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“王室の教会” ウェストミンスター寺院は、ニュートンなどそうそうたる面々の墓所が並ぶ。しばしば国内の祭事や特別な式典の舞台に使われ、衛星中継でもおなじみ。2011年に行われたウィリアム王子とキャサリン妃の結婚式や、故ダイアナ妃の葬儀で注目を浴びた。しかし、何といってもこの教会のいちばんの名誉は、英国王室の戴冠式が行われることだろう。
1987年に「ウェストミンスター宮殿、ウェストミンスター寺院、セント・マーガレット教会 Westminster Palace, Westminster Abbey and Saint Margaret's Church」の登録名で世界文化遺産にも指定されている。
この寺院、8 世紀にはすでに築かれていたという伝説もあるが、現在のような大寺院に造り変えたのはエドワード証誓王Edwardthe Confessor で、1065 年に完成した。建設中、その工事の進行状況を見られるようにと建てたのがウェストミンスター宮殿(現国会議事堂)。寺院と宮殿が隣り合わせに並んだことにより、教会と国家が強い絆で結ばれ、その後の歴史に大きな影響を及ぼすことになった。
200 年の後、ヘンリー3 世Henry Ⅲが、当時フランスで流行していたゴシック様式の建物に改築、院内のいたるところに見られる彫り飾りや彫像は、その当時のものがほとんど。彼が「英国歴代の君主のなかで、最も建築に力を入れた王、最も偉大な芸術の保護者」と呼ばれるゆえんだ。
その後も歴代の国王を埋葬するために多数の礼拝堂が造られた。リチャード2 世統治後には、国に貢献した人もここに埋葬されることになった。これは、葬儀により教会にお金が入るという理由からだが、とうとうその場所もなくなって、今では記念碑代わりに平たい石板が床にはめ込まれるだけになってしまった。
ここでの戴冠式の歴史は1066 年、ウィリアム征服王まで遡る。この寺院の完成後間もなく亡くなった証誓王の次の王位を、フランスからやってきてちゃっかり横取りしてしまった彼。証誓王の正統な後継者であることを世に示す盛大なデモンストレーションとして、ここで戴冠式を行った。それ以来40人の王様がここで即位している。
「キリスト教教会のなかで最も美しい霊廟」といわれる。16世紀初頭に建てられ、精緻な細工の円形天井は息をのむ美しさ。祭壇の後ろにヘンリー7世の墓がある。
『カンタベリー物語』で有名なチョーサー、ディケンズなど、多くの作家や詩人が埋葬されている。シェイクスピアなど、墓とは別に記念碑のみ置かれていることも。
13 世紀頃に建てられたもので、かつては下院の議場として使われたこともある。イギリス独特のゴシック建築で、天井を支える放射状に延びる支柱が印象的。
もともとは修道僧が祈りのために使っていた場所だった。現在のものは19 世紀に形作られ、今では聖歌隊が日々の礼拝式で賛美歌をささげている。
イギリスの教会で最も高い31m の天井のアーチが見事。無名戦士の墓や、聖歌隊席がある内陣との仕切りには科学者ニュートンの記念碑も置かれている。
前女王エリザベス2 世も、この椅子に座って戴冠式を行い、史上初のテレビ中継が行われた。4 頭の獅子が支える戴冠椅子で大司教から王冠をいただく。現国王のチャールズ3世の戴冠式もここで行われる予定だ。
この戴冠用椅子の下には、1996 年までスクーンSconeと呼ばれるスコットランド王の戴冠用の椅子(石)があった。1296 年にイングランドが戦利品として略奪したものだが、スコットランド人からの返還運動を受ける形で、700 年ぶりにスコットランドのエディンバラ城に戻った。
ウェストミンスター寺院はロンドン・パスが使用可能だ。初めてロンドンを訪れる方で色々なスポットを回りたいという方は観光がスムーズにお得にできるので、利用を検討してほしい。