パリ五輪・パラリンピックで躍動へ!協力隊コーチが挑む、初めての夏 | ニュース・メディア – JICA
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独立行政法人 国際協力機構(JICA)社会基盤部都市・地域開発グループ第二チーム 水上 貴裕「地球の歩き方Web」愛読者の皆様、ボンジュール(こんにちは)! JICAの水上です。いつもJICAらしく(?)アジアや大洋州、アフリカなどの新興国でのまちづくりを紹介していますが、今回はちょっと趣を変えて、世界中に感動の熱戦を届けた舞台、フランスがテーマ! この連載のタイトルにもなっている、“世界のまちのつくり方”のこれからを一緒にリードする、フランスと日本の関係をご紹介したいと思います。
目次
日本と同じ先進国に位置づけられるフランス。国連の常任理事国を務める5ヵ国のひとつで、世界でも存在感がある大国です。この夏の熱戦でも世界中の注目を集めましたが、その華やかなまちづくりを活かした開会式やスポーツの様子が印象深かった方々も多いのではないかと思います。
「スポーツとJICAって、どんな関係があるの?」という声も多いのではないかと思いますが、実はJICAはJICAボランティア事業の一環として、野球、サッカー、陸上、卓球など様々なスポーツのコーチ人材を新興国に派遣しており、時には国家代表選手のコーチに就いて、世界大会クラスのイベントに同行することも。
この夏も日本からのコーチと2人3脚で夢の舞台に降り立った新興国の選手たちが、パリでの熱狂を盛り上げた一員となりましたが、フランスでの国際大会で日本の協力隊員コーチが支援した選手が花を咲かせるという、ひとつの日仏連携の形であるといえるかもしれません。現地で活躍した選手やコーチの情報を含めて、別の記事で詳しく紹介していますので、よければご覧になってみてください!
この夏はスポーツ面で注目の集まっているパリですが、国際協力の世界でも重要な役割を果たしている国です。主要先進国のひとつとして、国連教育科学文化機関(ユネスコ)や、経済協力開発機構(OECD)などの国際機関や、フランス版JICAともいえる開発援助機関のフランス開発庁(AFD)の本部がおかれているほか、新興国の財政状況を話し合う「パリクラブ」など、多くの国際会議の会場としてもよく使われています。
また、植民地制度があった時代の名残で、アフリカの一部などフランス語が公用語となっている国も多いのですが、その関係でそうした国々への赴任を目指す開発援助業界の関係者が語学習得等のためにフランスへ留学するケースも多く、多くの国際協力の拠点としてこの世界では知られています。
みなさんもご存じのとおり、パリの前は、困難を乗り越えた東京での熱戦が記憶に新しいところですが、フランスも日本も7ヵ国が参加する主要国首脳会議(G7)のメンバーという共通点があります。
このG7のサミットが昨年5月、岸田首相の地元でもある日本の広島で開かれたニュースを覚えていらっしゃる方もいるのではないかとは思いますが、各国の大統領や首相が参加したG7広島サミットが閉幕したあと、話し合われた課題のフォローアップのため、各分野の大臣による会合(関係閣僚会合)が日本のあちこちで開催されたことはあまり知られていないかもしれません。
特に世界のまちづくりを考える分野では、サミットから2ヵ月後の2023年7月、サンポート高松地区などの都市再開発で知られる香川県の高松市で「G7香川・高松都市大臣会合」が開かれたことが重要なイベントとして挙げられます。
G7香川・高松都市大臣会合では、G7の首脳が提示した、「持続可能な成長の推進役として、世界の都市の変革の力が再確認され、ネット・ゼロ(※1)、レジリエント(※2)でインクルーシブ(※3)な都市、都市のデジタル化、都市のデータと技術の利用を加速させる」という全体の方向性について、具体的な目標や定義などの詳細を話し合うことが主に行われました。
(1)ネット・ゼロ:大気中への温室効果ガスの排出量を「ネット=正味(排出量から森林吸収量等を差し引いた合計)」でゼロにすること。
(2)レジリエント:都市に様々な困難やアクシデントが発生しても、しなやかに乗り越え回復する柔軟性があること。
(3)インクルーシブ:ここでは、一部の人々に恩恵が偏ることがなく、全ての所得や階層、属性の人々にとって住みやすい状態のこと。
詳細な内容は、この都市大臣会合の閉幕後に公開された「G7都市大臣会合コミュニケ」で確認することができますが、世界をリードする先進国が定めたこれからのまちづくりの方針は、新興国への開発援助を含む様々な場面で常にその方針に沿った計画になっているか?とチェックされることになるため、都市開発支援の世界においても非常に重要な会合であったといえるのです。
また、G7都市大臣会合では国際協力についても話し合われ、温室効果ガス(今年の夏は世界中で猛暑が報告されているので、特に意識してしまいますね……!)や人口問題等の地球規模課題について、先進国の都市だけで対策をしても効果は限定的なことから、新興国の都市課題に私たち先進国が協力して対応することの重要性が改めて確認されました。
この会合には先述のOECDや国連人間居住計画(UN-Habitat)などの国際機関もオブザーバーとして参加しましたが、JICAも世界の持続可能なまちづくりを支援する開発援助機関のひとつとして、ほかの先進国や国際機関と連携した経済協力を長らく手がけてきています。
例えば、以下の6月のテーマ国であったマダガスカルは元フランスの植民地ということもあり、フランス政府が数多く支援を手掛けていますが、マダガスカルの都市問題を解決するための支援においては、日本やフランスなどの機関が手を取り合って援助協調(新興国等において、ODAの主体となる先進国や国際機関同士が連携して開発援助にあたること)を行っていくことが期待されています。
今後もこの高松で話し合われた内容に沿いながら、新興国のまちづくりへの支援に取り組んでいくため、JICAは様々な調査やプロジェクトを立ち上げることになる見込みです。
今回はパリでの祭典をきっかけに“世界の街のつくり方”に関わる重要な国際会議が香川・高松で開かれていたことを紹介しました。都市大臣会合では硬派な話し合いだけではなく、高松におけるスマートシティ開発の取り組み事例や、国の特別名勝にもなっている栗林公園など、最新技術から歴史ある名勝まで活用しながら都市の課題解決や魅力の発信に取り組んでいる現地の視察プログラムも行われ、各国の大臣をはじめ多くの関係者が感嘆の声を上げたそうです。筆者もこの会合に先立ってプライベートで香川に足を運んでみたのですが、食や伝統など様々な文化を活かしたまちづくりが非常に興味深く、世界に向けて発信できる立派な日本の事例のひとつだな、と感じたのを覚えています。(今でも時々、小豆島の変わり種オリーブオイルを自宅に取り寄せたりしています。夏の定番・そうめんとの相性が最高……!)
ちょっと脱線しましたが、特に暑い今年の夏、熱中症に十分気をつけながら、日本が世界に誇れるまちづくりの現場にも、足を運んでみてください!
トップ画像:PIXTA
監修:地球の歩き方