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ホンジュラスのおすすめスポット5選!マヤ文明の神秘や美しいカリブ海を満喫
2024.11.25
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中央アメリカのホンジュラスは、日本人にとっての旅先としてなじみは少ないものの、マヤ文明の遺跡観光やコーヒーの産地として、旅好きな人に知られています。最も有名な観光地であるコパン遺跡は、1980年に世界遺産登録され、隣国グアテマラのティカルと並ぶマヤ文明の重要な遺跡です。雨風で劣化しにくい凝灰岩を多用し、細密な文様や文字が当時に近い状態で保存されているのが特徴。そんなホンジュラスは、実は日本と同じ環太平洋火山帯に位置していて多くの温泉が湧いているのですが、そのほとんどが知られていません。
今回は、コパン遺跡のすぐ北にある、ホンジュラスで一番の温泉「ルナ・ジャガー温泉」を紹介します。
今回の旅の出発地となる町、コパン・ルイナスはホンジュラスの西部に位置し、隣国のグアテマラの国境からわずか12kmの場所にあります。ホンジュラスの首都テグシガルパからは車でも片道 8 時間以上かかるため、ツアーなどで訪れる場合はグアテマラから入国するケースが多いようです。
町の名前に含まれるルイナスは現地の言葉で遺跡を指し、文字通り「コパン遺跡の町」として世界中の旅人を受け入れています。
5~9 世紀にかけて栄えたとされるコパン遺跡には、神殿や球戯場、歴代の王の石像彫刻が残り、現在ではホンジュラス最大の観光地となりました。ホンジュラスと聞くと治安が心配な方も多いと思いますが、コパン遺跡に関しては国が威信をかけて治安を維持しているため、都市部と比較しても安全に観光を楽しめます。
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目指す温泉の名はルナ・ジャガー(Luna Jaguar)。ルナはラテン語で月の意味、ジャガーは中南米に生息するヒョウに似た動物です。スペイン語ではルナ・ハワールと発音し、英語圏ではジャガー・ムーン温泉とも呼ばれます。コパン王朝の隆盛期が始まった第10代国王の名前だそうです。
マヤ遺跡をモチーフにした秘境感あふれる佇まいの温泉で、コパン・ルイナスの北約20kmの場所にあります。温泉へ向かうための山の谷間を縫うように走る道は、大半が未舗装でぬかるんでいます。雨季には通行できない日もあるとのこと。
温泉があるのはアグア・カリエンテ村。アグア(水)とカリエンテ(熱い)で、まさに温泉という名の村です。かつては地元の方だけが利用するような素朴な施設でしたが、15年ほど前に今の施設が誕生したとのこと。受付で入場料金を払い、男女別の脱衣室で水着に着替え(水着は施設でも販売)、つり橋を渡ると温泉エリアの始まりです。苔むした石像脇のトンネルを通り抜けると、次第に探検気分が高まります。
トンネルの先に現れるのは温泉の川です。右手の高台から左手の川へと、滝のように猛烈な勢いで流れているところを、飛び石伝いに渡っていきます。つり橋、トンネル、飛び石などの小道具は、非日常的な空間へといざなう巧みな仕掛け。順路はマヤ数字で示されていますが「黒丸ひとつが1、横棒1本が5」を表しているので、慣れればすぐに理解できます。(すぐ上の写真は2、冒頭の写真は12を表しています)
棚田のような大きな露天風呂、洞窟風の浴室、真下から猛烈な温泉蒸気が立ち昇るベンチなど、多彩な演出が心をつかみます。峡谷に築かれた露天風呂はいずれも周囲の景観に溶け込むような造りで、日本の露天風呂と見紛うばかり。見上げれば一面に巨木が茂り、聞きなれない鳥の鳴き声も聞こえ、森林浴を兼ねての入浴に気持ちが安らぎます。
源泉は90℃以上の高温ですが、水を引き込む量を調整しているのか浴槽ごとに湯温が異なるため、好みの場所を探して浸かることができます。
さらに上段へと進むと、猛烈な噴煙とともに、大量の温泉が滝のように流れ落ちています。噴煙地帯を眺められる場所にも適温の露天風呂がひとつあり、海外の温泉のなかでこれほどまでに「視覚的要因」を重視した露天風呂に出合えるのは珍しいです。
最上段まで到達すると、源泉の湧き出し口に着きます。三方から猛烈な勢いで湧き出していて、どれくらいの湯量なのか見当もつきません。すると、コパン遺跡の博物館で見た赤い神殿のような構造物が忽然と現れ……! まるで、密林をさ迷い歩いた末に神殿にたどり着いたような演出です。
順路は周遊型なので、上りとは異なる道で斜面を下ります。広大な園内を散策し、気に入った浴槽に浸かって2時間半ほどを過ごしましたが、ヨーロッパから来たという3つのグループに出会っただけで、どの浴槽もほぼ貸切状態。帰り際に尋ねると、「土日はかなり混みますが、平日はこの程度」との返事でした。
2023年に訪れた際、「営業開始が14時というのは遅いのでは? もっと早い時間から営業すれば日本人も来やすいと思う」と声をかけると、「自然のなかにあるので、朝から落ち葉や折れた枝を掃除すると、午後になってしまう。掃除が済めば14時より前でも入場できる」とのこと。確かに園内はきれいで、ゴミなど落ちていません。なお、今回の執筆に際し、施設のウェブサイトを確認してみると、筆者の提案を参考にしてくれたわけではないでしょうが、営業開始時刻は正午に繰り上がっていました。
「アグア・カリエンテ村にはふたつの温泉がある」と古い資料に書かれていて、気になっていました。しかし、いくらウェブサイトで調べてもルナ・ジャガー以外の情報は見つかりません。現地で尋ねてみると……
ルナ・ジャガー温泉の豊富な湯量が敷地外のマナグア川へ注ぎ、90 ℃の源泉が川の水と混ざりあい入浴に適した温度となるため、地元の方はそこをもうひとつの温泉として利用している、ということのよう。特別な名前はなく、単にアグア・カリエンテ(温泉)と呼んでいて、それが村の名になったようです。
施設内のつり橋から100mほど上流に別のつり橋があり、村人はこれを渡って温泉を楽しんでいます。川の片側に大きめの石を敷き詰めて、簡易な「浴槽」が作られていました。大雨で流されるたびに作り直すそうで、ルナ・ジャガーに着いたときは無人でしたが、帰る頃には多くの村人が入浴していました。
かつて温泉が川原へ流れ込んでいた場所には、白と黒の縞模様の巨大な石灰華ドームが形成されています。長年にわたる温泉成分の堆積物で、とても貴重なものですが、目を留める人はほとんどいません。
温泉からの帰路、森で気になる実を見つけました。「マラカの実」と呼ばれる卵型の果実で、現地で尋ねると、実のなかにある綿毛を腐らせて取り除き、乾燥させて種子や小石を入れるとマラカスになるのだそう! これまでにさまざまな国を旅してきましたが、マラカスが木の実からできるとは知りませんでした。
今回筆者が旅の拠点としたコパン・ルイナスの町は、世界中からコパン遺跡への観光客が訪れるため、町の規模が小さいにも関わらず多くの宿泊施設があります。筆者はコロニアルなホテル「マリーナ・コパン」に2泊し、温泉巡りと遺跡の観光を楽しみました。
朝食はビュッフェスタイルですが、メインのおかずは皿で提供されます。写真の上から時計回りに、イラーチャ(細切り肉と野菜のトマト煮込み)、フリホーレス(甘くない黒豆ペーストに炒め玉ねぎなどを混ぜた塩あんこ)、牛肉とホルモンの煮込み、揚げバナナです。
塩あんこは見た目も舌触りも日本のあんこに似ていますが、甘くありません。最初こそとまどいましたが、中南米を旅していると比較的よく目にします。慣れるとおいしく感じたので伝えると、「塩あんこが好きなら、ホンジュラスで暮らせるよ!」と笑顔で返されました。
翌日の昼食は下町の市場食堂でとりました。いくつものお店がフードコートのように並んでいますが、現地ドライバーおすすめの店でチキンスープを注文しました。鶏の塊肉と大きく切ったジャガイモ、カボチャが具材でライスが添えてあり、スープに入れて食べるとのこと。とてもおいしくて約250円! 大満足です。
今回はあまり知られていないホンジュラスにある温泉を紹介しました。湯量も豊富で景観も抜群! 最高です。ホンジュラス・コパン遺跡への旅行を計画している際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
ルナ・ジャガー・スパリゾート(Luna Jaguar Spa Resort)
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