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毎年5月の第1土曜日と9月19日、12月16日に小さな壺に収められた聖ジェンナーロの血液が液体化する。その秘密はまだ完全には明らかにされていないが、毎年多くの信者が“ミラーコロ(奇跡)”をひと目見ようと大聖堂に詰めかける。この奇跡が起こらない年はナポリに大災害がもたらされる、という言い伝えがあるため司教が溶けた血液を公開するまでには緊迫したムードが漂うのだ。
そんなナポリの信仰の中心であるドゥオーモは、5世紀の初期キリスト教のサン・レスティトゥータ聖堂とステファニア聖堂のあった場所に、1300年代アンジュー家の支配の下建設されたもの。中央扉はアントニオ・バボッチョAntonio Baboccioの1407年の作。内部は110本の円柱を基礎に3廊に分けられ、高い天井には木製のカンバス画がはめ込まれている。身廊上部の大窓の間に描かれた「聖
人」はルカ・ジョルダーノの作品。大理石の床面には13世紀のコズマーティ様式のモチーフが施されている。中央祭壇にはピエトロ・ブラッチ作の「被昇天の聖母」が祀られている。動きのあるスケ
ールの大きな作品だ。
中央入口の右側にあるのが、テゾーロ・ディ・サン・ジェンナーロ礼拝堂Cappella del Tesoro di S. Gennaro。1527年ペストが流行した後に、市民の祈願により建てられた物。ギリシア十字のプランとバロック様式を用いて建築された芸術作品。祭壇には真鍮で造られた聖人の胸像が並ぶ。聖ジェン
ナーロの血液が入った小壺は、隣の鉄格子がはめられた部屋の奥に保管されている。礼拝堂前のモニターでは「聖ジェンナーロの奇跡」の映像が流されており、その臨場感を知ることができる。
左翼廊を下りた所には、最初に建築されていたサン・レスティトゥータ聖堂S. Restitutaがドゥオーモと垂直に重なっている。1688年の地震の後にバロック式に修復が行われている。その右翼廊の奥には西洋で一番古い洗礼堂Battisteroとモザイクが残る。
洗礼堂は4世紀末から6世紀はじめに造られ、中央の洗礼槽、モザイクも同時代の貴重なものだ。モザイクは剥落があるものの、クーポラには紺青に金で十字架とモノグラム、周囲に星がきらめき、王
冠からは神の祝福の手が見える。その下には水を祀る聖書の物語や諸聖人が描かれている。一見して新しいサン・レスティトゥータ聖堂の礼拝堂モザイクは、14世紀のもの。中央祭壇の左側にある階段からは、ギリシア・ローマ時代の遺跡に下りることができ、ローマに続く石畳や水道管が見られる。('19年12月現在、非公開)
スパッカ・ナポリのおもな見どころはトリブナーリ通りと、それに平行するクローチェ通り(途中か
ら名前がビアジオ・ディ・リブライ通りに変わる)沿いにある。
まずは、ドゥオーモから出発。ドゥオーモの見学が済んだら、道を渡って真っすぐ延びるトリブナーリ通りを左右の教会を見学しながら歩こう。右に病院のあるMiraglia広場の先、少し道が細くなって来るところを右に曲がればベッリーニ広場に出る。