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アメリカ・イエローストーン国立公園で、地球の偉大さを感じる!

美丸(Mimaru)

美丸(Mimaru)

アメリカ・カリフォルニア州特派員

更新日
2020年8月15日
公開日
2020年8月15日
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間欠泉であるオールド・フェイスフル・ガイザーにいるバイソン

アメリカ合衆国は、豊かな発想力で生活の中のさまざまなモノやしくみを生み出してきました。最もすばらしいアイデアのひとつは「国立公園制度」と言われています。1872年にイエローストーンは世界初の国立公園となり、1978年にはユネスコの世界遺産にも登録されました。いまや、押しも押されもせぬ世界を代表する国立公園となったイエローストーン。アメリカのサンフランシスコ在住の筆者が初心者向けのスポットを中心に、2020年6月に旅したレポートをお届けします。

【はじめに】2020年8月13日現在、観光目的の海外渡航は難しい状況です。『地球の歩き方ニュース&レポート』では、昨今の世界情勢をふまえ観光地情報の発信を抑制してきました。しかし、2020年5月31日で「期間限定の電子書籍読み放題サービス」が終了したこともあり「近い将来に旅したい場所」として、世界の現地観光記事の発信を2020年6月以降、再開することにいたしました。

世界各地のまだ行ったことのない、あるいは再び訪れたい旅先の詳しい情報を入手して準備をととのえ、新型コロナウイルス禍収束後は、ぜひ旅にお出かけください。安心して旅に出られる日が一日も早く来ることを、心より願っています。

自動車での入園と「オールド・フェイスフル・ガイザー」

勢いよく噴き出す間欠泉

イエローストーン国立公園は車がなくても各スポットを見学できたのですが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため現在ツアーは運休中。そのため今回はレンタカーで園内を巡りました。道路はループ状に整備されており、とても走りやすくなっています。

ルートは映画でも有名な「デビルスタワー(Devils Tower National Monument)」を経由。ワイオミング州のコーディ(Cody)にある東口(East Entrance)の入口から入園しました(自動車での入園は$35かかります)。
園内は、5つの地域(カントリー/Country)に分かれています。宿泊のキャビンは、最も施設が整っているガイザーカントリー(Geyser Country)にあります。ここだけでも十分楽しめるほどたくさんの間欠泉やトレイルコースなどの観光スポットがあります。時間的な制約がある場合もここを拠点にするといいでしょう。

園内で必見なのが、世界一有名な間欠泉「オールド・フェイスフル・ガイザー(Old Faithful Geyser)」。噴出時間の予測が90%の確率で当たる“昔からの律儀者(Old Faithful)”とも言われる間欠泉です。
間欠泉を囲むようにしてベンチがあり、時間になるとショータイム。ボフッ……ボフッ……と前触れの小さな噴出が観客をじらします。数分続いたあとの大きな噴出からシュッシュー!と10〜15分のメインイベントが開始。一瞬にして青空は真っ白なミストにおおわれます。風向きによっては全身しっとり、カメラのレンズも濡れてしまいます。やがてシュルシュルと小さな噴出になり、全員で「ブラボー!」と拍手喝采のスタンディング・オベーションが起こります。滞在中に3回観たのですが、朝昼夕それぞれにさまざまな表情を見せてくれる律儀者です。

また、間欠泉のある地帯「グランド・プリズマティック・スプリング(Grand Prismatic Spring )」は、自然界の鮮やかな色がすべてここに集まっているのじゃないかと思うほどインスタ映え間違いなしのスポットです。撮影ポイントのオーバールック・ポイントからは噴出の勢いがすごすぎて全景を捉えることはなかなか難しいので、少し離れることをおすすめします。

新たな間欠泉エリア「ノリス・ガイザー・ベイスン」

新しい間欠泉が点在するエリア

園内の間欠泉で最も活発な活動を見せているのが「キャニオンカントリー(Canyon County)」の「ノリス・ガイザー・ベイスン(Norris Geyser Basin)」。最近になって新しい間欠泉が見つかり、学術的にもホットスポットになっています。

イエローストーン自体が北米最大の火山地帯で、この火山帯の下の北米プレートは南西方向に年間約4cmほど移動しているそうです。また、イエローストーンのかなり広範囲で土地が隆起していることがわかっており、2013年のユタ大学の調査では縦90km、横30km、地下10kmに世界最大のマグマ溜まりが発見されたとのこと。継続的な調査は1970年頃から始まっていますから、いずれまた新しい情報が出てくるでしょう。

この地域ではトレイルがおすすめです。Porcelain Basin trail(0.8km)を歩きましたが、時間があれば南側のBack Basin Trail(2.4km)も歩いてみるといいでしょう。歩き始めてすぐに、フューマロウル(Fumaroles/噴気孔)があり、勢いよくミストが吹き出しているので、通ると全身がしっとりします。

新しい間欠泉がある熱水地帯なので立ち枯れた木々が生々しく、青空に焦げた木々は地球の創造を想起させます。このエリアは地表温度が100度を超えるような場所もあるそうなので、必ず歩道だけを歩いてください。セルフィーで足を踏み外してしまったりしないよう十分に気をつけましょう。

散策中、突如ドドドッ!と地響きがして、少し地面が揺れました。地震の初期微動だと思い慌てて頭を押さえ身構えたのですが、園の係りの方が「スティーム・ボート・間欠泉(Steamboat Geyser)」方向を確認して、通常の仕事に戻っていました。あとでわかったことですが、噴出時間データに載る規模の噴出が起こっていたそう。園内には、1日数回温水を噴出するガイザーがさまざまなところにあり、目の前で突然噴出が始まることもあります。頭から熱水を被って大火傷しないか!? 心配で足がすくんで動けないこともありました。

また、少し離れると立ち入り禁止区域になります。写真撮影は、後ろに下がるよりも噴出の合間を狙っての撮影がおすすめです。グランド・プリズマティック・スプリング(Grand Prismatic Spring )の全景の写真は、ほとんどこのエリアから撮られています。この日は風がなく、湯気の切れ間がなかったので、残念ながら全景を捉えることはできませんでした。

ノリス間欠泉エリアに来ると“地球が生きている”ことが体感できる貴重な体験ができます。

■間欠泉の大規模な噴出データ
・URL: https://geysertimes.org
・URL(参考資料): https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/3694/

隠れたおすすめスポット「イエローストーン大峡谷(GrandCanyonofYellowStone)」

荒々しい岩肌の大峡谷

園内のほぼ中央に位置する「キャニオン・ビレッジ(Canyon Village)」には、「イエローストーン大峡谷(Grand Canyon of Yellow Stone)」があります。間欠泉が有名なイエローストーン国立公園ですが、あまり知られていない大峡谷も見ものです。ほかのカントリーとはまったく別の光景を見ることができ、広大な公園の奥深さを感じます。

グランドキャニオンにほど近いサウス・リム(South Rim)にあるアーティスト・ポイント(Artist Point)から見る滝「ローワー・フォールズ(Brink of Lower Falls/94m)」やノース・リムからの滝「アッパー・フォール(Brink of Upper Falls/33m)」は、見逃せません。そそり立つ岩から見下ろすような場所もあり、「警告! 谷に落ちて死亡する事故が起こっています……」と日本語でも書いてあるので、高所恐怖症の方はくれぐれも気をつけて見学してください。ここを見ると世界遺産の登録理由でもある「地球の歴史」を垣間見ることができます。

湖や温泉、川が分かれるスポットなどさまざまな見どころ

その名にふさわしい色のサファイア・プール

園内にある湖の中(Big Core)や湖面から湯気が上がっているところは、その水が熱水(Hot lake/Hot Cascade)であることがわかります。なかには「ボイリング・リバー(Boiling River)という温泉も存在します。

ほかにも地面から突起したコーン(Cone)がそのまま固まってしまった「リバティ・キャップ(Liberty Cap)」や化石になった木(Petrified Tree)、泥水泉が湧く「マッド・ポット(Mud Pot)」など、なんとも不思議な景色も広がっています。
園内の滝は17ヵ所、湖は35ヵ所。水流の分岐点である「大陸分水嶺(Continental Divide)」は3ヵ所あります。分岐点のひとつであるアイザ・レイク(Isa Lake)では東西に分かれて水が流れており、地球の背骨のような場所です。残りの2つは実際に分れ目を見ることはできず、道路脇の表示のみになっています。

それらのスポットのそばには必ず名称の表示があるので、それを含めて写真に収めておくと再訪時の資料になりますが、図鑑になりそうなくらい膨大な見どころがあり、その多さに改めて驚かされます。限られた滞在日数で効率よく園内のスポットを巡るには、見学場所の優先順位を日没時間も考慮したルートで決めておくことが重要です。

園内でのマナーと注意点

動物の撮影にも細心の注意を!

園内では、毎年5月末から9月初めの混雑ピーク時には交通渋滞が発生します。また、バイソンなど野生動物の群れが車道を歩いていたり道路を横断したりすることでも渋滞が起こります。イライラせずに、シャッターチャンスなので車内からいっぱい写真を撮りましょう。気分はまるでサファリパークです。車道の路肩に広いスペースが設けられている部分もあるので適宜利用しましょう。草原では熊や鹿、エルク(ヘラジカ)など、2020年は人が少なかったのでたくさんの動物を見ることができました。

ただし、歴史家であるリー・ホイットルセーが「イエローストーンはリゾート地でも動物園でもない(中略)公園内では常に死と隣り合わせだ」と語っているように、園内での動物との距離には注意しなければなりません。世界遺産に選ばれた理由に、イエローストーンは固有の生態系をもち、絶滅危惧種が多く生息していることがあげられています。狼のように、生態系を守るために人為的に放たれた動物もいますが、基本的には自然の生態系のなかで動物たちは生きています。来訪者は、その中にお邪魔していることを常に意識しなければなりません。自然界でもソーシャル・ディスタンスを守らなければならないことを今回の旅であらためて認識しました。

基本的にすべての動物とは、最低3m(10フィート)以上(かわいいリスであっても狂犬病を持っている場合があるため)、バイソンやビッグホーンシープ、鹿、エルク、ムースなどの大型動物は23m(25ヤード)、熊や狼からは91m(100ヤード)の距離が必要です。

ゆったりしているようでも動物は俊敏です。道路脇から眺めていて気がついたらすぐ後ろにバイソンがいた!……といったハプニングがあるかもしれません。万が一距離が近くなってしまった場合は姿勢を低くしてゆっくりと、できれば風上の方に移動してください。園内で人間が野生動物に襲われることは実際にあり、ニュースにもなっています。今回の旅でも実際に野生動物に近づきすぎてしまって肝を冷やす場面がありました。

■イエローストーン国立公園内の注意事項
・URL: https://www.nps.gov/subjects/watchingwildlife/7ways.htm
・URL(参考資料): https://www.nationalparkstraveler.org/2020/06/california-woman-hoping-bison-closeup-got-gored-return-yellowstone

イエローストーン国立公園の歴史と現在の状況

南側の出口にある看板

1804年に当時の大統領の命で組成されたルイス・クラーク探検隊は、未開の地であったアメリカ大陸を調査し、1年半かけて大陸横断に成功。帰路の1807年、探検隊のひとりの好奇心からか別のルートをとり、白人で初めてイエローストーンを発見しました。時は過ぎ1800年代後半に自然保護の必要性がうたわれはじめ、画家や写真家とともに新たな探検隊を組織し、イエローストーン周辺の調査が開始されました。
しかし天候や南北戦争の影響で調査は中断。調査の再開を目指して、反対派が多い議会で写真と絵画による公園法制定のプレゼンテーションが行われました。税金の無駄遣いと揶揄されていましたが、結果は大逆転。1872年3月1日にユリシーズ・S・グラント大統領が公園法に署名し、イエローストーンは世界初の国立公園になりました。
園内を巡るなかで悠久の大自然を満喫するとともに、開拓者のスピリッツと探究心に思いを馳せていました。

2020年8月現在、公園内のレストランは閉鎖中。施設内はすべて人数制限とソーシャル・ディスタンスが取られている状況です。食料はカフェで持ち帰りを頼むか、ジェネラルストアで購入する必要があります。園内のビジターセンターも完全に閉まっており、ツアーも中止。園内はほとんどWi-Fiは使えませんから、地図で目的地を探すことになります。今回の訪問では1日平均の走行距離は約280km。ほかに誰もいない野原でマスクを外したとき本当に空気がおいしく、1日も早くマスクの要らない日がくることを祈らずにはいられませんでした。

行ったばかりなのにまたすぐにでも行きたくなります。2020年はタワールーズベルト(Tower Roosevelt)周辺工事による道路封鎖で、公園の北東部には残念ながら行けなかったので、なるべく早く再訪したいと思います。訪問するすべての人にとって、必ず一生の思い出になるのがイエローストーン国立公園。安心して旅行ができるようになったら、ぜひ足を運んでみてください。決して期待を裏切らない自然がそこにはあります。

■イエローストーン国立公園
・URL: https://www.nps.gov/yell/index.htm
・URL(日本語案内): https://www.nps.gov/yell/planyourvisit/upload/Translate2012_JAPANESE.pdf
※最新情報は公式ウェブサイト(URL)などで確認してください

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※当記事の観光情報は、2020年8月13日現在のものです。

〈地球の歩き方編集室よりお願い〉
2020年8月13日現在、アメリカへの日本からの観光目的の渡航はできません。渡航についての最新情報、情報の詳細は下記などを参考に必ず各自でご確認ください。
◎外務省海外安全ホームページ
・URL: https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
◎厚生労働省:新型コロナウイルス感染症について
・URL: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html

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