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大洋州の親日国パラオの発展を支えるJICAの取り組み

JICA都市・地域開発グループ

JICA都市・地域開発グループ

国際協力機構

更新日
2024年7月30日
公開日
2024年7月30日
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独立行政法人 国際協力機構(JICA)社会基盤部都市・地域開発グループ第一チーム 奥島 誠「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、Alli!(こんにちは!)JICAの奥島です。第9回の今回は、美しい海や自然が魅力の太平洋に浮かぶ島国パラオについてです。「パラオ」といえば、美しい海を連想される方が多いと思いますが、パラオの文化や日本との繋がりについてご存じの方はあまり多くないのではないでしょうか? 今回は意外と知っていそうで知らないパラオとパラオの発展を支援するJICAの取り組みをご紹介します。

常夏の国、パラオ

©︎iStock パラオの国旗

パラオは大洋州にある島国で、大小400以上の島々から構成され、人口は約1万8千人で首都はバベルダオブ島にあるマルキョクですが、旧首都のコロールとその周辺に人口の約80%が暮らしています。また、日本のほぼ真南に位置しているため、日本との時差はありません。

©︎写真:㈱アルメック大塚氏

コロール市内を歩いてみても、あまり徒歩で出歩いている人を見かけません。それもそのはず、パラオは海洋性熱帯気候のため、年間平均気温は約27℃、平均湿度は80%以上と常夏で、年間降水量は3856mm(2020年)と東京(1590mm、2020年)の2倍以上。雨季に限らず乾季にもスコールが発生するため、人々は徒歩や自転車ではあまり出歩かず、路線バスや鉄道といった公共交通もないため、移動はもっぱら自家用車となっています。

  • コロール市内の様子

写真:㈱アルメック 大塚氏

パラオの観光美しい海と太古から受け継がれる神話

パラオにとって観光業は新型コロナウイルス感染症の拡大前には年間約10万人もの観光客(パラオ政府観光局、2019年)が訪れ、GDPの約6割を占める程の非常に重要な産業となっています。

多くの観光客の目当てが、2011年パラオ初の世界遺産(複合遺産)として、ユネスコの世界遺産に登録された「ロックアイランド群と南ラグーン(Rock Islands Southern Lagoon)」。約10万ヘクタールの海域に点在する445の無人島からなり、この美しいラグーン(環礁に囲まれた浅い海)ではマンタやサメ等、多種多様な海洋生物を見る事ができます。

なかでもロングビーチや、ミルキーウェイ、マラカル島のジェリーフィッシュレイクなどは世界的にも有名な観光地で「ここを見ずにパラオは語れない」といわれるほどです。

©︎写真提供:パラオ事務所森職員 ロックアイランド

さて、そんなロックアイランドですが、3000年程前にはパラオ人の祖先が住んでいた痕跡が見つかっていて、そこから現在、パラオの人々が多く暮らすコロール島やバベルダオブ島に移っていったと考えられています。

「考えられている」というのも、当時の文化は文字を持たなかったため、主に口頭伝承によって歴史や文化が受け継がれていました。したがって、パラオの歴史には今も分からないことが多くありますが、そんなパラオの文化にとって重要な意味を持つとされているのが「神話」。コロール市内では伝統建築の「バイ」など大きな建物の壁面にその一場面が描かれていることもあります。また「ストーリーボード」と呼ばれる木の板で作られた工芸品などを通して、その一端に触れることができます。

©︎写真:筆者 壁面に描かれた鳥

こちらの写真はマルキョクにある国会議事堂の壁面に描かれているもの。「お金を産む鳥」という神話に登場する鳥(ホウクロシギ)で、パラオにお金という概念を持ち込んだ鳥といわれています。

©︎写真:筆者 コロール市内にある省庁のオフィス

上の写真に描かれているのは「パンの木」と呼ばれる神話の一場面だそうです。

口頭で語り継がれているため、様々なパターンのストーリーがあるようですが、共通して魚(=食べ物)が湧き出てくる不思議な「魔法の木」が登場するお話となっています。一例として次のお話を紹介します。

「昔、ある島に女性が住んでいました。彼女の家の庭には幹が空洞になって海まで続いている魔法の木があり、海で大きな波が起きると、幹から魚が降ってきました。
ところが、ある日、彼女の魔法の木を羨ましがった村人達は、悔しさのあまり、その木を切り倒してしまいました。
すると、幹から大量の海水があふれ出し、島は海の底に沈んでしまいました。
今でもその場所では透き通った海の中にある幹が見えるそうです。」

こうした神話はパラオだけでなく、同じミクロネシア系の文化を持つミクロネシアやポリネシア系のハワイやトンガなどでもみられるため、それぞれの国で神話を比べてみるとおもしろいかもしれませんね。

パラオと日本、JICAの取り組みについて

©︎写真:㈱アルメック大塚氏 日本・パラオ友好橋

パラオは日本と地理的に近いことや、1922~45年まで日本の南洋統治の拠点であったこともあり、歴史的に日本の影響を強く受けています。その様子は今も言葉や普段の生活のいたるところでみられ、例えば「Daiziob(大丈夫)」「Sensei(先生)」「Chazi Daiziob(味、大丈夫。おいしい)」など、音も意味も日本語とほぼ同じ単語やフレーズがパラオの言葉の一部となっています。

JICAではパラオがアメリカの統治下にあった1980年代からパラオへの協力を開始し、以来、海外協力隊の派遣や橋、電気、水道、道路などの公共インフラ事業、さらに環境保全や保健医療、教育、産業振興など幅広い分野で協力を行っています。パラオでは今、主要産業である観光業の発展と気候変動対策をバランスさせる道を模索しており、JICAでは新たな取り組みとして、パラオに路線バスを導入すべく2023年から支援を開始しています。

このプロジェクトでは、コロール市内およびバベルダオブ島に路線バスを走らせることで、自家用車の使用を減らし、CO2の排出を抑制するとともに、自動車免許をもたない島民や観光客も出かけやすくなることで、地元経済の活性化や交通弱者の豊かな暮らしの実現を目指しています。2024年6月末現在、試験運行のバスがコロール市内を週3日運行しています。

段階的に運行頻度やルートの拡充を図り、2025年後半にはコロール市内だけでなく、バベルダオブ島を巡るルートの運行開始を予定しています。

©︎写真:㈱アルメック大塚氏 コロール市内を走行する路線バス
路線バス整備プロジェクトの紹介ページ
環境配慮型交通システム整備プロジェクトODA見える化サイト
PalauVisitorsAuthority(パラオ観光局)HP内プロジェクト紹介ページ
PalauEco-FriendlyPublicTransportRouteBusService
©︎写真:㈱アルメック大塚氏 路線バス整備プロジェクトのメンバー達

最後に

今回は知ってそうで意外と知らないパラオについて紹介しました。まだまだお伝えしていないパラオの魅力や不思議なところはたくさんありますが、ぜひ、ご自身でパラオを訪れて見つけていただきたいと思います。そして、その際はパラオ観光の足として路線バスを使ってもらえるととても嬉しいです!

それではMechikung!(さようなら!)

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