
ウガンダのローカルフード「ロレックス」とは?
2023.4.17
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執筆者:山田 太地
バックパッカーとして世界を旅し、多彩な文化と経験を積んだ後、2018年に日系IT企業に入社。アフリカにおけるビジネス展開の責任者として、ザンビアやケニアの拠点を統括し、現地での豊富なビジネス経験を積む。2021年にアイ・シー・ネット株式会社入社以降、途上国の社会課題をテーマにした課題解決型プログラムのプロジェクトマネジメントなどを数多く手がける。
エストニアといえば、中世の面影を残すタリンの旧市街が美しいバルト三国の一国。しかしこの国では、美しい自然や街並みを楽しめる一方で、世界が注目するデジタル革命が起きています。人口わずか130万人ながら、なぜエストニアは数々のIT企業を生み、「電子政府」の先駆者として知られるようになったのでしょうか? エストニアがどのようにIT先進国へと成長を遂げたのか、そこには納得の理由がありました。
目次
エストニアのデジタル革命の事例を紹介する前に、まずはどんな国なのかおさらいしておきましょう。
バルト海に面したエストニアは、美しい自然と中世の街並みが魅力的な北欧の小国です。しかし、魅力はそれだけではありません。IT産業が著しく発展しているエストニアでは、世界トップクラスのデジタル化が進んでおり、政府は現在「e-Estonia」という概念を提唱しています。「e-Estonia」とは、デジタル化によって行政手続きを効率化する動きのこと。オンライン投票やデジタルIDなど、先進的なシステムが導入され、国民の生活を便利にしています。
その一方、「森の国」とも呼ばれている通り、豊かな森林や湖など、自然も満喫できるのが特徴です。サウナ文化や歌の祭典など、独自の文化も魅力のひとつ。歴史と未来が共存する、そんな魅力あふれる国がエストニアなのです。
今回、筆者は政府が主催する「国際社会青年育成事業」のコーディネーターとして、IT大国エストニアを訪れました。このプログラムは、日本の若者たちが世界で活躍できる人材へと成長するための貴重な機会です。電子政府の導入や、スタートアップ企業の盛況など、世界をリードするデジタル社会を築いているエストニアの実態を知るために、日本の若者たちとエストニアのIT企業や現地の学校を訪問しました。
エストニアでは荷物を載せて実際に街中を走っているロボット配達員が存在します。エストニアに拠点を置くロボット開発企業のStarship Technologies社が作ったロボット配達員で、その名も“Starship”(スターシップ)。
自律走行技術を活用し、街中を動き回るその姿は近未来を感じさせます。歩道を安全にゆっくりと移動しているその姿はどこか愛らしさもあり、地元の人々はロボットとすれ違う際、笑顔で手を振るなど、すっかり日常の風景に溶け込んでいました。
360度カメラと超音波センサーを搭載し、6輪で自由に動き回っている様子は、まるで小さな街の案内人を見ているようでした。効率的で、環境に優しい交通手段として注目されているこの技術は、エストニアがIT立国として世界をリードしていることを印象付けていました。
エストニアの街を走るロボット配達員の姿に感銘を受け、筆者はIT人材育成の拠点として名高い”Kood/Jõhvi”(コード/ユフィ)を訪れました。首都タリンから車で約2時間30分、緑豊かな自然のなかにたたずむその学校は、一見すると普通の建物ですが、一歩足を踏み入れると、活気に満ちた若者たちの熱気に包まれていました。
Kood/Jõhviは、無料で、教師もいないという画期的なシステムで運営されているコーディングスクールです。2017年の設立以来、延べ1万人以上の受講生を輩出し、その卒業生は、GoogleやMicrosoftといったグローバル企業をはじめ、エストニアのスタートアップ企業で活躍しています。
特に注目すべきは、多様なバックグラウンドを持つ人々が集まっている点です。難民から農業従事者まで、年齢や国籍、経験を問わず、誰もがプログラミングを学ぶことができます。このオープンな学習環境は、エストニアが掲げる「デジタル社会における誰もが平等に機会を得られる」という理念を象徴しています。
エストニアのIT化は、単なる技術導入ではなく、国のアイデンティティや生存戦略と深く結びついたユニークな事例です。
ソ連崩壊後、小さな国が生き残るためにITを国家の成長戦略の中心に据えたという歴史的背景が、エストニアの文化とITを深く融合させています。電子政府システムの構築は、ソ連からの脱却と、自国の言語や文化を保護するための手段でした。国民一人ひとりに固有のデジタルIDを付与し、行政サービスをオンライン化することで、エストニアは国民が主体的に国を運営していくための基盤を築きました。このデジタルIDは、単なる認証手段にとどまらず、エストニア国民のデジタルアイデンティティそのものを象徴する存在となっています。
IT先進国として成長を続けるエストニアには、未来のクリエイターを育むユニークな教育施設も数多く存在します。その中でも特に注目したいのが、VIVISTOP(ビビストップ)です。
世界8カ国に展開するこのユニークな教育施設の本部は、エストニアにあります。カリキュラムや教科書にとらわれず、子供たちは自分の興味やアイデアを自由に追求できます。プロ仕様のツールが揃った作業スペースは、まるで小さなスタートアップ企業のよう。3Dプリンターを使って自分だけのオリジナルグッズを作ったり、プログラミングでロボットを動かしたりすることも可能です。この施設は、学校でも遊び場でもない、まったく新しい学びの場。エストニアがIT教育の最先端をいくことを象徴し、世界中から注目を集めています。
エストニアを訪れる際は、ぜひVIVISTOPのような施設を訪れて、未来のクリエイターたちの熱気を体感してみてください。きっと、あなたも新たなインスピレーションを得ることができるはずです。
エストニアでの体験は、ITが人々の生活を豊かにし、社会を変える可能性を強く感じさせられました。特に、Kood/Jõhviのような画期的な教育システムは、日本の教育にも新たな風を吹き込む可能性を感じます。日本も、多様な才能を引き出し、個々の可能性を最大限に伸ばせるような教育環境を整備することで、よりイノベーティブな社会へと変革していくことができるのではないでしょうか。エストニアに旅行へ行く際には、IT先進国である一面にもぜひ目を向けてみてください。
アイ・シー・ネット株式会社では、新興国・途上国150ヵ国以上で社会課題の解決を行っています。下記のサイトで事業内容を紹介していますので、ぜひご覧ください。