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ナパとソノマ。サンフランシスコから日帰り圏の定番観光地。先日アテンド兼コーディネーターとして両地域を巡りました。外で待機する時間が長かったからこそ、施設の中では見えない土地の空気や人々が見えました。ワインを一滴も飲まずに感じたのは、隣り合う二つのワインカントリーに流れる思想の違い。門前の小僧なりに考えてみました。
ナパバレーは、マヤカマス山脈とバカ山脈に挟まれた南北約48kmの細長い盆地です。南のサンパブロ湾から流れ込む海洋性の霧がカルネロス周辺を冷やし、北へ向かうにつれて霧の影響は薄れ、強い日差しとともに気温が上昇します。夏場の大きな寒暖差は凝縮感のあるブドウを育み、ナパを代表するカベルネ・ソーヴィニヨンや上質なシャルドネを生み出す世界屈指のワイン産地を支えています。中心都市ナパから、美食の町ヨントビル、歴史あるセントヘレナ、温泉地カリストガ。北上するにつれて谷幅が狭まっていき、景色に落ち着きと風格が増していくように感じられます。
コーディネーターは、待つことも仕事です。ナパバレー・ワイントレインで、ゲストを見送った後、約3時間待機。クラッシックな車両は鉄道王国時代のアメリカを体験。無駄のない導線や洗練されたサービスは完成された観光ビジネスとして人気を呼んでいます。また、オーパスワンではサロンで待機。改修工事を終えたばかりの前庭はまだ若々しかったけど、いずれ周囲のブドウ畑と見事に調和していくだろうと設計思想が、世界ブランドの品格と細部まで計算された美意識を感じました。
■ワイントレイン
住所:1275 McKinstry St, Napa, CA 94559
電話番号: 707-253-2111
■オーパスワン
住所: 7900 St Helena Hwy, Oakville, CA 94562
電話番号: (707) 944-9442
URL:https://www.opusonewinery.com
ナパの西側に広がるソノマカウンティは、ナパカウンティを大きく上回る広大な地域です。太平洋沿岸から内陸まで多様な地形を抱え、太平洋から流れ込む冷たい風と霧の影響で沿岸部は冷涼となり、ピノ・ノワールやシャルドネの名産地として知られています。一方、内陸ではカベルネやジンファンデルなど力強い品種が育まれます。中心地ソノマは歴史あるプラザを囲む素朴な街並みが魅力で、北のヒールズバーグは洗練されたショップが並ぶ人気エリア。ロシアンリバー周辺にはカウンターカルチャーの名残を感じる自由な空気が今も残っています。
ソノマでの待機時間は、ワイナリーごとの個性を静かに感じる時間でした。バイオダイナミック農法で知られるベンジガーでは、自然と共生する豊かな生態系が敷地全体に広がり、小さなワイン村のような温もりがありました。シャトー・セント・ジーンでは古城を思わせる庭園がフランスにいるような優雅な気分になり、セント・フランシスでは雄大な山並みを背景にスタッフが気軽に声を掛けてくれる温かな雰囲気が印象的でした。どの場所にも肩肘張らない、人と土地の近さが感じられました。
■ベンジンガー・ファミリーワイナリー
住所:1883 London Ranch Rd, Glen Ellen, CA 95442
電話番号:707-935-3000
■シャトー・セント・ジーン
住所: 8555 Sonoma Hwy, Kenwood, CA 95452
電話番号:707-257-5784
URL:https://www.chateaustjean.com
■セントフランシス
住所:100 Pythian Rd, Santa Rosa, CA 95409
電話番号:888-675-9463
URL:https://www.stfranciswinery.com
私なりに二つのワインカントリーを表すなら、「ナパは“洗練”を磨いた土地、ソノマは“多様性”を育てた土地」だと感じました。
ナパでは、景観や建築、サービス、ブランド戦略が、訪れる人すべてに同じ完成度の体験を提供する「美学」が徹底されている。ワイナリーというより、一つの完成された観光体験の空間として設計されているように感じました。
一方ソノマは、広大な土地と多様な気候風土を背景に、造り手がそれぞれの土地と向き合いながらワインを育てている。そこには統一されたブランドよりも、地域ごとの「哲学」があるように見えた。
両者を比べると、ナパは“磨き上げることで完成させる場所”、ソノマは“自然と共有しながら広がっていく場所”という違いかもしれません。
ワインカントリーを巡りながら、結局ワインは一滴も飲まなかった。しかし待ち続けた時間の中で見えてきたのは、隣り合う二つの地域に流れる異なる思想。資本が築き上げたナパの美学と、土に根差して生きるソノマの哲学。その違いこそが、この地を何度訪れても飽きさせない理由なのかもしれない。
次回ワインカントリーを訪問する機会があった時、是非この両域を訪れ比べてほしい…。
ここでようやく乾杯!