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「はじまりの大地」エチオピアの未来を拓くまちづくりに、日本の地方都市が与えた大事なヒント

JICA都市・地域開発グループ

JICA都市・地域開発グループ

国際協力機構

更新日
2024年9月20日
公開日
2024年9月20日
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独立行政法人 国際協力機構(JICA)東京センター 経済基盤開発・環境課 高橋 奈菜読者の方のなかには、エチオピアと聞いてコーヒーを連想される方も多いのではないかと思います。実はエチオピアは最古の人類の祖先が発掘された場所であり、最古の王朝を持つ国であり、現代に至るまで独自の文化と歴史を守り抜いた国でもあります。今回はそんなエチオピアについてご紹介します!

はじまりの大地、エチオピア

エチオピアはアフリカ大陸の東部に位置し、日本の約3倍の土地に、日本とほとんど同じ1億2千万人程度の人が暮らしています。首都アディスアベバの標高は2400mで、赤道から外れていることもあり年間を通じて過ごしやすい気候が特徴です。

また、アディスアベバ市内のボレ国際空港はアフリカ大陸の玄関口としての役割を果たしており、アフリカへ旅行された方の中にはトランジットで利用された方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そして、紀元前から絶えず人類の歴史が紡がれてきた土地でもあり、世界遺産の登録数も文化遺産10件、自然遺産2件とアフリカ大陸随一です(※)。

©︎iStock ラリベラの岩窟教会群

統治体制として「民族連邦制」を採用しており、各州で別の民族が暮らしているため、州ごとに使用されている言語も異なります。国内を回るだけで様々な文化が体験できますね。

不思議の国?エチオピア

エチオピアは近現代を通じて独立を保ち続けた国家でもあり、現在も独自の文化や歴史観が色濃く日常に残っています。例えば、首都アディスアベバでは多くの人が公用語のアムハラ語を使って生活しています。
(『シャーロック・ホームズ』の「踊る人形」を連想するのは筆者だけではない……はず……!)

ビールの看板とアフリカハゲコウ、筆者撮影

また、人口の60%が原初キリスト教を濃く受け継ぐ「エチオピア正教」を信仰しており、日本人が連想するカトリックやプロテスタントとは異なる価値観を有しています。例えば、「自身が置かれた状況は、神が与えたものなのでそれらを変えようと努力すること、労働は悪徳である」のだとか。

暦についてもイエス・キリスト誕生年の解釈が西暦と異なるため、「エチオピア暦」が広く浸透しています(近代化に伴い現在では西暦と併用、変換用のアプリも開発されています)。エチオピア正教の年間行事も独特で、中でも西暦の年初頃に行われる「ティムカット(※)」は圧巻です。

ティムカット:キリストの洗礼を記念し聖遺物を街中に披露するイベント

ティムカットの様子、筆者撮影

忘れてはならないのが食生活ですよね。食文化も日本人の目には驚きの連続です。

まずコーヒーは、確かに現地でもよく飲まれているのですが、濃く煮出したものをお猪口程度の小さなカップで1度に3杯、1日に3度味わうのが現地流なのだとか。

コーヒーを煮出す際にも独自のお作法や決まり事があり、付け合わせはなんとポップコーン。日本のコンビニなどで目にする「エチオピアコーヒー」はあくまで「エチオピア産コーヒー」なのです……。

弊構でのコーヒーセレモニーの様子
ローカルのコーヒーショップいずれも筆者撮影

次に、主食ですがこちらも日本人には耳慣れない「インジェラ」が伝統かつ現在でも主流です。テフという穀物を発酵させて薄くクレープ状に焼いたものなのですが……。

生地自体は酸味があり、上に乗っているおかず・ソースは辛味があるので「すっぱからい」? 不思議な味がします。ときに「世界一まずい主食」と揶揄されたりもしますが、駐在した日本人のなかにはハマって帰国する人も。確かにスパイスの辛味と生地の酸味のコンビネーションはクセになるかもしれません。

ランチの野菜インジェラ、筆者撮影

長い歴史と魅力のあるエチオピアの都市の未来をつくる、日本との協力とは?

開発の進む首都アディスアベバ(JICA撮影)

美しい文化を持つエチオピアですが、ほかのアフリカ各国に漏れず人口増加と経済成長による首都への人口流入が近年の課題です。エチオピアの首都であるアディスアベバには2023年時点で約395万人が住んでいますが、その人口密度は7486人/km2と、東京都や香港を上回る過密状態に。交通渋滞や大気汚染、住宅問題などを解決するためには、経済活動などの役割をアディスアベバ以外の都市にも分散していく必要があります。

エチオピアの首都圏以外の地域に目を向けてみると、エチオピアの輸出入を支える交通の要所アダマやディレダワ、街ごと世界遺産に登録された城下町ハラルなど、人口規模は首都の1割前後ながら様々な魅力のある都市が数多くあり、これからの開発次第で大きく化ける可能性を秘めています。

そんな各地方都市を、首都に次ぐ「第二の都市」として適切に機能させていくためには、各都市で無秩序な開発が行われることを防ぎ、まちの魅力を最大限に活かす開発ができるよう、各地方都市の行政官が予め適切な都市計画を立ててコントロールする能力を養うことが不可欠です。

しかし、エチオピアの地方自治体だけでは質の高いまちづくりを計画できる行政官を自力で育成することが難しいのが悩みの種。そんな同国の状況に対し、JICAではエチオピアの中央政府が国内の主要な地方自治体に対し、地方公務員が都市計画・開発管理に関する研修を受けられるような教育プログラムの立ち上げや、そのために必要な講師役のベテラン職員や教材の整備を支援しています。

研修の様子を報告するエチオピアの行政官(JICA撮影)

エチオピアの自治体を日本人専門家が巡回して、都市計画のスキルとしてどの分野をトレーニングする需要が高いのかのヒアリングを実施したのち、日本の国土交通大学校(国土交通省が東京都小平市に持つ、地方公務員等への研修プログラムを実施する教育機関)などの事例も参考に、模擬研修の実施支援や教材の共同開発などの協力を行ってきました。

エチオピアの人々が訪れた日本の横浜みなとみらい地区(JICA撮影)

このプロジェクトの一環として、日本が首都圏以外の場所でどのようなまちづくりを手がけてきたか実体験をもって理解するため、エチオピアの行政官たちが横浜、名古屋、大阪、広島、福岡といった地方都市の視察に訪れました。

日本のまちづくりの特徴として特にエチオピアの人々が驚いていたのは、国や自治体と民間企業等による“官民連携”がとても幅広く行われていること。まちの産業振興やコミュニティの盛り上げ、多目的施設等の開発に取り組む地方都市の好例を目の当たりにしたことで、エチオピアでも政府や自治体だけではなく、企業や市民など幅広い人々を巻き込んでまちづくりをすることの重要性を学んだ様子でした。

世界遺産の都市から来日した研修員もおり、彼らの都市の実情と重ねながら、自分たちの未来のまちづくりを考えていた様子も見られました。

視察を終えて帰国したエチオピアの人々は、プロジェクトを通じて築き上げた教育プログラムや講師、教材などを活用して、事業終了後の現在も国内の各都市で「第二の都市」として開発を盛り上げるための計画立案に取り組んでいます。

おわりに

本日は日本の方にはなじみの少ないエチオピアについてご紹介しました。今後はコーヒーを見かけたら、はじまりの大地・エチオピアの文化や、歴史を紡いで「第二の都市」づくりに燃える現地の人々へ思いを馳せていただければ嬉しいです!

アフリカの中では日本からのアクセスも良いため、日常を飛び出して訪れてみてはいかがでしょうか?

አመሰግናለው! アムセグナッロ!(ありがとうございました!)

現地への渡航には外務省による海外安全情報などをよくご確認ください。

トップ画像:iStock

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