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アフリカの島国マダガスカルで“経済の大動脈”を創るJICAや日本企業の取り組みとは?

JICA都市・地域開発グループ

JICA都市・地域開発グループ

国際協力機構

更新日
2024年6月25日
公開日
2024年6月25日
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独立行政法人 国際協力機構(JICA)社会基盤部都市・地域開発グループ第二チーム 水上 貴裕「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、マナウ アーナ(こんにちは)! JICAの水上です。第8回の今回は、いよいよアフリカへの支援をご紹介! 豊かな自然やユニークな動植物でおなじみの島国マダガスカルにおける、未来の経済大動脈開発を支援する、日本の企業やJICAの取り組みをご紹介したいと思います。

ユニークな自然環境で知られるマダガスカル。どんな国かご存じですか?

人類が定住する5大陸の中でも、日本人にとって最もミステリアスな印象のあるアフリカ。

なかでも今回ご紹介するマダガスカルは、54ヵ国で構成されるアフリカの中でも6ヵ国しかない島国のひとつです。同名のアニメ映画などでもおなじみのワオキツネザルやアイアイ、カメレオン、バオバブといったユニークな動植物でご存じの方も多いかもしれません。世界で4番目に大きな島であるマダガスカル島を主な国土とし、その国土面積は日本の1.6倍にあたる58.7万km2となかなか大きいのですが、人口は日本のおよそ4分の1となる2843万人(※)。

首都アンタナナリボにも広がる水田の風景。日本であまり見ないゼブ牛(コブウシ)は現地で農作業や運搬、食用など幅広く活躍している(筆者撮影)

インド洋の南西部、日本からの一番短いフライトでも片道24時間近くかかるという遠方に位置し、私たちにとってかなり縁遠い場所に思えますが、実はアフリカでは珍しくお米が主食の国。現地の人々も日本人と同じくお米を日常的に食し、首都アンタナナリボにも水田の広がる風景が見られます。(ちなみに、マダガスカルの人々への日本みやげで特に人気なのは、なんとご飯にかける「ふりかけ」とのこと!)

現地で営業しているフランス資本のスーパー(筆者撮影)

同じ島国でもある日本とは、物理的な距離こそ遠いものの、意外に似通った生活スタイルの国といえるかもしれません。日常的に使われるのはマダガスカル語ですが、フランスの植民地だった時代があるため、フランス語も公用語のひとつとして多くの場所で通じます。

動植物だけじゃない!マダガスカルの秘められた資源とは?

©︎iStock マダガスカル北部で有名なバオバブ並木。首都でもおみやげのバオバブシロップが買えます

そんなマダガスカルから海外に出荷される主要な輸出品目といえば、豊かな自然の印象とも近い農産品の「バニラ」。そしてもうひとつ有名なのが、電気自動車やスマホ用のバッテリーなどに用いられているレアメタル(希少金属)の「ニッケル」です。私たちの日常生活であまり意識されませんが、実はマダガスカルという国、豊かな鉱物資源の存在でも世界の注目を集めているのです

現地の大衆食堂で定番ランチにトライ。現地のお米やおかず、程よい塩加減で日本人の舌にも合う味付け(筆者撮影)

特にマダガスカルの鉱物資源の供給元として注目されているのは、同国中部に位置するアンバトビー鉱山。ニッケルのほか、同じくレアメタルに数えられるコバルトの豊かな産地でもあります。

この鉱山の強みのひとつは、約300万人が住む同国の首都であり行政や経済の中心地であるアンタナナリボ都市圏と、同国最大の港を有する都市トアマシナの中間地点に位置すること(日本の東京と横浜を繋ぐルートの途中に、豊富なレアメタルを埋蔵する鉱山がある!というイメージが分かりやすいかもしれません)。

両都市の資本やインフラを活かした輸送ルートの上に組み込むことができるため、その連結を活かし、“マダガスカル経済の大動脈”となる地域開発の構想が立てられてきました

TaToM地域の全域地図(JICA報告書より)
日本でも買えるマダガスカル産バニラアイス(筆者撮影)

マダガスカル経済の大動脈をつくる計画とは?

日本のODAで整備されたアンタナナリボの道路の一部が、現地で「東京大通り」と名付けられている(筆者撮影)

その豊富な資源の存在にもかかわらず、道路や電力、水道などのインフラが未熟であるマダガスカルでは資源のポテンシャルを活かした経済活動が十分に実施できる状態ではなく、国民の約79%が1日1.9米ドル以下で生活する(2021年世界銀行データ)など、世界最貧国のひとつに数えられるほどの経済状況にあります。

アンタナナリボ市街地にある市場の様子

また、マダガスカルはインド洋の南に位置する島国という地理的な条件から、アジア・アフリカ・欧州を繋ぐ貿易船などが用いる多様な海上交通路(シーレーン)を確保するためにも重要な国のひとつであるため、同国の平和と安定が確保され、持続的な開発が進展することは、同国だけではなく、日本を含む世界全体の経済にとっても重要であるといえます

マダガスカルには道路信号が1機も無く、深刻な交通渋滞が発生。このまま30分近く動かないことも

そんな背景もあって同国の経済開発は多くの人に待ち望まれてきた悲願ともいえますが、その実現に日本は様々な側面から支援をしてきました。2017年には、地域開発のマスタープランとなる「アンタナナリボ・トアマシナ経済都市軸(TaToM)総合開発計画」の策定支援をする技術協力(※2)と、同地域開発のカギとなる同国最大の港、トアマシナ港を拡張・強化する円借款事業(※3)にJICAが着手。

円借款で拡張が支援されているトアマシナ港(五洋・大豊共同企業体提供)

その後、2都市間を繋ぐ国道上にある橋梁の建設(※4)などを資金協力で支援してきており、今後もアンタナナリボの道路整備(※5)などを通じて、TaToM総合開発計画の実現に向けた支援が行われていく予定です。

また、日本の総合商社がこのポテンシャルに着目し、施設の建設から教育システム、人材育成までを含む産業開発のプロジェクトに着手しているなど(※6)、民間企業によるビジネス参入もTaToM地域のポテンシャル発揮を目指すうえでの重要なカギとなっています。

まとめ

日本から離れていることもあり、なかなか日常生活で意識されることは少ないマダガスカルの魅力。筆者もこの国での担当案件を持つまで、ワオキツネザルやバオバブ(と、世代的に某お笑いタレント)のイメージくらいしか持っていませんでしたが、そこには日本人のイメージ以上に多くのポテンシャルが眠っていることに気づかされました。

上述のとおり、この地に秘められた豊富な資源を安定的に輸出できるようになることは、同国の経済だけでなく、バニラアイスやリチウムイオン電池など、マダガスカルの恵みを利用した製品に囲まれている私たちの生活を豊かにすることにも直結します。ぜひ、この魅力あふれるアフリカのユニークな島国に想いを馳せてみてください!

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