キーワードで検索
「同じ“ブリトー”なのに、ここまで違うのか。」
ロサンゼルスのハンバーガー文化を調べている中で、“カリフォルニア・ブリトー”という存在を知った。そういえば数年前、サンフランシスコのミッション地区で、アルミホイルに包まれた巨大なブリトーを夢中で食べた記憶がある。
ハンバーガーを調べていたはずが、気づけばブリトーに辿り着いていた。
調べていくうちに見えてきたのは、同じカリフォルニア州でもサンフランシスコとサンディエゴでは”巻かれているもの”が違うということだった。今回は、カリフォルニアを代表する“南北ブリトー”の違いと、その背景を探ってみた。
※本記事は2018年の訪問記です。現在は価格や状況が変わっています。
【2018年訪問記】ミッションスタイル・ブリトー発祥地
発祥とされるのは、「タケリア・ラ・クンブレ(Taqueria La Cumbre)」をはじめとするミッション地区のタケリア(食堂)と言われている。1960年代、移民労働者たちが“短時間で腹いっぱいになる食事”として求めた結果、肉、豆、ライス、野菜を全部まとめて巻いてしまった巨大ブリトーが生まれた。
ミッション・ブリトーを初めて持った時、まず驚くのはその重さ“ずっしり感”だ。軽食というより、父ちゃんの弁当級である。
半分に切れば、中からライス、豆、肉、サルサがぎっしり。しかも、どこを食べても味のバランスが崩れない。ご飯だけ余ることもなければ、最後に豆だけ残ることもない。巨大なのに妙に完成度が高いのだ。
さらにアルミホイルで包まれているから持ち歩きやすい。忙しい労働者が片手で食べられて、しっかり満腹になる。これは単なるファストフードではなく、“都市労働者の燃料”として進化した食べ物なのかもしれない。
今年1月に訪れたサンディエゴでは、タコス三昧だったこともあり、結局ブリトーを食べる機会を逃してしまった。帰宅後に調べる中で知ったのが、「カリフォルニア・ブリトー」という存在だった。
ライスの入っていないブリトー?しかも代わりにフレンチフライ?
正直、最初は「それ、もう炭水化物の暴力では…」と思ったが、写真を見ると妙にうまそうなのである。
最大の特徴は、ライスや豆の代わりに入る、揚げたてのフレンチフライ。半分に切れば、肉汁と一緒にポテトがポロポロはみ出して落ちてくる。肉はカルネ・アサダ(牛肉のグリル)が主流で、味付けはいたってシンプル。その分、肉の香ばしさとポテトの塩気がストレートに来る。
ミッション・ブリトーが“緻密に組み立てられた一体感”なら、こちらはもっと豪快で素直な食べ物だ。独断で思い切って言えば、この違いはカリフォルニア州南北の空気感そのものかもしれない。
サンフランシスコは金融やテック産業を背景にした都市型の街。効率や合理性が重視され、食にもどこか「機能性」がある。一方のサンディエゴは、ミリタリーシティでありながら、海と隣り合わせの開放的な空気を持つ街。サーファーや若者文化も強く、「腹いっぱい食って遊ぶ」空気のなかで進化したブリトーにも見えてくる。
[チップス&サルサのお供]
メキシコ最古のラガー「ビクトリアビール」グラスは分厚いミルクシェーク用なのがご愛嬌(微笑)
もしミッション・ブリトーが「働く人のための食」だとすれば、カリフォルニア・ブリトーは「遊ぶ人のための食」と言ったら少々大袈裟だろうか。さらに面白いのは、サンディエゴがメキシコ国境に近いという点だ。両国の食文化が交差する中で、フライドポテトまで巻き込んじゃった“アメリカらしい豪快さ”がある気がする。
一方、ミッション・ブリトーには、移民コミュニティの中で育まれた「実用性」。短時間で、安く、しっかり満腹になること。その思想が、あの巨大ブリトーの中に詰め込まれている。同じカリフォルニア州でありながら、二つのブリトー文化が存在するのは、この土地のユニークさ。
サンディエゴで食べ損ねたカリフォルニア・ブリトー。後日、サンフランシスコのポーク・ガルチで提供している店を見つけ、ようやく実食することができた。
結論から言えば、どちらも“あり”。焼肉とご飯か。ステーキとフライドポテトか。
ミッション・ブリトーは、最後まで計算された満足感。一方のカリフォルニア・ブリトーは、もっと豪快で、ジャンクなうまさがある。
どちらも完成されたカジュアルグルメで、優劣では語れない。ただ、食べる街が違えば、ブリトーもこう変わるのかと妙に感心してしまった。日本の面積より一回り大きいカリフォルニア州を旅するなら、ぜひこの二つを食べ比べてみてほしい。同じ“ブリトー”という名前を持ちながら、中身には、街の空気や暮らし方までぎっしり詰まっていた。
ハンバーガーの話は、またいつか。
■El Super Brito San Francisco
住所:1200 Polk St, San Francisco, CA 94109
電話番号:415-771-9700
営業日:毎日10:00〜22:00