタリアの「ふくらはぎ」あたりに広がるのがアドリア海。イストラ半島はこの海の最奥部にある。半島の内陸では森にトリュフが自生し、里ではワインが醸され、高品質なオリーブオイルが搾られる。一方、海岸線に点在する小さな町には世界遺産があり、壮大なローマ遺跡も残る。美しい緑の丘陵地を眺めながらの美食もよし、海風に吹かれてのグルメもまた旅の醍醐味だ。
イストラ半島の南端にあるプーラはギリシャ神話にそのルーツがあるという歴史ある町。ローマ時代には通商の要衝として、紀元前1世紀頃は植民都市(コロニア)として栄えていた。当時の名残は町のいたるところで見ることができる。町のシンボル円形劇場、ローマ皇帝アウグストゥスを称えるために建てられた神殿などだ。
見どころの多いプーラだが、旅のスタートに選んだ理由はもうひとつある。飛行機、バス、フェリーとクロアチアはもとより近隣諸国からのアクセスがよいこと、タクシーやレンタカーが手配しやすいという利点があるからだ。沿岸部はバスで回れるが、内陸部に入るとバスの便数は少ない。
■プーラへのアクセス
ザグレブ(首都)からのアクセス
[1]長距離バス(所要時間:約3時間30分〜4時間30分)
ArrivaやFlixBusなどの長距離バスが毎日多数運行。
[2]レンタカー・車(所要時間:約3時間〜3時間30分)
ドゥブロヴニクからのアクセス
[1]航空便(所要時間:約1時間)
夏季を中心にクロアチア航空などの国内直行便が運航。
[2]レンタカー・車(所要時間:約7時間30分〜8時間50分)
アドリア海沿を北上する長距離ドライブ。途中でスプリットなどの世界遺産やザダルなどの観光都市に立ち寄ることもできる。
近隣国・周辺都市からのアクセス
ヴェネツィア(イタリア)からのアクセス
[1]高速船・フェリー(夏季限定/(所要時間:約3時間30分〜4時間)
夏季限定だがVenezia LinesやKompasなどがアドリア海を横断する高速船を運航している。海路で国境を越える体験ができる
トリエステ(イタリア)からのアクセス
[1]長距離バス / レンタカー(所要時間:約2時間〜2時間30分)
イタリア北東部からの日帰りや周遊ルートとしてアクセスしやすい。
◾️プーラを起点にしたおすすめルート
1:プーラでレンタカーを借りる
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2:内陸部のモトヴンへ。丘の上から中腹に広がる旧市街、頂上の市壁からの眺めも絶景。秋の旅なら隣町のリヴァデでトリュフ祭りに参加しよう!
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3:アトリエが点在するグロジュニャンで、デザイン雑貨ハント
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4:ブゼットに宿泊。トリュフ三昧のディナーを堪能、秋〜冬なら早朝朝靄の風景を見学
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5:翌日は世界一小さな村として有名なフムへ
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6:沿岸部ポレチュには世界遺産エウフラシウス聖堂がある
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7:海と丘に広がる町並みが美しいロヴィニュへ
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8:プーラでレンタカーを返却
*タクシーの場合は出発時間、帰着時間、回るルートを提示して交渉する。
プーラ発、上記の内陸部だけを回りプーラ着なら半日で回れる。目安は200€〜。
*丘陵地なので体力勝負だがヨーロッパからの観光客のなかにはサイクリングを楽しむ人も多い。
トリュフはキャビア、フォアグラと並ぶ世界三大珍味。イストラ半島の中央部を東西に流れるミルナ川の流域、ブゼットやモトヴンはトリュフにとって最高の土壌。トリュフが育つブナやヘーゼルの森はまさに「トリュフの森」。黒いダイヤといわれている黒トリュフはほぼ1年中楽しめ、より香りの強い白トリュフは初秋から冬に採れる。ここでの楽しみは何はともあれトリュフハンティング。ここで紹介するのは家族経営のトリュフ農家ミロ・タルトゥフィ。トリュフの採取権を持っている事業者が催すツアーに参加してトリュフを堪能しよう!
チーズやサラミにもトリュフが練り込まれている。サラダはトリュフバルサミコ酢で!トリュフハンティングは犬の嗅覚で土中にあるトリュフを探す。「よく訓練された犬はトリュフを傷つけない。豚も探すことはできるけど食べちゃうこともあるからね」とは、ハンティングツアーを率いるミロさん。トリュフが好む木の説明をしながら、ワンコが次々と地面を引っかいて合図する。ハズレもあったものの、この日は1時間で3ヵ所からトリュフを掘り出すことができた。
ハンティングが終わるとお待ちかねの試食会。テーブルにはトリュフ入りのチーズやサラミが並ぶ。トリュフ入りのバルサミコ酢はサラダに、トリュフオイルは自家製パンに付けて食べる。メインは採ったばかりの黒トリュフを使ったスクランブルエッグ。生のトリュフが贅沢にのせられたテーブルにツアー参加者の歓声が上がる。
モトヴンの隣町リヴァデにはZigante(ズィガンテ)という大手のトリュフ加工会社のメインショップがある。ズィガンテのトリュフオイルやトリュフ塩は、クロアチアのスーパーや小売店でも販売されているほどメジャーなブランド。小さな瓶入りのものはおみやげに人気がある。リヴァデのショップでも試食をして食べ比べての買い物ができる。レストランも併設されているのでトリュフ入りパスタなどを食べるのもおすすめだ。秋にはトリュフ祭りも開催される。
イストラ半島は、エキストラバージンオリーブオイル界の権威あるガイドブック『Flos Olei(フロス・オレイ)』により、「世界最高の生産地域」に選ばれた。2026年で9度目の快挙であり、68もの生産者が選ばれていることからも、小規模高品質生産ということが窺われる。代々受け継いだ古代種を伝統製法で守り続けている工房も多く、香りや味は千差万別。テイスティングを楽しみながら、お気に入りを見つけよう。
3世代にわたって受け継がれたコールドプレス製法で最高級のオリーブオイルを製造している工房「Štefanić Extra Virgin Olive Oil」。フレッシュな香りと上品な苦味が特徴のブジャBuža、強い辛みと苦み、そして果実感が際立つビアンケラBiancheraなどオリーブの固有種をブレンドすることなく絞るので個性がきわだつ。オリーブとレモンの皮を一緒に絞ったリモリーヴォLimolivoもさわやか。サラダやカルパッチョにそのままかければ味がピタリと決まる。
イストラ半島は、南部または海岸部に広がる赤土と内陸部の石灰岩が多い白土という豊かな土壌に恵まれたワインの名産地。寒暖差の大きい気候や日の当たる丘陵地形もブドウの生産に適した点だ。ミネラルの多い赤土はタンニンのもつ力強い風味をワインに与え、固有種のテランTeranはイストラ半島を代表する赤ワインとなっている。白ワインならマルヴァズィヤMalvazijaがおすすめ。石灰岩の土壌で採れるブドウからは酸味の高いフルーティが味わいが生まれ、キリッと冷やせば清涼な喉越しのさわやかなワインが味わえる。赤でも白でも高い品質のわりにはお値段が手頃とあって、世界的な評価も高まっている。あまたあるワイナリーから毎年通いたいお気に入りを見つけてみてはいかがだろう。イタリアやフランスからもお気に入りのワイナリーに車で乗り付けて、「箱買い」する観光客も多いのだそうだ。
イストラ半島のワイナリーは、先祖代々土地を守ってきているところも少なくない。なかには1000年前のワイン壺が発見されたブドウ畑もあるとか。ベンヴェヌーティBenvenuti もそんなワイナリーのひとつ。固有種のブドウを継承し、醸造も子育てをするように、自宅の隣地で見守って育てている。そんな自慢のワインは、時間をとってたっぷり飲み比べしたいものだ。
モトヴンはイストラ半島内陸部を象徴する町。丘の斜面に沿うようにのびる町並みは独特の景観。頂上にそびえる市壁や聖ステパノ教会、13世紀に建てられた鐘楼が歴史を感じさせてくれる。
紀元前2世紀頃のローマ帝国時代にはオリーブオイルやアンフォラ(素焼きの壺)の産地として重要な地位を得ていた。市壁は12〜13世紀のヴェネツィア共和国時代のもの。ふもとから頂上へいたる古い石畳に並ぶショップやレストランをのぞきながら、のんびり歩いてみよう。まずは町の中心にある観光案内所で情報収集するのがおすすめ。頂上に着いたら市壁の中へ。観光案内所でイベントや周辺で楽しめるアクティビティなどの情報を集めよう。
標高228mの山の頂上にあり、イストラ半島の美しい町としてモトヴンと並び称されている。町はヴェネツィア共和国時代に発展し、いまも時が止まったかのようにその面影をとどめている。アーティストの町としての顔ももち、夏のシーズンになると、音楽フェスや演劇などのイベントが繰り広げられる。30軒ほどのギャラリーがあるので、気になった所に入ってみるのも楽しい。気ままにぶらぶら散策するのがこの町の楽しみ方だ。
ブゼットはモトヴン同様丘の上にある市壁で囲まれた町。中世からの歴史あるたたずまいだが、モトヴンほど観光客が多くないので、静かな散策が楽しめる。ミルナ川流域にあり周辺はトリュフの森。トリュフハンティングやグルメ旅の基点としてもおすすめだ。
人口30人ほど、世界最小の村としてギネス世界記録に登録されたことで有名になった。この村の名物はビスカBiskaという蒸留酒。ヤドリギを使ったこの蒸留酒の元祖はフムだといわれ、毎年10月下旬には蒸留酒の鑑評会も行われる。ちなみにヤドリギはケルト神話やキリスト教世界では不思議なチカラをもつ植物とされている。このお酒で永遠の生命を得られるかも?
グラゴール文字は、9世紀にスラブ語を表記するために考案された文字。クロアチアでは14世紀にラテン文字(ローマ字)を取り入れたが、フムや周辺の村では20世紀の初頭まで使われることがあったそうだ。近郊のロチ村からフムまでの約7kmはグラゴール小路として整備され、グラゴール文字の彫刻などが点在している。フムでもグラゴール文字の歴史や読み方を博物館で学べるほか、Tシャツやコースターなど、グラゴール文字がアレンジされたおみやげを売っている。
内陸部を離れてイストラ半島の沿岸部にも足を延ばそう。西岸に位置するポレチュは、はるかローマ時代からイストラ半島の中心であり、ビザンツ帝国、ヴェネツィア共和国、オーストリア=ハンガリー帝国と、さまざまな支配を受けてきた。旧市街は、ローマ時代の古代都市を土台として、さまざまな時代にわたる数多くの遺跡、歴史的建造物が残っている。
ポレチュ最大の見どころは、なんといっても世界遺産エウフラシウス聖堂。4世紀から6世紀にかけて建て増しながら造られており、初期キリスト教の文化をいまに伝えている。内部に飾られたビザンツ様式の美しいモザイクは必見だ。
エウフラシウス聖堂のモザイクは海を挟んだ向かい側、イタリアのラヴェンナの聖ヴィターレ聖堂などにあるモザイクとよく似ている。聖堂のもととなる形ができあがったのもこの時代のこと。はじめはビザンツ帝国の支配下にあったポレチュは、やがてビザンツ帝国から離脱する。このため、8世紀から始まる聖像破壊運動の影響を受けずに当時の姿が現在でも見られるのだ。
プーラで借りたレンタカー、ポレチュからプーラに戻るならば途中のロヴィニュに寄ってほしい。ここは「写真映え」で人気のリゾート地。ローマ時代にはルビニウムと呼ばれた歴史ある町だが、ヴェネツィア共和国の時代、16世紀から急激に発展した。町は島に作られた後に海峡が埋め立てられて半島となり、城壁を巡らせて要塞となった。今も残る城門にはヴェネツィアのシンボル、サン・マルコのレリーフが刻まれている。
イストラ半島は、クロアチアのなかでもまだ「知る人ぞ知る」エリア。ドゥブロヴニクやプリトヴィツェ湖群国立公園を訪れたことがある人こそ、次の旅先として強くすすめたい場所だ。トリュフの森を犬と歩き、ワイナリーを楽しみ、世界遺産に触れる。他にはない魅力を楽しんでほしい。
旅の自由度を上げてくれるのがレンタカー。国外運転免許証を用意してぜひチャレンジしてみよう。プーラを起点に内陸部と沿岸部を組み合わせれば、2泊3日でも十分に半島の魅力を味わえる。交通量も都市部ほど多くないので運転もしやすい。フランスやイタリアからの旅行者がリピートするのも納得の、グルメと風景と歴史が重なる素敵な旅。次こそはあなたもぜひ!
文:大和田聡子
写真:岩間幸司、豊島正直、どんぐり・はうす