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モンカダ通りにある13〜15世の邸宅を改装して1963年に開館した。ピカソの少年時代や初期の作品を中心に展示し、天才画家のルーツを知るには欠かせない美術館だ。油彩、素描、版画、陶器が年代順に展示され、ピカソの作風の変遷を知ることができる。まず、マラガ、ア・コルーニャ時代の少年とは思えないデッサン力に驚かされる。なかでも『初聖体拝受』『科学と慈愛』は見逃せない。さらに、バルセロナ時代初期の美術学校でのデッサンや油彩もすばらしい。「四匹の猫」(→P.89)のメニューや、初個展に出品されたパステル画やデッサンからは、当時のバルセロナのファッションを見てとることができる。続いて、1900年に初めてパリへ行き、ルーヴル美術館の名作や新しい動き、あるいは万国博覧会などに触れたあとの作品では、それらに影響を受けながら自分のスタイルを模索している様子がうかがえる。例えば、点描法やゴッホのような色彩を用いた『小人の踊り子』や『マルゴット』を観れば明らかだろう。なお、1904年にパリに住みついてからの「青」「バラ色」「古典主義」「キュビスム(立体主義)」の時代の作品は残念ながら少ないが、友人の妻を描いた『リカルド・カナルス夫人の肖像』のようによく知られた作品や、キュビスムによる『キューブな人物像』『果物入れを持つ人物』などが展示されている。このほかに重要なのは、76歳のときに描かれた『ラス・メニーナス』と『鳩』の連作。南仏カンヌの広大な邸宅で制作されたこれらの作品は、マドリードのプラド美術館にあるベラスケスの有名な作品を扱った前者といい、子供の頃から慣れ親しんだハトを描いた後者といい、地中海で結ばれる故国スペインへの思いがピカソの心に強くあって描かれたものだろう。と同時にいつも変わり続けるピカソの表現の探求が、連作によって明らかにされている。