旅人を包み込む、バヌアツ共和国の夕景
2023.9.6
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執筆者:大西由美子
インド・デリー在住。開発コンサルタント会社アイ・シー・ネットでインドを中心に国際協力のプロジェクトやビジネス・コンサルティング事業に従事する。2004年からアイ・シー・ネットで勤務。南アフリカの農村開発に1年半従事したのち、インドへ異動。2006年から4年間は旧JBIC・JICAのインド事務所でODA事業に携わる。2011年頃からはODA事業のモニタリングや評価の業務をメインで担当。ビジネス・コンサルティング事業部でインド進出を目指す日本企業の支援も行っている。
インドの野生動物というと、象やクジャクの姿が頭に浮かぶ人が多いのではないかと思います。実は、ウミガメやジュゴン、フラミンゴといった動物も生息していることをご存じでしたか? 今回はインド南部のタミル・ナド州にいるちょっと意外な動物たち、そして彼らに遭遇できる現地のエコツーリズムスポットをご紹介します。
目次
タミル・ナド州の中央東沿岸部に位置するポイント・カリマー野生生物保護区は、これまで現地の人以外にあまり知られていませんでした。ここには、「ブラックバック」というインドやネパール、パキスタンにいる絶滅危惧種の偶蹄類が生息しています。かつては国内に何万頭もいたとされていますが、立派な角を目当てにした乱獲や、生息地の草原の破壊により、その数は激減しました。
この保護区ではブラックバックの保護に力を入れており、彼らが餌として好む草の生育を阻害する侵略的外来種の植物を除去し、生態系を整えることで、ブラックバックの自然繁殖と個体数の増加を支えています。保護区内はコミュニティが運営するジープで入場可能です。
ここは、ヒメウミガメの生息地でもあり、毎年多くのウメガメが砂浜に産卵にやってきます。夜中、砂浜に産卵されたウミガメの卵は、地域住民や漁師の協力のもと回収され、専用の孵化場に移されます。後日、孵化したウミガメは海に放流されます。
さらに、この付近では塩の生産もしており、保護区を取り巻くように位置する塩水の湖には、季節になるとフラミンゴの大群が訪れます。ほかにも数多くの野鳥が生息しており、野生動物が好きな方には満足度いっぱいの保護区です。
次に紹介するのはポイント・カリマーから車で3時間半ほど南下した場所にあるコミュニティ・エコツーリズムのサイト、カランカドゥ・マングローブ。ここは南・東南アジアで初めてユネスコの海洋生物圏保存地域に認定されたマナー湾海洋国立公園の一部をなす場所です。
まさかインドにジュゴンが生息しているなんて、皆さんご存じでしたか? ウミガメ同様、漁網に絡まったジュゴンはかつて、網を守ることを優先して殺されてしまうことがありました。近年は沿岸部で漁業を営む漁師への啓発活動や、漁網にかかったジュゴンを助ける人を表彰するなどの取り組みが地元で行われており、ジュゴンは地域住民から守られる存在になりました。
またこの地域では、ジュゴンの餌となる海草の植生回復をしているため、幸運な方は遠くにジュゴンの姿を見ることができるかもしれません。ジュゴンに遭遇できなくても、マングローブを小型のモーターボートやカヤックで回遊したり、地元の女性が食堂で調理するこの地域特有のシーフードを昼食に食べたりと、十分楽しむことができます。ちなみに、ここで食べられるエビのカツレツとカニのスープは絶品です!
さらに沿岸部を南下すると、大昔はスリランカとつながっていたということで有名な町ラメシュワラム(Rameshwaram)に着きます。ここは数多くの寺院や海の上に架けられた鉄道橋が有名ですが、ここにもコミュニティが主体となって運営するエコツーリズムのスポット、クルスダイ島があります。
この島には、パンバン橋を降りたビベカナンダ記念センターの横にある桟橋からボートで行くことができます。この島の周辺ではサンゴ礁の保全活動が行われているほか、季節によってスノーケリングやスキューバダイビング、SUP(スタンドアップパドルボード)を体験することもできます。
さまざまな野生動物に出合えるエコツーリズム、いかがでしたか? 今回はインドの沿岸沿いのエコツーリズムのスポットをご紹介しましたが、タミル・ナド州には、内陸や山間部にもまだまだ魅力いっぱいのエコツーリズムスポットがあります。地元の人や行政が担う保全活動の話を聞きながら、自然界の貴重な贈り物を満喫してみてはいかがでしょうか。
トップ画像:iStock
監修:地球の歩き方
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