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高さ10段、圧巻の人間ピラミッド!世界無形文化遺産「カステイス」の祭典タラゴナ現地潜入レポート

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2026年10月29日
公開日
2026年10月29日

スペイン北東部のカタルーニャ州に伝わる「カステイス(Castells)」をご存じでしょうか。人が人の肩の上に立ち、何段にも積み重なって巨大な塔をつくる伝統文化で、2010年にはユネスコの無形文化遺産に登録されています。

2026年10月4日、カタルーニャ州の港町タラゴナで、2年に一度の「コンクルス・デ・カステイス(Concurs de Castells)」が開催されました。各地から選ばれた強豪チームが一堂に会し、塔の高さや難易度を競い合う、カステイス界最大級のイベントです。

今回は、大会の観戦に加えて、優勝候補の名門チームの練習場も見学。高さ10段にもなる塔をつくり上げる迫力や、チームを支える人々の熱気など、現地で感じたカステイスの魅力をご紹介します。

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1.世界無形文化遺産「カステイス」とは?

幾重にも人が積み重なり、高くそびえる人間の塔

カステイスは、カタルーニャ語で「城」を意味する「カステイ(Castell)」の複数形。18世紀末ごろから現在の形に発展したとされ、カタルーニャ地方の祭りや行事で披露されてきました。

塔をつくるのは、「カステリェルス(Castellers)」と呼ばれる人々。チームごとにおそろいの色のシャツを着て、互いの肩に乗りながら塔を組み上げていきます。全員が腰に巻いている頑丈な黒い帯は「ファシャ(Faixa)」と呼ばれ、腰を保護するコルセットであると同時に、上へと登る仲間が足をかける重要な「足場」の役割も果たしています。

塔の土台となるのは、「ピーニャ(Pinya=松ぼっくり)」と呼ばれる大勢の人々。何重もの円をつくり、中心に立つ人々を支えます。その上に次々と人が登っていき、最大10段にもなる巨大な塔をつくり上げます。

大勢の人々が集まり、塔の土台を支える

そして驚くのが、塔の最上段を担うのは小さな子供たちだということ。軽い体を生かして上へと登り、最後に頂上へ到達した子供が片手を上げると、会場からは大きな歓声が上がります。

ただし、頂上に到達すれば終わりではありません。カステイスでは、塔を組み上げたあと、全員が無事に地上へ降り切って初めて完全成功となります。高く積み上げる技術だけでなく、最後まで塔を維持するバランス感覚やチームワークが求められます。

カステイスのモットーは「力・バランス・勇気・判断力」。高さを競うだけではなく、子供から大人まで、あらゆる世代が力を合わせてひとつの塔をつくり上げるところに、この伝統文化の魅力があります。

2.2年に一度の大イベント!「コンクルス・デ・カステイス」

かつての闘牛場を活用した会場「タラコ・アリーナ」

今回の舞台となったのは、カタルーニャ州南部の歴史都市タラゴナ。バルセロナから南西へ約100km、古代ローマ時代の円形競技場や水道橋が世界遺産に登録されている名所です。会場は、かつての闘牛場を近代的な全天候型ドームに改装した「タラコ・アリーナ(Tarraco Arena)」。2年に一度(偶数年)開催されるこのコンクルスは、人間の塔のいわば「ワールドカップ」。2026年大会には、予選を勝ち抜いたカタルーニャ各地の精鋭42チームが参加しました。

大会は3日間にわたって繰り広げられ、9月27日のトレデンバラ(Torredembarra)会場に続き、10月3日・4日はタラコ・アリーナで開催。特に最終日となる10月4日は、最強の12チームのみが集まる最高峰の決戦日です。難易度に応じた得点制で競われるため、会場には国内外から熱烈なファンが詰めかけ、チケットは発売直後に完売するほどのプラチナシートとなっています。

今回はこの決戦に先立ち、優勝候補筆頭として名高い名門チームの練習場を訪ねることができました。

3.大会前に名門チーム「カステリェルス・デ・ビラフランカ」の練習を見学!

練習に励むカステリェルス・デ・ビラフランカのメンバーたち

訪れたのは、銘醸ワイン「カバ」の産地としても有名なビラフランカ・デル・ペネデスを本拠地とする「カステリェルス・デ・ビラフランカ(Castellers de Vilafranca)」。約1,200人もの登録メンバーを誇る、カステイス界の絶対王者です。

子供から大人まで幅広い世代が活動しており、実際の練習を見ていると、カステイスは単に力の強い人だけが活躍するものではないことがよくわかります。体格の大きな人は土台を支え、小柄な人は上段へと登るなど、それぞれが自分の役割を担っています。

練習場に設置された専用の安全ネット

練習場には専用の巨大な安全ネットが。10段ともなれば建物の4〜5階相当の高さに達するため、一瞬の油断が大事故につながりかねません。日頃から安全策を徹底し、ミリ単位で足の位置や体重移動の呼吸を合わせることで、絶対的な信頼関係を築き上げているのです。観光客向けのショーではなく、町の人々が何世代にもわたって情熱を注ぎ、守り続けてきた地域の絆。真剣な眼差しで練習に励む彼らの姿に触れ、胸が熱くなりました。

4.高さ10段!手に汗握る人間の塔の頂上決戦

アリーナ内は各チームの鮮やかなシャツで埋め尽くされ、壮観な光景に

迎えた10月4日の大会当日。タラコ・アリーナのスタンドは超満員。緑、赤、紫、青など、チームカラーのユニフォームをまとったメンバーとサポーターで埋め尽くされ、異様なほどの熱気と興奮に包まれていました。

塔の難易度は、段数や各段に乗る人数、土台を強化する重層構造によって決まります。なかでも最高難度を誇るのが「高さ10段」の塔です。何百人もの土台ががっちりと組み合い、人の背中に次々と人が立っていく光景は圧巻のひと言。

息をのむ高さ!天に向かってまっすぐに組み上げられた人間の塔

なかでも目が離せなかったのが、事前に練習を見学したカステリェルス・デ・ビラフランカの演技です。練習場で見たメンバーたちが、今度は大勢の観客が見守るなかで塔を組み上げていきます。

一段、また一段と高くなる塔。頂上を目指して子供が登っていく姿を、こちらも息をのんで見守りました。頂上で片手を上げた瞬間には大きな歓声が上がりますが、全員が無事に降りるまで気は抜けません。

時には塔が大きく揺れ、崩れてしまうチームも。印象的だったのは、その瞬間、周囲にいたライバルチームのメンバーたちが一斉に駆け寄り、崩れた塔を囲むように集まって仲間を助けていたことです。勝敗を競う相手であっても、いざというときには互いを支え合う。その光景に、カステイスが大切にしている仲間との絆や連帯感を感じました。

一方、塔が無事に完成すると、会場には割れんばかりの拍手と歓声が響き渡ります。写真や映像で見るのとは違い、目の前で人々が支え合いながら塔をつくる姿は、想像以上の迫力でした。

成功を喜ぶカステリェルス・デ・ビラフランカのメンバーたち

そして、2026年大会で見事優勝を果たしたのは、カステリェルス・デ・ビラフランカ! 10段の塔を2種類完成させたほか、これまで大会で成功例のなかった9段の特殊な塔も完成させ、14回目の優勝を飾りました。

練習場で垣間見たひたむきな努力が結実した瞬間に立ち会えたことは、言葉にできない感動でした。

5.観戦チケットは争奪戦!旅行者も楽しめるカステイスを楽しむには?

天候に合わせて屋根が開閉するタラコ・アリーナ

コンクルス・デ・カステイスは、地元ファンのみならず世界中からメディアや観光客が訪れる大人気イベントです。チケットは公式Webサイトで夏頃に発売されますが、数分で完売することも珍しくありません。

バルセロナからのアクセス

バルセロナ・サンツ(Barcelona Sants)駅からタラゴナ駅までは、国鉄レンフェ(Renfe)の中距離列車(Regional Expressなど)または特急列車で約1時間〜1時間15分。タラゴナ駅からタラコ・アリーナへは、歴史ある街並みを眺めながら徒歩約15〜20分でアクセスできます。

大会以外の時期にカステイスを見るには?

「大会の年に旅行できない」「チケットが取れなかった」という方もご安心を。カステイスは毎年4月〜11月頃がハイシーズンで、カタルーニャ各地の守護聖人祭(フェスタ・マジョール)の広場で頻繁に披露されています。

特にバルセロナの「メルセ祭(9月下旬)」や、ビラフランカ・デル・ペネデスの「サン・フェリックス祭(8月30日)」などは、街の広場で間近に超ハイレベルな塔を無料鑑賞できる絶好のチャンスです。

6.世界王者が日本へ!カステイスの魅力を間近で

緑色のシャツがトレードマークのカステリェルス・デ・ビラフランカ

今回の大会で優勝したカステリェルス・デ・ビラフランカが、2026年11月に初来日する予定です。総勢約210人のメンバーが日本を訪れ、東京をはじめ、静岡、京都、兵庫など各地で人間の塔を披露する計画です。

東京では11月8日(日)に増上寺、9日(月)に虎ノ門ヒルズでの公演を予定。その後は静岡県の富士山周辺を巡り、京都の仁和寺や兵庫県の姫路城でもパフォーマンスが行われます。日本を代表する名所を舞台に、カタルーニャの伝統文化を間近で楽しめる貴重な機会となりそうです。

【カステリェルス・デ・ビラフランカ 日本公演(予定)】
11月8日(日)15:30 増上寺(東京都港区)
11月9日(月)12:00 虎ノ門ヒルズ オーバル広場(東京都港区)
11月11日(水)10:00 ふじのくに田子の浦みなと公園(静岡県富士市)
11月11日(水)12:00 静岡県富士山世界遺産センター(静岡県富士宮市)
11月11日(水)14:00 富士山本宮浅間大社(静岡県富士宮市)
11月12日(木)15:00 仁和寺(京都府京都市)
11月13日(金)10:00 姫路城(兵庫県姫路市)
※公演日時や内容は変更される場合があります。最新情報は主催者の案内をご確認ください。

【まとめ】人々の絆がつくり上げる、カタルーニャの伝統文化

大勢の人々に支えられた人間の塔

人が人を支え、その上にまた人が立つ。何百人もの人々が力を合わせて完成させるカステイスは、想像以上に迫力のある伝統文化でした。

特に心に残ったのは、塔が崩れたときに、ライバルチームのメンバーたちが駆け寄って助け合う姿。勝敗を超えて互いを支え合う光景に、カステイスの精神が表れているように感じました。塔の高さや技術を競うだけでなく、世代や性別、チームの垣根を超えて人々が支え合う。カタルーニャの人々の誇りと絆を感じられる、貴重な体験となりました。

バルセロナを訪れる際は、少し足を延ばして、カタルーニャ各地に受け継がれる伝統文化にも触れてみてはいかがでしょうか。

【コンクルス・デ・カステイス(Concurs de Castells)】

開催地:スペイン・カタルーニャ州タラゴナ、トレデンバラ

主な会場:タラコ・アリーナ(Tarraco Arena)

開催:原則2年に一度(偶数年の秋)

 

【カステリェルス・デ・ビラフランカ】

公式サイト:https://castellersdevilafranca.cat/

 

●取材協力
カタルーニャ州政府観光局
ターキッシュ エアラインズ

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